ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

時間のこと

北原みのり2009.06.04

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早いものでもう、2009年も半年過ぎちゃった。何もしていないのに・・・と焦る。お正月に、いっぱい目標たてたのに。年々、一年が早くなっていくのはなぜ? と思っていたが、これには”科学的根拠”があるのだと、今一番面白く読んでいる生物学者、福岡伸一さんの本で知った。カラダも時間を感じているのだ、と。というか、カラダそのものが時間なのだ。一瞬たりとも留まることなく、常に動き続けている、常に消えていき、常に生み出していく、私たちのカラダ。それは時間そのもの。
福岡氏によれば、年をとっていくとカラダの時間の感じ方がゆったりとしていくのだそうな。つまりは、一日24時間を6才児は3日くらいの長さに感じられるけれど、38際の私には18時間に感じる、ということ。「時間が経つのが早すぎる!」というけれど、実際には「時間をゆっくりと感じている」のが、年を取っていくことなのだ。
 
毎晩、猫といちゃいちゃして過ごしている。猫と暮らしてもう3年になる。猫年齢では26歳くらいなのだという。人間の1年は猫の4ヶ月。猫たちは、どんな風に時間を感じているのだろう。一日中眠り続けている猫。
 
子どもの頃から犬を飼ってきたが、犬といちゃいちゃした経験はなかった。犬とは、遊ぶ、という感じがピッタリだ。おいで! あそぼ! こっちおいで! これ楽しいよ! やさしくしてくれてありがとう。いいこだね。なでたり舐められたり、走ったり、おいかけまわされたり、駄々をこねられたり、お腹をゴロンとむけられたり。遊んで、触って、存在を感じてきた。でも、猫とは・・・遊ぶ、というより、いちゃいちゃしている。
 
もちろん、いちゃいちゃするかしないかは猫の気分次第だ。
うちには三匹の猫がいるが、一番甘えん坊のオクは、私が本を読んでいると、本と私の間にはいってきて本を閉じろと命令し、触れ、と頭をつきだし、ミーと小さく鳴く。はいはい、って頭を撫でていると、前足で私のお腹をモミモミしだし、鼻をグズグズとならして私を見つめる。そうしていると次第にうつらうつらしていき、コクリ、と頭が一瞬垂れ下がる。するとハっと目を覚まし、そうだ、と思い出したかのようにもっと気持よく触れあえる位置はどこかと、全身を私のカラダにふにゃふにゃこすりつけてくる。
 
長毛金髪、女王様タイプのハチという猫もいる。ハチはそういう気分でない時に触ろうとすると、前足をニョキと前に突き出し「ヤメテ!」と怒るが、甘えたい時は「どうして、抱かないのか!?」と恫喝するかのように騒ぎ出す。ミャミャミャと、尻尾を小刻みにふるわせドスンと私の上にのる。6キロの巨大猫、堂々とそびえたつ。それから顔を私の顎や胸にこすりつけてきて、撫でろ、抱け、触れ、そして起きろ(たいてい私が寝ている時に、そういう気分になる)と要求する。
 
私に全身をゆだねてくる猫。どこにも力が入っていない。ふんわりとあたたかくやわらかい。触りたい。撫でたい。抱きたい。気が付くと、端から見たら交尾いているのではないかと思われるような勢いで私は猫といちゃついている。
ああ、この柔らかさ。もし私が長生きをして、そして同年代のトモダチがものすごく少なくなっても、猫がいれば大丈夫、というような気持ちになる。世界中の街角で老女が猫を抱いて、通りを静かに眺めている。そんな老女の一人に私もいつかなる。その時は、私と猫時間は、きっと一緒だ。
 
先週、40歳の男性に「北原さん、僕より、若かったんですね!」と真剣に驚かれた。同じ場で、28歳のイギリス人に「僕と同じ年くらい?」と聞かれ38歳だというと、驚かれた。「年」とはなんだ。年を取るのは素晴らしいこと、とか言うけれど、そして早く婆になりたいとも思うけれど、実年齢よりも上だと思われると、なんだよ、と怒る自分がいる。でも20代だと思われてもちっとも嬉しくない。歯を白くする薬を歯医者でもらった。「時間」を止めたいのか、私は。少なくとも太陽暦で年を取るのをやめよう、と心で宣言し、とりあえず買ったばかりのwii fitで”肉体年齢”を計算してみた。53歳だった。53歳を先取り。このカラダが53歳ならば、なんだか私、100歳でもぴんぴんしていられそうな気がする。
 
猫を抱きながら、時間について思いながら、あと半年しか残っていない2009年に焦りながら、自分のカラダの中で動いている時間について、もっともっと集中しよう、自分のカラダを信じよう、と念じている。猫といちゃつくと、そういうことが楽にできるような気がしてくる。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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