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おかんとコピ Vol.21 ハチワレのパル

李信恵2023.02.15

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おかんとコピ、1年ぶりです。おとんがコロナになってから、ドタバタしていたらあっという間に時間が過ぎてしまった。コピのファンの皆さまごめんなさい。コピは相変わらず元気で、自宅でのズーム会議を邪魔したりしながらのんびりとした日常を送っている。私は毎朝5時に一回起こされ、ご飯をねだられる。それから家中をパトロールするのがコピの日課だ。眠いっちゅうねん。

コピを保護してから、猫友だちが増えた。もともと友だちだったけど、保護猫を飼い始めた人も増えた。友だちたちの新しい家族をこの連載で紹介しようかな、とも思っていた。1匹だけじゃなく、2匹以上多頭飼いする友達も多い。コピはずっと1匹で育ったので、大人になってほかの猫を飼うのは無理だろうなと思っていた。相性もあるし。

ところが昨年の末、出会ってしまった。12月25日、いつものように玄関先でタバコを吸っていると「ふぎゃー!」と声がした。呼ばれたように思えて路地を見るとハチワレの地域猫がいた。風で飛んだ植木鉢の下皿を前にして「(ここに)ご飯ちょうだい」と言っているみたいだったのであげたら完食。(皿は一旦取り上げて洗ってご飯を乗せた。戻ってくるまで、こいつは待っていた)。「ゆっくり食べや」と声を掛けたら「ふー!」と威嚇された。おい。コピはわがまま&好き嫌いが激しいので、食べないおやつやフードがある。たまってきたら公園とかで地域猫のお世話している人にあげたりしているんだけど、そのうわさを聞きつけてきたのかなと思った。



それから3日後の夜に、いつものように玄関先でタバコを吸っていたらハチワレはまたやってきた。「ふぎゃー!(ご飯くれ)」というので、あげているのに近寄ると「はー!」と威嚇され、また怒られた。すぐ近くでほかの猫の声がするからか、家に入るとコピが玄関先にいた。まるで「外のきょうだいにごはん、ちゃんとあげてきたんか?」というような顔をしていた。そして、その翌日もハチワレはやってきた。家の横の路地からすごく大きい声で鳴くし、出ないと出て来るまで鳴き続けるのでやばい。ご飯食べているときに「うちの子になる?」と聞いたら、顔を上げた。ふみゃふみゃ云いながら、ちょっと悩んでいるように見えた。家族とも相談しながらなんとかしたいなあと思うようになってきた。やばい。


結構遅い時間だったが、ご近所さんで仲良しの猫番長さん(保護猫含めて数匹飼っている)に相談しようと、電話をかけてみた。すると一緒に保護しようと外に出て来てくれて、夜中に頑張ってくれた。けれどハチワレは番長さんにゴロゴロ云いながら近づくけどこっちには微妙。年末年始にもっと仲良くなって、うちの子になればいいのになあ。この日の夕方に今度は違う猫(トラ猫)が来ていたので、「猫SNSでもあるんか」と一瞬思った。友人によると「NNN(ねこねこネットワーク)」というものが存在するらしい。マジか。すでにロックオンされてしまっているようだ。

けれど、「もし保護してコピと相性が悪かったら?」「感染症や病気を持っていたら?」「外で暮らす方が幸せかな?」と考えると、二の足を踏む。さらに、暮れも押し迫った30日にいきなりぎっくり腰になってしまった。「この忙しい時にぎっくり(びっくり)したわ」と云って家族に引かれたのだが、それはさておき。ここ数年の年末年始はオモニがホームから戻り、我が家で過ごすことにもなっている。ぎっくり腰を抱えながら介護し、猫を保護して世話するのは無理だ。動物病院も休みだろうし。大みそかの夜も「ご飯くれ」とやって来たので、念のため用意しておいたノミの駆除・予防剤を使おうとしたけど警戒されているので断念し、勝負(何の)は年明けまで持ち越されることになった。お正月も1日2回はハチワレに呼び出された。次第に距離は近づくものの、2回に1回は威嚇される。「なんでご飯あげて怒られるんや、不条理な。出会って10日以上過ぎているのに恩知らず!」と思うが、仕方ない。

お正月休みが終わり、三連休の最終日の成人式の日。この日の昼間はいつもと違って、すごく近寄ってきた。おまけに尻尾を立ててお尻を見せ、おまけに体を足に擦りつけようとする。どうしたんだ急に、と思ったが捕まえようとしたらやっぱり逃げた。「このまま地域猫として生きていた方がいいのかな、ご飯だけはあげよう。近所の人たちには了解してもらおう」と考えた矢先、夜になってまた鳴き声がした。ドアを開けると、家の中の様子をうかがおうとしている。慌てて部屋に戻って、猫用のキャリーバッグを持って出た。しかし、バッグに素直に入ってくれそうな気配はない。

すると、グッドタイミングで猫番長が車で家に帰ってきた。手を振って「捕まえれそう」と云うと、猫番長は「飼うなら本気出して捕まえよか!」と云い、夫さんが持参してくれた猫じゃらしとちゅーるだけでハチワレを油断させ、あっさり捕まえてバッグにほおり込んでくれた。「小さいバッグならお尻から入れたらいいねんよー(笑)」と、彼女はやっぱりすごい。

ハチワレなので8の韓国語のパルと名付けた。白黒なのでパンダにしようか、靴下を履いているみたいなのでポソン(韓国の靴下の意)にしようかとも思ったが「ファーストインプレッションが大切や」と云われたので、パルに落ち着いた。コピは簡易式のケージにめっちゃ近寄って匂いを嗅いだりして、平然としている。保護する前からあんなにでっかい声でふぎゃーふぎゃーと家の前で毎日鳴いていたから、聞き覚えのある声やったのかな。仲良くできるといいな。

保護して1時間後、突然大雨とともに雹が降ってきた。すごい音がしたので、びっくりした。もしも今日、保護していなかったら、パルはどうなっていたんだろう。私もとても後悔したはずだ。こんなに寒くなること、雹が降ることを察知していたんだろうか。コピは赤ちゃんの時、必死に鳴いて私に居場所を教えた。パルもまた、生きるために私を呼んだのだろう。かしこいし、強いし、たくましい。

クリスマスの日にやってきたので、まるでプレゼントのようだと思った。一緒に幸せになろう。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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