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仕事が終わって帰ろうと、ふと今日の手荷物を確認すると、コンビニの袋に今日の新聞が二紙(読売とニッカン)と、さっき友達にもらったタバコのカートンが見えます。

「これじゃまるでパチンコ帰りのオッサンだわ」と、バイトちゃんに突っ込まれる前にひとり言を放ち、「でも週刊女性も入っているのよ」と、新聞紙に挟まれた雑誌を見せてなんとなくそれだけじゃないのよ、みたいなアピールをしてみました。付き合いでバイトちゃんは苦笑してくれました。

オッサンでオバチャン・・よくわからないけど色恋はなさそう、と思って、それをママチャリの前カゴに入れて家路に向かいました。
そのタバコをくれたゲイ友達と、先週カラオケに行ってきました。

「アルコールなしでちゃんと歌いたいの」というリクエストにお答えして、夕方からみっちり四時間演歌対決をして、そのあと歌舞伎町の裏通りにある縄のれんのお店に入りました。「俺の味世」という店でした。のれんをくぐると、「俺」は見当たらず、オバチャンが三人で切り盛りしていました。年齢は五十代から七十代の三人です。呼び方は左から、ママ、ちーちゃん、おかあさん、でした。

カウンターとお座敷がある普通の小料理屋ですが、オバチャンたちがやっている店は、店内の装飾が家の中のようになります。小さな神輿や神棚にお札、鷹の剥製に、書道の掛け軸、カウンターにはお盆にトマトが盛られていて、厨房を隠す布は林檎模様のあしらいです。昔、京都にいた頃に行った「五番街」というスナックを思い出しました。そこはオバチャンたちが五人くらいいて、どの人が従業員で客なのかよくわからない空間でした。片隅にフェルトで覆われたスタンドピアノが置いてあって、博多人形たちの台になっていたように思います。

私はそういう店が好きです。なんだかほっとします。
偶然だけどいいお店に入ったね(適当)、と友達とカウンターに座りました。壁に貼られたお品書きを見ながら、なにを頼もうか、と迷っていると、中で突き出しをつくっていたママに友達がさっそく話しかけました。
「ママきれいだね、五月みどりさんみたい」「アラ、うまいこと言って。でもそう言うってことはあなた、若く見えるけどそうでもないってことね。幾つなの?」「二十三」
またこの子は、七つもサバを読みました。でも五月みどりを知っているのは、年齢ではなくその辺りが趣味の世界だからです。
「まあ、若いわよ。それにあなた甘えん坊ね、そうやって両肘をついて話しかけてくる男は甘えん坊なのよ」
五月ママは、若い男も甘えん坊も好きなようで、どんどん笑顔になっていきました。
私は隣でその様子を見ながら、この子できる・・と感心しました。
私の注文はこの子に言ってもらうことにしました。この子もママにお任せしました。伝言ゲームのようです。友達に、ママの気に入る若い男役をとられてしまったので、私は馴染む必要がなくなりました。かといって、ゲイを瞬時に隠した友達のためにオカマ全開(オバチャン化)も控えて黙っていたら、ママも捉えどころがわからず私には話しかけにくくなってしまったようです。
目の前で三人が入れ替わり立ち代り動きます。ママはたしかに五月みどり美人で、ちーちゃんは田辺聖子さんのよう、おかあさんは仏像のような雰囲気です。それぞれニットのセーターや白いブラウスを着てエプロンをしていますが、その服は鈍いゴールドだったりスパンコールが埋め込まれていたりして、全体的にキラキラした印象です。田辺のちーちゃんは真っ赤な口紅をつけていました。

カウンターの両端に常連とみられるオッサンが一人ずつ座っていました。ママたちにお酒を飲ませて上機嫌です。ママたちのキラキラも彼らのような男性客のためにあるようです。
オバチャンとオッサンは色気を求める関係になるようです。
若い甘えん坊の男は、オバチャンの息子になります。
そのどちらの関係にも入っていないというのはなんだか楽だわ、と、私は馴染んでいないけれどくつろいでいました。もう二人、カウンターに座っていたAround40(テレビドラマ)の女性たちに、あなたたちはどうですか、と聞いてみたい気もしました。
その友達が先週連れて行ってくれた二丁目のバーはニューハーフのお店でした。彼にとっては、そこにカラオケ用の舞台があることと、ノンケのリーマンがたくさん来るから嬉しい(ノンケ好き)、というのがその店に通っている理由です。
私が行った日もリーマンが五人でやって来ました。上司と若い部下たちです。
「やっぱり男は男が好きよね、なんでこんなふうにつるむかね。ていうか、これこそホモ、っていうのよ」と友達に耳打ちすると、「あ、あの人可愛い」とリーマンの一人を指差して、そんな話はまったく聞いていません。そのうち私も自分のカラオケで盛り上がってしまい、「河内おとこぶし」(中村美津子)で煽り、気がついたら全員を踊らせていました。リーマンの仲間入りをしたかのようでした。

キャバクラやスナックに行かずニューハーフの店を選ぶノンケ男たちは、ものめずらしさより、ほっとするからかもしれないとも思います。色気の入った関係をつくらずにすむというか、気取らずにお酒を楽しく飲めるからかもしれません。
ここのところ私も一人でいろんなゲイバーに行くようになりましたが、ゲイバーによっては、出会いというか、色気を求めてくる客が多い店もあり、タイプはどうだの、彼氏はいるか、など、それが話題の中心になる場合があります。そうでないような話題に見えても、実は気になる人としか口をきいていない人をみると、そっちだったか、と思います。
私はそういう状況だけだとつまらないと思ってしまう客で、周囲からすると、なんだよコイツ、と思われていたりするのかしら、とたまに思います。

そんな格好つけてないでもっと飲めよ、などとからみたくなる私のお酒の飲み方はオッサンで、話のネタは「週刊女性」から取っていたりする私が、最近くつろいだ飲み屋を二軒挙げてみました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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