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捨ててゆく私 Vol.61「ハッテン場 1」

茶屋ひろし2008.01.31

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ゲイの世界にはハッテン場という所があります。1000円とほんのちょっとで入れます。受付でお金を払ってロッカーの鍵を受け取ります。ロッカーのあるスペースで服を脱いで、そこの場所で指定されている格好になります。全裸、タオル一丁、パンツ一丁、下着はなんでもいいのか、ケツ割れサポーターか競パンか、はたまた六尺褌か・・。

荷物と脱いだ服をぜんぶロッカーに入れたら鍵を閉め、ほとんど裸で暗い廊下を歩きいていきます。シャワー室やサウナもあります。奥に進むと、廊下にベンチが幾つか用意され、その裏には板で仕切られた一畳ほどの広さの個室が続きます。扉が開いていたら中を覗けます。しばらくすると大部屋が現れます。布団かマットが一面に敷かれています。暗闇に赤い電球が点されたその迷路のような空間に、裸になった自分と同じ姿の男たちが、日夜、誰かとセックスをするために集ってくるのです。
ということで、初めてハッテン場に行って来ました。

事の発端は、新年早々、サチオちゃんにフラれたのが始まりです。年末のコラムに何回か書いた、カラオケ友達のあの子にフラれました。

言ったセリフは「付き合ってください」でしたが、内容は(あなたと寝てみたい)が正しい気持ちでした。サチオちゃんは少し困った顔をしたあと、「茶屋ちゃんにエロは感じないの、ごめんね」と言いました。ぜんぶバレていました。そのあと、「茶屋ちゃんには僕のお姉さんでいてほしい」と言われました。
お姉さん・・そうね、セックスよりは得意かも・・。
けれど、とほほな結果だと思いました。あまりセックスをしない生活のツケが来たのか、肝心なときにしたい人とエロができないと、哀しい。

エロってなんだっけ、色気ってどういうの? と、それからしばらくのあいだグルグル頭がまわり続けました。誰かに、エロいとか、色気あるね、とか言われた時のことを思い出しました。でもあれはたぶん、女っぽいという意味ではなかったか。それはけして、ゲイ受けするエロさではなかったように思いました。

サチオちゃんはゲイっぽい男が好きだと言います。それは、女っぽい男ではなく、短髪・髭の男っぽい男が好きだという意味です。ゲイはみんなそう言うわ、と投げやりに思いました。私が短髪・髭になることは体質上無理があるので、せめてゲイ受けする色気を手に入れようと思いました。未練かもしれません。

ということで、ハッテン場へ行ってその辺を試してみることにしたのです。
とはいえ、私にとってハッテン場は怖い所です。HIVやSTDのリスク以前に、知らない人といきなりセックスをするということが怖い。ほとんどしたいと思わないのです。前に上野にあるゲイポルノの映画館を見に行ったときは、10分もいられなくて逃げ出してきた私です。そこもハッテン場のひとつです。暗闇の中で映画を見ながら隣の人と触りあうとか、そういうことをするわけです。私には痴漢がいっぱいいるとしか思えませんでした。そういうことをしたい人が来ているので、私がそこでは論外でした。
じゃあ、行かなくていいよ、と思って、それ以来ハッテン場への興味をなくしていました。

前知識を、と、ゲイ雑誌のハッテン場特集を読み返しました。都内だけでも30軒くらいあります。それぞれの店舗の情報を読み込んでいくうちに、「入場条件」というものが細かくあることに気がつきました。年齢制限はさることながら、体重制限に体型制限、あとは「オシャレな方以外入店禁止」というところもあります。受付のバイトちゃんに適当に判断されてしまうのでしょうか。あとは、「35歳以下でも35歳以上に見える方はお断り」というものまであります。「50歳以上」というところもありました。
ということはこの時点で、私が入れるハッテン場が限定されてしまうのです。

もちろん「条件なし」のところも幾つかあります。体型のタイプも「幅広」とか書いています。でも外国人やお年寄りとしたいわけではないし、もっと身近な感じで厳しすぎない条件のところは・・、と探して何点かピックアップしました。
休日が来て、私は行こうと思いました。が、その日は行けませんでした。なんだかとても勇気がいります。行けなくて落ち込んで休日を終えました。次の週の休日、私は前夜から自分に追い討ちをかけ、夕方にとうとう家を出ました。自転車で向かいます。三軒まわろうと思いました。じっくり楽しみたいという余裕はなく、ババっとたくさん一気に早く終わらせたい企画です。

一軒目は、もう20年以上やっているという老舗のハッテン場です。外観は一軒家でした。中に入っても家みたいで、あまりドキドキしません。一階で服を脱いで、二階に上がると、風呂場と真っ暗なサウナがありました。風呂場では誰かがシャワーを浴びています。私はサウナに入りました。真っ暗でしかも迷路のようなつくりになっています。あちこちの角からスチームの噴き出す音が聞こえます。怖いというより危ない。手探りでゆっくりと一周しました。出るとシャワーを浴びていた人はもういません。

踊り場に出るとその人が椅子に座ってタバコを吸っていました。ハゲ、筋肉質、胸毛、股間はタオルで見えない、45歳。チェックして三階へ。電気の消えた八畳ほどの部屋に布団が敷き詰められています。入り口側に、頭まで白い掛け布団をかけた人が2人別々に転がっています。白い大きな蓑虫のようです。どうしろというのでしょう。あとは踊り場の人しかいません。
私は階段をかけおりて、「帰りまーす」とフロントに告げ、ロッカーの鍵をもらいました。
自転車に飛び乗った私は、ダメじゃん、と自分を叱咤しました。不甲斐ないような気がしたのです。踊り場の人でいいから手を出せば良かったのに。
新宿方面へ向かいます。次のところでは、どうにかなんとかしなければいけません。(続く・・)

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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