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第2回目 「こまったさん」の困った真実

りゃんじゃ2014.03.22

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 5年前に、「ママ」という存在になって、時々、こども(みんじぇ・5歳)に絵本やジュニア向け小説を読む機会がある。
 基本、「これ読んで!」と彼が持ってくるものを読むのですが、時々、自分が幼少期に読んでいたものを図書館や書店で発見し、懐かしい思いで手に取り、一緒に読んでみることも。
ryangja14324a.jpg そんな本の一つに、「こまったさんシリーズ」(あかね書房)という、80年代以降に小学生時代を過ごした女なら一度は目にした人も多いと思われる作品があります。
 「こまった、こまった」という口癖のある推定年齢アラサーの女性、「こまったさん」が、突如、不思議な世界に巻き込まれ、そこで出会った動物たちと冒険しながら料理を作ることになるという一話完結型のクッキング小説。「こまったさんのオムレツ」、「こまったさんのグラタン」ほか、シリーズは全10巻。
 イラスト(絵・岡本颯子さん)も可愛いし、ファンタジーものとしても面白いし、いまだに人気があるようで、図書館にもどっさりあって、回転している感じが伝わってくる。しかも、よく考えたら、女が主役の冒険もの?(これまた少ないんですよ……)いいね!と読み出すと、これがまあ、ひどい、ひどい。
 ざっくり説明すると、こまったさんは既婚で、夫の「やまさん」と駅前の小さな花屋さんを営んでる。つまり、共働き自営業者。で、問題なのが、やまさん(以下、自主的に敬称略)。というか、やまさんを通して描かれているオトコと夫婦の関係性。
 例えば、こまったさんシリーズ1 「こまったさんのスパゲティ」では、夕食の支度がいつもより「少し」遅れたこまったさんに対して、やま(夫)が、「怒って」、冷蔵庫からビールを取り、「先に飲んでるぞ」。
 でもって、こまったさんは「ごめんなさい、おいしいワインでなくて」。
 え~? 何これ?
 こまったさん!さっきまで、あれだけ一人、アフリカでサバイバルしてきた後で、どんだけオトコに低姿勢なのよ!と、わたしまでイラッとしてくる。
 しかも、やま、早く食べたいなら「じゃ、お皿出すよ」とか、手伝えばいんじゃない? いやいや、そもそも、共働き自営業なのに、毎食、こまったさんに作らせている? もしかして。
 はあ~いる、いる、こういうオトコたち。ていうか、あ……こういうオトコしかいない……昔も今も。あはは。共働きなのに、結局、家事育児は全部オンナにやらせてるオトコばっかりじゃん、この国にいるの。家事ハラ!( by竹信美恵子さん) しかも、「自営業妻」女って、一番ひどいケースかも。24時間365日、家でも「職場」でも労働してるのに、自分の給料が一円も出てないという最悪のパターンね。
 いやー、わたし、小学生時代、かなりこまったさんシリーズ読んでいたけど、全くジェンダー意識なかったから、完全にスルーしてた。怖すぎ。
 これ読んでたら、やんわりと真綿で首を絞めるように、「男は女より偉い」、「女はいつも謙虚でいることが美徳」って染みこまされていくね。
 「結婚」ってオトコにいつも小出しに責められて、でも、愛があるから怒ってくれてる、「ごめんね、悪いのはわたし。てへっ」てゆう状態で、それが女の幸せのかたち、女の日常って思っちゃうよ。
 根拠もないのに「俺についてこい」風吹かすオラオラ・ヤンキーEXSILE系(検索しないとエグザイルって書けない~)がモテてる文化、先進国で、日本だけじゃない?その理由が、わかる気がしたよ、こまったさんとやまの関係性から。
 絵本による子どもたちへの洗脳、罪深すぎる。
 だって、これ、奥付見たらかなりのロングセラー。「こまったさんのスパゲティ」、1982年発行の92刷りですから! そうなの、そうなの、子どもの本って、代々、読み継がれていくものが多いらしく、かなりのロングセラー本ばかり。(ちなみに、「ぐりとぐら」(福音館)は135刷り。すごい。)
 子どもたちに、こんなに長期間に渡って無邪気に、こんな男女の関係性を手渡していくの、やめなきゃ。これ食い止めるか無防備に垂れ流すかによって、この先の日本の男と女の関係性、変わってくると思う。
 もう、この本、わたしは今後、みんじぇに読ませるのやめる。こっちはこっちのやり方で、情報操作してやる~。じゃないと、子どものジェンダーリテラシー育めない。みんじぇは男だから、やま(夫)のような男が基準と思ってもらったら、ほんとーに困る。
 ちなみに、作者は故・寺村照夫さん。1928年生まれの「日本を代表すナンセンス童話作家」だそう。代表作に「僕は王様」、「わかったさんシリーズ」が。約100年前のジェンダー観で描かれてるってことですね……。
 あ、そうそう、「わかったさん」は、こまったさんの姉妹シリーズですが、まだましです。未婚女子なので、「夫」というオトコが出てこない分、わかったさんが生き生きしてる。ストーリー展開、ネタは、ほぼ、こまったさんと一緒なのに、オトコが出てくるだけで、こまったさんの魅力がこんなにも薄まってるの、残念すぎる。
 あ、違う。わかったさんにも出てた!オトコが。家業のクリーニング店で、両親と3人で働いているわかったさん。クリーニングの配達にでかけようとすると、父親が「より道しないではやくかえってこいよ」。
 え? 成人の娘にそんな台詞、言う? はい出た! いくつになっても「娘は俺のもの」感覚のオヤジ。ほんと、やめて。
 さらに、何冊か読んでたら、完全にがっくりしてきた。根本的なことに気付いちゃった。
 これ、女の「冒険もの」でも何でもなかった。こまったさんもわかったさんも、常に状況に巻き込まれて、振り回されてるだけの「受け身の冒険」しかしてない。だから、こまったさん、つねに「困って」る。自分で選んで、楽しんで冒険してるんじゃないじゃん!
 男主人公の冒険ものって、自分の意思で道を切り開き、障害を克服して、成長して帰ってくるというおきまりのパターンがあるでしょ。でも、女主人公だからだよね、この描かれ方、絶対。ひどすぎる。悲しすぎる。
 そんなこんなで、ジェンダー視点で絵本を読み出すと、気になってしまい、純粋にこどもとの読書を楽しめない作品がごまんとあるわけで……。
 りゃんじゃの「許せる」、「まし」な絵本探しは、今日も続いてます。
(ごくたまに、まともな良い本あるので、また、ここで紹介します~)

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りゃんじゃ

未就学男児と生活中の日本生まれ・育ちの「外国人」女。
某「最強の」「オンナの本音爆発」女性誌などでエディター&ライターもやってます。

好物は、女の本音トーク、気持ちいい風が吹いてる場所、キム・ボム&三浦春馬など威圧感ゼロの王子系。近々、羽生結弦君がランク入りしそうな予感。
飲んだ後の締めはラーメン派ではなく、あんかけチャーハン、またはがっつりスイーツ派。
ちなみに、「母」になったからといって自分の人生のセンター、子どもに明け渡す気は一切、無し。生涯、センターでいきます。

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