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私はアンティル vol.69 イチゴ事件その9 ~卒業まであと3時間~

アンティル2007.03.08

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私が3年間通った高校は桜並木のその先にあった。私たちはその桜が好きだった。けして花見客が来ることがない100メートルほどの桜並木。隣接するラブホテル街を際立たせるためにあるような張りぼてのような桜並木。しかしそこに咲く花はとても力強く、そしてどこの桜より生きることを誇っているように見えた。『この道を私はいったい何回通ったのだろう。』そんなことを思いながら、私はまだ花をつけない木々の中を歩いていた。Tと一緒に。

『Tが帰ってきた!』
私のよく知っているTが隣にいる。あの男たちがいない場所で安心してTと向かい合える喜びに、私は心の中で歓声をあげる。通い慣れた道、見慣れた風景。卒業式の朝、私の青春は再び輝き始めた。
幸せの桜並木をくぐり5分ほど歩くと茶色のレンガ作りの建物が見えてくる。3年間通った私の高校。久々の再会にヒラヒラと声を上げる同級生達の声は私にはかからない。それでも私の心は晴天100%。遠くに学校名物、アンティルの下駄箱が見えてくる。私は高校2年生から男ものの革靴を履いて登校していた。革靴であれば校則に違反していないはずなのに、初めてその靴を履いて登校した日、私は職員室に呼ばれた。

「なんだこの靴は!」(教師Y)
「革靴です。」(生徒アンティル)
「なんでこんな靴を履くんだ!!」(教師Y)
「実は私、偏平足で甲高でデカイんです。大きな靴は校則違反ですか」(生徒アンティル)
「・・・・・・・」(教師Y)

私は先生にとても評判が悪かった。怒鳴っても、脅しても、顔色を変えない私が気味悪かったのだろう。しかも靴はリーガル、長さ25.5cm。

学校が終わって男物の服に着替えて街に出る私にとって女性ものの靴を履くわけにはいかなかった。持ち歩くには大きすぎる靴。しかたなく私は高校2年の春から男物の靴で通うことになったのだ。しかし困ったのは靴箱だ。女子高の下駄箱の容量を超えるその靴は蓋をいつも半開きにさせる。10メートル先からでも認識できる異彩を放つ私の靴箱。
それは“ここがレズの靴箱だ”と言っているかのようだった。

『あ~あこの下駄箱ともお別れか・・・・』
感慨に浸っている私をTが現実に呼び戻す。
「じゃあねあとでね。アンティル!」
「うん。」
何百回もきいたそのフレーズは、私は宙に舞い上がらせる。
『じゃああとでね・・・』
グッスン。私はうれしくて泣きそうになった。私の教室とは反対側の階段を登るTの背中を私はいつまでも見ていた。Tが帰ってきた。喜びに震える春。しかしこの日を境に私の春は季節外れの猛吹雪にのまれていくのだった。
イチゴ事件を書きはじめてはや3ヶ月。なかなか前に進まないまま、今日のコラムとちょうど同じ季節になってしまいました。今日こそはひとつき分のエピソードを書くぞ!と気合いれてPCに向うのですが、相変わらず高校生です。
先日、スピーカーとしてPA/Fのイベントに参加させていただきました。たくさんの方が集まっていたので緊張してしまいましたが、とても濃密な楽しい時間となりました。この日に感じたことはまた後日のコラムで紹介したいと思っています。このイベントに関わったすべての方々、とても楽しい時間でした。ありがとうございました。終了後、声をかえてくれる人のほとんどが「あのネタ面白かったです。ウフフフ」と去っていく姿が印象的でした。
またある観客の方から、このコラムのオチはどうなるのかと質問を受ける場面もありました。私は
「リアルタイムで生きているので、オチはまだわかりません。」と答えました。
なかなか進展しないアンティルですが、感じたまま、感じてきたままをここに記していけたらいいなぁと思っています。これからもよろしく。
PS今週の金曜日はアンティルのハーネスワークショップです。“自分の欲望に出会う時間”をテーマに進行してゆきたいと思っています。(当日直接参加もOK!)

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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