ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。Since 1996

違いすぎる二人の女、婚活詐欺女と鳥取詐女

北原みのり2009.11.24

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東の「婚活詐欺女」と西の「鳥取詐欺女」。
周囲の男性たちが次々に不審な死を迎えていることから大きな話題になっているけれど、二人の年齢、容姿や、詐欺の方法があまりにも似通っているからか、私のまわりでも二人が同一人物だと思っている人が少なくない。でも、よくニュースなどを見ていると、この二人に共通点があるとしたら、ただ同世代の少し太った女性である、ということだけだ。本当に、ただ、それだけ。
 
 
34歳の東京の女は、毎日ブログを綴っていた。コンピュータの前に毎日座り、狙いを定めた男性にまめにメールを送っていた。とはいえ、被害にあった男性との実際の関わりは非常に淡泊だったのではないか。逮捕の日まで同居していた男性は、「寝室は別だった」と証言しているが、もしかしたら彼女は被害者の男性たちとセックスしていない可能性だってある。なにせ”自分は皇室と関係がある”と話していた女性だ。”育ちの良い娘”が、インターネットで出会った人とすぐにセックスするなんて、リアリティがなくなるというものじゃないか。さらに「お金がない」と断った男性にには、あっさり「お金がない人とは無理です」と関係を切るのも印象的だ。無駄な時間を使わず、決して感情的に深入りはしない姿勢は徹底している。また相手の男性が「実は婚活中でして・・・てへ」みたいなはしゃいだ気分でいるその最中に、あっさりと、まるで”ポア”するかのように消してしまう感情の薄さに圧倒される(もちろん、現時点で彼女がしたかどうかはわからないが、もし関わっているとしたら、それは殺人、というよりは、消去、という感覚だったのだろう)。
また、彼女の家族関係のことは、あまりメディアに出ていないが、ある週刊誌で彼女の妹がインタビューに応じてこう答えているのを読んだ。
「姉のことについて、家族会議をひらいて、マスコミ対策を考えました」
まるで不祥事をおこした企業の取締役のような言葉だった。もちろん家族に何ら責任はないが、彼女の家が上流志向が強く、また実際にある程度裕福で、「他の家族とうちは違う」意識の強い家だったのではないか。
 
 
「家族会議」なんてものから、おそらく、35歳の鳥取の女性は縁がない生活を送ってきた。
貧しい子ども時代を過ごし、中学を卒業してしばらくして結婚し、子ども二人を産み、離婚後別の男性とまた二人子どもをつくった。逮捕されるまでは、”内縁の男性”の隣の家、8畳一間に小さなキッチン付きのアパートに、子ども五人と犬3匹、猫5匹と共に暮らしていた。一番上の子どもはもう高校生だ。
彼女は、金づるの男性に、何通も何通も手紙を書いている。メールではなく、手書きの手紙を何通も出し、「あなただけ」と記している。家にコンピュータすら、なかったのかもしれない。というか、ブログなんてものは彼女の人生に無縁だったのではないだろうか。セックスが上手だったと証言している男性がいた。彼女の周りで不審な死を遂げた男性二人は既婚者で子どももいたが、彼女と出会い家族を捨ててしまっている。どろどろの不倫劇が繰り広げられ、男性が苦悩した様子が周りの証言でわかる。また、相手の男性が萎縮するほどの激しい暴力を繰り返したという事実も伝えられている。相手の男性は、水死や、列車にひかれて亡くなったりなど、凄惨だ。
女と男の間で繰り広げられたんだろう激しい感情と鬱屈した日常と延々と垂れ流し続ける暴力の香りが、この女性のまわりから濃く漂う。
 
 
本当に同じ時代に生きている女の犯行なのかと戸惑うほどに、彼女たちは何もかもが違う。深刻な貧しさと「人間関係」しかない激しい暴力の世界に生きる女と、凡庸な選民意識とあまりにもドロドロしていない人間関係(というか、関係、すらない)。
違いすぎるのに、なぜ、こんなに似ているんだろう。知れば知るほど、この二人の女性の間には、この社会にいる女たちの、果てから果て、というような印象すら受ける。
今のところ新しい事実が何も出てこない状況。だからだろうか、マスコミは、「太った中年女」が云々・・・みたいなことを繰り返し報道してお祭りみたいに騒ぐしかないのだろうか。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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