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捨ててゆく私VOL.01 梅雨時のナンパ

茶屋ひろし2006.11.28

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「俺みたいにセックスしない人は大丈夫!」

店番をしている私の耳に突然そんな声が飛び込んできた。外は雨模様、傘を買うお金がないのか誰かを待っているのかなんなのか、先ほどからお店の前で雨やどりをしていた男の子がナンパされているみたい。声の持ち主はナンパしてきた方だ。レジカウンターから表の様子をうかがうが、2人の肩しか見えない。ていうか、どんなナンパだよ。わけのわからない台詞だ。

身を乗り出して聞いていた私に気がついたのか、彼は急に声を落とした。あとは雨の音にかき消される。ナンパされた男の子の反応はわからない。しばらくするとナンパ男が去っていった。何かを断られたんだ。そりゃそうだよ、「セックスしません!」なんて大声で言うナンパがありますか。よけいやらしいよ。男の子は何もなかったように、また困った顔をして雨雲を見上げている。あの男、去り際に傘くらい買ってあげたらいいのに。きっとお金で落とすつもりもなかったんだわ・・。

ゲイは性に奔放である、というイメージはいつからあるんだろう。それはどういう意味なのかしら。もしかして淫乱ということ? ・・げ。

それにどれだけのゲイの人がそう思っているんだろう。毎日二丁目で働いていて、毎日ゲイ向けのエロビデオやバイブ、ハッテン場行きの人たちにローションやスキンを、それも結構な数を売りながら、でもたまにそう思う。店の前の通りではいつも誰かが誰かに声をかけられるのを待っているし、毎週やってくるナンパおじさんは目の色が変わりすぎていて、もはや人間ではないものになっている感がある。そういう状況を見ていると、確かにストレートにセックスを求めてこの街にやってくる人は多いのだと実感する。だからといってゲイがすべてそうだとは限らないだろうに。そういう人ばかりだと思ってしまうと、なんか、気持ち悪いのよね。それは私があまりセックスをしないからなのか。そういえばここ数年してない・・、そのせいかもしれない、わからない。

2年前に初めて東京に来て、初めてゲイの人たちの中で働いて、しばらくして気がついたのは、こういう風にセックスを求める感じは、ゲイだからというより男だからだ、ということでした。ゲイバーはほとんどスナック営業で、若い男の子を買うウリセンに、セックスをするためだけに行くハッテン場、そして私の働いているエロビデオ屋、この街の商売のほとんどがその4つで出来ていることを知ったとき、あきらかに私の中でこの街に対する興味をひとつ失いました。これじゃあまるで、セックスする対象が男に変わっただけで、ノンケの男が金を落とす街の仕組みと一緒じゃないの。やだ、何を期待していたんだか。違いがあるとすれば、女子風俗に比べて賃金も遊ぶ費用も低いということくらいかしら。ああ、あとは堂々と街中でセックスの交渉が出来る・・、とか。なんだそれ。

雨やどりをしていた男の子はまた別の人に声をかけられて、今度はその人について行った。なんだ、傘が買えなくて困っていたわけではなかったのね。さっきの男は好みじゃなかっただけなんだ。それとも今度は金額を交渉したか。うん、それなら理解できる。もう、お店の前には誰もいない。そして、冒頭の台詞だけがよくわからないまま残された。なんだったんだろう、あれは。

少なくともあの台詞を言った男が、この街は男同士のセックスで溢れているというイメージを持っていたことだけは確かなようだ。ここへ来れば、誰かとセックス出来るかもしれない、そんな期待もあったのかもしれない。傍観していた私からすると、彼はあの男の子と近い未来にセックスがしたくて、でもナンパの仕方を間違えて、あるいは意図するものを伝えることが出来なくて、ふられたのだ、と思うのだが、もしそうだとすると、セックスを期待しすぎて反転して「俺はセックスをしない」宣言をしてしまった、ということになるのか。相手に自分を警戒させないために? なんだ、そりゃ。なんだか彼の言うセックスと、雨やどりをしていた男の子が求めていたものとは、たとえそれが同じセックスと呼ばれるものだとしても、意味が違うんじゃないかという気がしてくる。ゲイは男とセックスをしたい男のこと。それは確かに間違いじゃないけれど、その前にコミュニケーションというものがいるのではないか? 彼のしたナンパは、女はみんな男を欲しているという理由で痴漢やセクハラをするノンケ男のセックス観と変わらないのではないか。そういうのって、性に奔放である、というのかしら。

ばっかじゃないの! そういう男のセックスが当たり前の街だとすると、ここはかなり気持ち悪い場所になってしまうわそんなの嫌よ。と、モップを片手にカウンターから出た私は、ゲイであることと、そういう男が男にセックスを求めることは、かならずしも一致しないんだわ、なんて思いながら雨水で濡れた床を拭く。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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