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おかんとコピ Vol.20 濃厚接触猫

李信恵2022.02.09

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あけましておめでとうございます。遅い、というか少し前が旧正月だったのできっと大丈夫。去年の年末、友人の娘ちゃんが描いた朝鮮民画の虎の絵を頂いたのだが、それがなんとなくコピに似ていた。「今年はコピ年だ!」なんて思いながら、のんびり過ごしていた。

だがしかし。のんびりしていたのもつかの間、新暦のお正月が開けてすぐの1月の半ば、新型コロナウイルス(オミクロン株)の濃厚接触者になってしまった。そしてコピは濃厚接触猫だ。たまたま用事で人が多いとこに行ったから、気になると云い続ける大きいダーリン(こと夫でコピのおとん)が、会社の人から「そんなに気になるのなら念のために検査したら」と後押しされ昼休みに病院に行ったところ、予感が的中して陽性が判明した。そしてこの日から10日間あまりを、家族全員がほぼ家で過ごした。自宅で療養していたおとんは、一番離れた部屋にこもってもらい、その間「隔離飯」を作っては届けたりした。

 私は濃厚接触者ではあったものの、陰性で元気だった。どれくらい元気かと云うと、それまでジムに週に3回は通っていたほど。しかし外出を禁止されては運動不足になってしまう。仕方がないので部屋で腹筋ばかりしていたが、私の腹筋はとても恥ずかしがり屋のようでいまだに姿を現さない。コピのお腹もだらーんとしているので、おそろいかも。まあ、そんなことはどうでもいい。自宅で過ごすことになってすぐ、心配したのが食料だ。買い置きの食料も少しはあったが、濃厚接触者で陰性なら近所へ短時間で買い出しにも行けたので、家族に食事を作ることはできた。コピのご飯やおやつもある程度の量があったことも助かった。感染者激増の対応に追われているだろう保健所からの電話連絡は、とても遅かった。重症化しなかっただけましだと思いながらも、それでも少しの不満はある。

 この間に行政から届いたものは大きめの段ボール箱がひとつ。そこに入っていたのは自宅療養中の注意の書面と、パルスオキシメーター、それを使用した後に返送するためのレターパックだけだった。地域によっても、行政の対応がかなり違うことを見聞きした。食料など支援物資などは、違う課がきっと担当で、その連絡もうまくいってないこともあるんじゃないかと家族は話したけど、中身がすっかすかの箱を見た私の感想は「めっちゃ今の大阪、維新の政治を表しているみたい」と思った。

 もしも一人暮らしだったら。そして重症化した時はどうなったのだろうと思うと、想像するだけでも怖い。コピは猫なので、相変わらず家の中で過ごしていた。これがもし、散歩が必要な犬を飼っていたならどうなったんだろう。家族全員が陽性になって、そして悪化したなら。入院できたとしても、ペットの世話は誰に頼めばいいんだろう。コロナ禍で自宅にいる時間が増え、ペットブームだというニュースも何度か見た。けれど、人間に何かあった時には?そういう取り組みやサービスがきちんと手の届くところにあったらいいのにな。ペットと云うより、もう家族の一員なんだから。

 私の仕事はというと、講演会は運良くと云うか延期になっていたり取材やインタビューなどはzoomで対応出来たりした。そして、家族に10日間3度の食事を作るのもさほど苦ではなかった。もちろん、住んでいる地域で自宅療養者への配食サービスもあったが、そのことを知ったのは自宅療養期間が半ばを過ぎた頃で、結局は自分や他の家族への食事も作らないといけないので申し込まなかった。おとんはホテルでの隔離を望んでいたが、無症状だったこと、そもそもホテルも利用できない状況になりつつあったので、もっと症状が重い人を優先してもらうことにした。キムパを作った時は割りばしも韓国料理店でテイクアウトした時の物を使ってみたり、しんどいなかでも笑わそうとしたりした。家族がコロナになったら同居する人たちの負担はかなり大きくなる。支え合うことは大切なことなのだけど、それが美談で終わってはいけないと思う。

おとんは「一番しんどかったのは、コピと触れ合えないことだった」と後で云っていた。毎朝、コピは5時30分ごろ起きる。なんでそんなにはよ起きるねん。そしてわざと私の枕もとで爪をとぎ、私を起こしてご飯をねだる。私はそこから2度寝、日によっては3度寝する。コピはご飯を食べたら家族を起こしに家中を周る。最後に出勤前のおとんにマッサージをしてもらう、それがコピの朝のルーティンワークだった。だがしかし、隔離期間中はそれが崩れた。ドアに付けた窓から廊下を通るおとんを見て、目が合えばコテンと横になってマッサージを待つのだが、おとんはこない。ときどき、コピの背中が寂しそうに見えた。

コロナの隔離期間が明けた日の朝、おとんがコピのもとにやってきた。私は「ほったらかしにされたから、コピはおとんのことはもう忘れているかも」と意地悪を云った。おとんにめっちゃ睨まれた。コピは「俺のマッサージ係がようやく来たか」と云うような顔をして、コテンと横になった。日常がやっと戻って来た。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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