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残りものには福がある

中沢あき2016.11.11

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 気温もぐっと冷え込んで灰色の空が続いた後に、ぱっと晴れた10月末の日曜日。陽が射したせいで気温も上がって暖かかったので、車の運転の練習がてら、郊外の森に散歩に行くことにした。顔をこわばらせた夫を助手席に乗せて適当に車を走らせ、森の側で見つけた駐車場に車を入れて外へ出る。そこはどうやら普段は幼稚園の駐車場らしい。その幼稚園の裏手に、もう収穫が終わり、耕運機が止まっている畑が広がる。そうかあ、もう秋だもんね、とちょっと足を踏み入れると、その畑の隣の様子がちょっと違うことに気がついた。整然と畝が走る畑とは違って、色々な草花や野菜が寄せ植えになっていて、畑というより庭といった感じだ。あ、ここ、貸し畑なんじゃない?と夫が言う。
 そういえば友人夫婦は一人娘の為にも、と、郊外の貸し畑を借りて、家庭菜園をこの2年程続けている。二人共アーティストで、コンピュータや機械をいじっているイメージから畑仕事をしている様子が想像できんな、と密かに思っていたのだが、ホームパーティに彼等が持ってきた自家栽培の葉野菜やハーブがたっぷりのサラダは物凄く美味しくてビックリしたっけ。水やりをまめにしなくてもニンジンが勝手に根を深く張ってしっかり育つ話や、ズッキーニがやたら穫れて保存に困った話とか、熱心に語る彼等は、我が家のベランダ栽培の紫蘇の苗と交換で、ほおずきの苗をくれたのだった。
 なるほど、こういう畑なのね、彼等がやってるのは、と思ったら、長靴を履いた夫婦が野菜が入った籠や袋を抱えてやってきた。自転車にそれらを積んでいる彼等に話しかけてみると、思った通り、ここはそういう貸し畑なのだそうだ。所持者である農家が使わない分を小分けにして貸し出していて、最初の土作りはこの農家がやってくれるが、化学肥料や農薬は使わず、なるべく自然に近い形で栽培するように決まりがあるのだそう。興味があれば、とウェブサイトも教えてくれる。あ、あとね、今日は収穫期の最終日だから、ここに残っているもの、貰っていってもいいと思うよ。明日にはどうせ耕耘機が全部を潰しちゃうんだし、ほとんどの人は昨日のうちに収穫し終わっている筈だよ。それはなんと!?
 ますます興味にかられた私たち、それらの他所様の畑にそっと足を踏み入れる。25m X 4m ずつ割り当てられているというその各区画の境も曖昧なら、そこに植えられている野菜や草花も様々で、植え方もバラバラ、適当だ。子供の頃に田舎の祖母が庭やそれこそ貸し畑に植えていた野菜を覚えている私は、これはたぶんかぼちゃ、これはトマトだと思う、これはフダンソウ、と夫に教えていく。さすがに収穫し終わった後とあって、実などはなかなか見当たらないが、よくよく見ると、青唐辛子がまだぶら下がっていたり、指くらいの細さのニンジンが掘り出せたり、と、なんだか宝探しみたいだ、と思っているのは私たちだけじゃないらしい。向こうの方から数人の子供たちが、あー、これ、ズッキーニだ!と叫ぶのが聞こえる。ハーブや草花の類もさすがは露地栽培、ベランダ栽培のものとは育ち方のボリュームが違う。たぶん使い切れないくらいに育つんだろう。だからそういうものはまだ残っているようで、それではとばかりに、たっぷりと花の咲いたミントやパセリなどを摘んでいく。咲きっぷりのいい花も少し頂いてカラフルな花束が出来上がる。そのうちに最後の収穫にやってきた家族連れも何組かやってきて、小さなニンジンやジャガイモ、と残りを集めて籠を一杯にしている。残りでこれだけの量になるんだから、夏の間はどれだけ収穫できていたんだか。食べ切れないくらいだったんじゃないかな。
 我が家はその残り物のパセリやちっちゃなニンジン、青唐辛子、そしてお化けみたいな特大サイズのズッキーニなんかを頂いた。なんかさあ、すごいことだよね、こんなに自然が恵んでくれるものがあるのって。と、楽しそうにせっせと宝探しをする夫が呟いた。そうだよね。土、水、空気と太陽だけなのに、それらが作り出すこのエネルギーの凄さは、スーパーに並ぶ野菜からはわからない。子供にはいい経験になるだろうなあと、畑を走り回っている子供たちを見て思う。
 この貸し畑、ドイツの各地で農家や色々な団体がやっていて、順番待ちもある程、なかなか人気があるんだそうだ。私たちが見つけた畑は、所有者である農家が昨年からこの貸し畑プロジェクトを始め、1区画を春から秋にかけての1シーズン、290ユーロ(約3万3千円)で貸し出しているそうだ。サービスとして、春先に農家の方で予め準備したほうれん草やビーツ、ジャガイモ、ニンジンやラディッシュ、ハーブなどの野菜の種蒔きや植え付けをやってくれて、借り主が引き継いだ後の世話は自分たちで、またその後好きなものを植えることも出来るし、苗をその農家から買うことも出来る。栽培についてのアドバイズも勿論貰えるし、秋の収穫後はまた農家の方で土を均して元に戻してくれるという。土に親しみたい、農業を趣味程度にやってみたい、なんていう人にはピッタリのサービスだ。おまけに野菜は自然栽培のものだから、オーガニックの野菜を店で買うことを思えば、特に人数の多い家族だったらお得かもしれない。なるほど、これは子供のいる家庭には人気なわけだ。
 その夜の我が家の食卓では、穫ってきたハーブがサラダに加わった。大量のパセリはミキサーにかけてソースに、特大サイズのズッキーニは冬瓜に似ていたので煮物に、と自然の恵みを頂き、華やかな色合いの野の花は、食卓をしばらく明るくしてくれた。そんなふうに我が家の食卓を幸せにしてくれたのは自然の恵みと、持ってちゃっていいよ、と言ってくれた人たちの大らかさもあるんだなあ。収穫の恵みのお裾分けに感謝。
こんな風に雑多に生えているこれらは皆、食べられる野菜なのです。よくよく見ると、まだ収穫できるものがここそこに隠れています。 nakazawa20161111-3.jpg
© Aki Nakazawa

色とりどりの花。種も少し頂いてきました。来年は我が家のベランダに植えてみようかな。 nakazawa20161111-1.jpg
© Aki Nakazawa

最後の残りものの収穫に励む人たち。 nakazawa20161111-2.jpg
© Aki Nakazawa

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© Aki Nakazawa

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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