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「母からの荷物」

茶屋ひろし2008.08.21

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私の誕生日が次週にせまったある日、携帯電話に母からメールが来ました。

誕生日に合わせて荷物を送りたいので都合のいい曜日と時間を知らせて欲しい、という内容です。誕生日に近い休日の予定がまだわからない私は、職場の方へ荷物を送って欲しい、と返信しました。そして、帰りに自転車に乗せて持って帰ることが出来るくらいの大きさにしてね、と付け足しました。

母からの荷物は大きい。いつも、小さい子なら一人は入れるほどのダンボールが届きます。重さも、子どもくらいあるかもしれません。
すると母から、年に一回のことだから大きい荷物を送りたい、だから昼間家にいる日を知らせて欲しい、と初志を曲げないメールが届きました。
年に一回・・いつ決まったのかしら・・。

あまり気に留めていませんでしたが、そういえば、ここ二年くらいは年に一回のペースになっているような気がしました。
彼女は荷物を送るのが大好きな人です。
子どもたちだけに限らず、昔から自分の親兄弟たちとよく宅急便の応酬を繰り返していました。季節や年中行事に、というわけでもなく、月に一度は大きな荷物をこしらえてどこかに送っていました。

私が二十歳を過ぎて一人暮らしを始めて以来、私の住んでいる場所にはもう数え切れないほどの荷物が届きました。
荷物の中身も変化を遂げてきました。
京都で自炊をしていたころは、米や野菜などの食料がメインでした。あとは、タオルやバーゲンで購入したシャツに、洗剤、マグカップ、お菓子などがちりばめられています。
服やマグカップなどは、センスの違いからか、使用することがむずかしく、洗剤などの消耗品も自分で購入するから、「送らなくていいよ」と言っているうちに送られてこなくなり、東京に来て自炊をしなくなってからは、食料品も断るようになっていきました。
「送らなくていいよ」と荷物そのものに対して言ったことも何度かありました。
感謝しているし助かるけど、という言葉を添えますが、迷惑とはまた違う、どこか受け止めようのない善意を、いつも荷物から感じていました。
すると母は、「送りたいの、送らせて」と言います。

私はもうずいぶん前から、希望するものをお願いしたことはありません。思いつかないのです。ただ、毎回荷物の中身を見て、その中から希望しないものだけを伝えてきました。そのために、母は、いろいろと想像して、私の希望しないものは送らないというふうに、荷物の中身を変化させてきたのだと思います。年に一回というペースも母なりに考えたのでしょう。その理由は、「荷物を送りたいから」なのでしょうか。
ということで、私が家にいる日にちと時間指定がほどなく決まりました。

当日、部屋で荷物を待っていた私は、一時間ほど過ぎたあたりで、何を思ったか、というより何も考えていないのですが、シャワーを浴びました。
シャワーから出て、荷物のことを思い出して玄関を見ると、不在届けが入っていました。ちょうどシャワーを浴びている時に配達が来たようです。
タイミングとは得てしてこんなものだわ、と思いながら不在届けを眺めました。
その日は夕方から出かける予定で、当日の再配達は望めないことを確認します。
母に電話をしてその事実を告げました。母は電話口で真剣に怒ります。
「アホちゃうか、なんでシャワー浴びるねん。あんな大きな荷物、こんな暑い日に階段で四階まで運んだ配達の人が可哀そうやわ」
その通りです。私はアホの頭のまま、ぼんやりと母の声を聞いていました。自分でシャワーを浴びたのにもかかわらず、それに対する反省と後悔がなかったからです。

無意識のうちに、母の指定どおりに母の荷物をすんなり受け取ることに抵抗したのではないか、と思いました。
「明日には荷物を受け取るから、ごめんね」と憤慨している母をなだめて電話を切りました。明日は普段どおりに仕事に行くのに、そんなことが可能かどうかもわからないままです。
そのまま夕方の予定をこなして、二丁目でお酒を飲んで、深夜に自転車で帰宅するころ、私は、このまま近所の郵便局に母の荷物を受け取りにいくことにしました。
郵便局では24時間不在荷物の受け取りが可能なのです。
けっきょく自分がそういうことをしそうな気がして、出掛けに不在票と受け取りに必要なものをかばんに入れていました。お酒の入った状態で大きな荷物を受け取りに行けるかどうかだけが不安でした。
近所とはいってもウチからは三キロくらい離れたところにある郵便局です。
窓口でその大きな荷物を奥から運んできた局員の男性が、その大きさと酔っている私を見て、大丈夫ですか、と笑いました。
大丈夫です、とダンボールを受け取った私は、予想通りの重さに気合を入れてみました。これは自転車の後ろに乗せて手で押さえながら歩いて帰るしか出来ない物体です。真夜中とはいっても昼間の暑さは残っています。しかも酔っているため、手で押さえていても、何度も荷物が、ガゴンという音をたてて歩道に滑り落ちます。汗だくで、片腕が攣りそうで、わけがわからなくなりながら、「重い、なんかいろんなふうに重い」とブツブツ言いながら運びました。

ようやく家にたどりつき、玄関先で荷物をほどいてみると、重さの正体は、缶ビールがケースごと24本、実家の方にお中元で送られてきたらしい缶コーヒーが12本入っていたせいだと判りました。
ビールとコーヒー、これが現在の私が希望するものだと、母が考えた結果でした。
翌日から私は、ノルマのようにそれらをガブガブ飲み続けました。
ゆっくり飲めばいいものを、計36本を一週間とちょっとで空けて、母から荷物が送られてくるというイベントをやっと終えたような気になりました。
母と離れて住んでもう十年以上経ちますが、母との付き合い方が年々わからなくなっているような気がします。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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