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「重い女」とは誰のこと? 「選択される側」になぜ立とうとするの?

李信恵2016.12.31

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この前、ふとテレビのバラエティ番組を見ていたら「重い女」がテーマだった。しくじった芸能人自らが先生として自虐的に過去を語るって内容で。まあ、「しくじり先生 俺みたいになるな!!3時間SP」(テレビ朝日)なんだけど。

ある女性タレントは、「重い女すぎて幸せを逃しちゃった先生」と自己紹介し、学生時代の恋愛から、芸能界に入った後のバラエティタレント、スポーツ選手との交際について告白した。こういう過去の恋愛を告白する人は、あんまり好きじゃないけど。

彼女はこれまで、「彼の持ち物にこっそりイラストを書く」「彼の私服を着てテレビに出演」などの交際アピールをこっそりとしてきたそうだ。ほかの共演者たちは「重いよ!」と云いながら突っ込みを入れ、笑っていた。

えー、そうかな。私はその女性タレントがいじらしいなと思った。自分なら、そんなことはしないけど。だけど、されても別に嫌とも思わないし、付き合っていたならほほえましいエピソードじゃないかなと思うんだけど、私がおかしいのかな。「彼の持ち物にこっそりイラストを書く」ってのはマーキングみたいな気もするからちょっとあれだけど、自分だったらなんかの拍子に見つけたら嬉しいかも。

そして、3人目に交際し、去年破局したという男性についても語った。彼の職業に関わることをはじめ、さまざまな花嫁修業をしたそうだ。「結婚を意識して舞い上がっていた」と話しながら、涙を浮かべた。「私は誰の本命にもなれず、今でもひとりぼっち」と。そして、過去の恋愛と向き合ってようやく気づいたという教訓で結んだ。

うーん、本命になることって、結婚することなのかな。で、結婚することはゴールじゃないのにと思う。結婚した後も、まあいろいろめんどくさい。幸せは簡単に継続できないから、メンテナンスっていうか努力も必要だし。

彼の好みになるようにと、花嫁修業をする前に、自分の仕事ややりたいことを精一杯頑張ればよかったのに。そういうものが無かったのかな。彼女は彼に合わせてばっかりに見えたけど、相手は彼女のために、合わせてくれてたのかな。好きな人にもっと愛されたいと思うのはおかしなことじゃないけど、なんで彼に選んでもらうっていう「選択される」側になっちゃうんだろう。

で、記事を書こうと思ってからその前にふと気になって。「重い女」でググってみたら約 8,990,000 件もあった。すごい。みんな、「重い女」にならないようにって心配してるんだな。「彼に思いと思わせない9つの方法」とか「彼の心が離れて行く重い女の8つ特徴」とか。まあ、そんな感じの記事がいっぱいあった。

恋愛して、お互いの温度差みたいなのはもちろんあるだろう。自分は面倒くさい奴なので、こう云う記事を見たら100%「重い女」の部類に入ってる。思ってもみなかったのに、やばい。私、超重い。でも、それでもうまく行くこともあったから、どうでもいいけどさ。

ところで、なんでこの手の記事はきりのいい「10」とかって数字じゃないんだろう。中途半端な数字の方が信ぴょう性が高く感じられるって云うテクニックみたいなものがあるのかな?

それから、「重い」ってことに関連して体重とかダイエットの話も交じっているかもしれないけど、まあそれとこれは話が違うのでちょっと置いとく。でも、他人からどう見られるかってことをみんなすごく気にしてるんだな。私もそんなとこあるけど、あっても行動が伴わないんだけどさ。

あと、意外だったのは「重い男」。これまたググったら約 12,400,000 件もあった。「重い女」より多いやん。重い男じゃないかって心配する男性も多いんだなあと、ちょっと驚いた。けれど、記事の内容をざっと読んでみると、男性自身が彼女に嫌われないために読むんじゃなく、「重い男」の行動はDVにも近かったり、その可能性も高いから、そういう男性に気を付けるためっていう感じの、むしろ女性向けものも多かった。対になってるような言葉を使った記事でも、お互いの性別の非対称性が見えてくるもんだな。

「重い女」かどうかなんって、別にどうでもいいんじゃないか。無理して男性(もしくは女性、相手)に合わせる必要はないと思う。「重い女」は見方を変えると、「一途で信頼できる女」なのかもしれないし。

選ばれるのも、選ぶのも嫌。誰とも、対等な自分でいたいよね。それがせめて、自分が恋愛する人だったら、なおさら。

…とか云う記事を書いていたら、Twitterのメンション欄がおかしなことになってた。スマホにTwitterからの通知がすごいので、ちょっと見に行ったら。ネトウヨと思しき人たちから一斉に、わいせつ画像(主に男性器)の画像を張り付けた投稿だらけで、その瞬間に再度パニックになった。ここ一週間、精神的に不調で、先週は記事の更新が出来なかった。「重い女」がデーマだけど、軽いタッチの記事を書こうと思ってた矢先のに。なんでこうなった。

久しぶりに食べた食事を全部吐きだして、しばらく泣いた。すごく惨めだった。でも、原稿は書かなきゃ。「このままじゃ(体重がさらに減って)軽い女になっちゃう」とかって書いてオチをつけようかなと思ったけど、たぶんこのギャグはつまんなくってまたすべる。…書いちゃったけど。

「何年も前から聞いていた、セクシズムとレイシズムは親和性が高いって話を、ツイッター上ではしょっちゅう実感する。実感、したくもないけど。人権も、性も、生きていくうえで大切なこと。大切にできない人たちは可哀想。誰かを貶めようとしてる行為は、結局は自分を貶めることだよ。」

「自分が差別されてる、嫌がらせされてること改めて言いたい人はいない。辛いもん。でも、公にしなかったら無かったことにされる。被害を語るのは嫌や。でも、これがまだ自分やから、まし。差別を可視化出来るだけ、まし。でも、しんどい。でも、がんばる。自分にしかできないこと、がんばる。」

Twitterでは、そう書いた。まあ、頑張りたくもないなあとも時々思うけど。役割みたいなので仕方ない。女で目立つと、こういう性的な嫌がらせをされちゃう。3年前が特にひどかったけど、最近でもこういうことは時々ある。今回みたいにひどいのも、たまに。うまく返す女性もいるかもだけど、今の自分には無理だ。韓国旗のアイコンで、韓国人になりすましての性差別、複合する差別。思い出してもしんどい。

どんどん話は脱線したけど、元に戻って。「重い女」であることを心配する前に、まず自分の心とか生き方を大切にしてほしいな。日本でも、どの国の社会でも女性は黙らされて、男性にとっての都合のいい生き方を、遠回しに強制されちゃう。私は黙らないけど、なんか「そのままのあなたで大丈夫やで」って、女性タレントにも、多くの人にも云いたかった。

「あなたこそ大丈夫?」
「私は大丈夫、目の前の(これを読んでいる)あなたがいるから。」

そう云いうのが良い。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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