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三浦瑠麗氏の発言、そしてヘイトスピーチとは何か

李信恵2018.02.14

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2018年2月11日に放送されたフジテレビ系列の『ワイドナショー』で国際政治学者の三浦瑠麗氏が「スリーパーセル」という北朝鮮のテロリストが、日韓、日本の大都市では東京や大阪に潜んでいると発言した。

番組放送直後から、この発言がTwitter上で話題になっていたので、ネット上でアップされていた動画を確認したところ、本当にこんな内容のことを平然と語っていたので唖然とした。

大阪は、在日朝鮮人(在日コリアンのことを私は朝鮮人と表記している)が多く住む町だ。大阪の生野区には、コリアタウンもある。それは、朝鮮半島が日本の植民地となった時代に、移住してきた人たちが多いからだ。戦前から済州島と大阪の間に定期船が運航されていたことや、平野川の河川の改修工事のために多くの朝鮮人が労働者として集まったからでもある。

2013年から大規模になり、現在も続くヘイト街宣やヘイトデモで、何度も「不逞鮮人」という横断幕を見かけた。最近では、関西では「暴れるな朝鮮人」と書かれたものがよく使用されている。ヘイトスピーチ条例が出来た都市であるにもかかわらず、警察はこの横断幕を使用する者に対し指導するにとどまっている。「不逞鮮人」とは、戦前に使われた言葉であり「朝鮮人がテロリストである」という意味だ。この言葉は、関東大震災での虐殺にも繋がった。

三浦氏の発言から、すぐに思い出したのが京都朝鮮学校襲撃事件のことだ。在特会らは小学校に押し掛け、「スパイの子ども」と叫んだ。私自身も、「朝鮮の工作員」とネット上で書かれたり、それらを保守速報にまとめられたりしたこともある。自分以外にも被害者はいっぱいいる。隣国の脅威を煽る時、ターゲットになるのは誰なのか。被害者はいつも在日やマイノリティで、その中でも女性や子どもや老人など、さらに弱いものへと向かう。

ハフィントンポストの取材に対して、三浦氏は
「また、在日コリアンに対する差別や偏見を助長するというTwitterの反応についても、私は番組中、在日コリアンがテロリストだなんて言っていません。逆にそういう見方を思いついてしまう人こそ差別主義者だと思います。」
と、答えていた。ヘイトスピーチをまき散らすような酷い発言をして、それが差別であると指摘されたら 「差別の意図はなかった」 「差別者とみなされることが差別」 「自分こそ被害者」 「差別される方にも理由がある」と云う人を、これまでたくさんネットやリアルでも見てきた。 彼女もそうだ。それに加えて、「自分には在日の友だちがいる」と云う場合もある。(「I have black friends」と一緒で、「私には黒人の友だちがいる」、と述べることで人種差別主義者でないと言い訳するもの)

三浦氏の言説は、差別の扇動だと思っている。そして、いつの時代でも差別者は、自分の差別を認めないし、自分こそが被害者だとする。そして無責任だ。

そして、三浦氏は2月12日に自身のブログも更新し、冒頭ではピョンチャン五輪について言及した。
「日本を含む国際社会の報道は、北朝鮮の見え透いた平和攻勢に対して、どうして韓国はそんなに安易に引っかかってしまうのだろうという論調ですが、それが同一民族ということの内実でもあるでしょう。「同一民族」というアイデンティティーの下地があるからこそ、美女応援団にコロッといってしまう。とりあえず、目先の融和ムードを楽しみたい、北朝鮮の行動を善意に解釈したい、厳しい選択肢と直面したくない、人間的な感情の結果なのです」

この部分を読んで、朝鮮半島が分断した責任の一端がどこの国にあるのかもわかってないのかな、と思った。どこの国って云うか、まあそれは日本なんだけど。もちろん、米国とロシアも。彼女の言説では、日本と朝鮮半島の過去の歴史的な背景、在日朝鮮人が何故日本で暮らすのかは全く語られない。その視点もない。まあ、意図的なものかもしれないが。

2月9日の夜、私は大阪のコリアタウンにいた。KCC会館で、ピョンチャン五輪のパブリックビューに参加するためだ。会場の大きなスクリーンに映し出された統一旗を掲げた韓国と朝鮮民主主義人民共和国の入場行進を見て、何とも言えない気持ちになった。1988年のソウル五輪も、2002年のW杯も、ひとり自宅でテレビを観ていた。今回の五輪では多くの在日と、つかの間でも「統一」を味わうことが出来たことが、ただ嬉しかった。その反面、日本の多くのメディアが南北の融和に否定的だったり、揶揄したりすることが、悲しく思えた。南北の融和が、平和へと向かおうとする努力が。日本社会にとって何の問題があるのだろう。

隣国の脅威を煽るとき、テロリスト云々と語られるとき。それが生み出すものは、排外主義とヘイトスピーチであることは、私たちは過去の歴史から学んで来たはず。三浦氏の言説で踏みにじられようとしているのは、この日本で、大阪で暮らす在日朝鮮人の人権だと思う。三浦氏は日本と朝鮮半島の間の近代の歴史や在日朝鮮人、そして差別や人権についてもっと学んで欲しい。

この問題の最中、ある在日朝鮮人の友人がつぶやいた。
「三浦瑠麗のことを娘に話したら『大阪のテロリストって私らの事指してんの?』と言った」
この言葉を、重く受け止めたいと思う。マイノリティ(の子ども)が、差別的な言説に出会った時にいつものことかと諦めたり、不安に思ったりするような社会は駄目だと思う。大人として、この社会で生きるひとりの人として、この問題についてしっかり考えて行きたい。この社会で暮らす、すべての人々の人権は守られなければならないものなのだから。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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