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Tが手首を切った

アンティル2010.02.26

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Tが手首を切った。付き合っていた会社の先輩Oに彼女がいたことが発覚してカミソリをあてたのだ。驚いて病院に駆け込んだ私はそこで初めてOと会った。そのことに動揺しながらも、同時にその関係が破局に向かっていることに喜んだ。
『TはきっとOと別れるはずだ。性器のコンプレックスから他のオンナの人と比べられることをとても恐れていたTにはその選択肢しかないはずだ!』
でも、それはとんだ勘違いだった。
次の日、朝一番で病院に行ってみるとTは退院していた。
「ここのコ、朝退院したよ。」
Tのベットの隣にいるおばさんが私に話しかける。
「あんた、あのコの弟かなんかかい? 学校大丈夫なの? 行かなくて? 高校生だろ?」
暇を持て余すおばさんは、恰好の話し相手を見つけた! とでもいうような目をして手招きした。
「(ヒソヒソ)あの二人、新婚かい? もうベタベタしてて大変だったよ。夜中なんておっぱじめちゃってさ。もう今の若いもんはねー。あんたは彼女いんの? ちゃんと勉強しないと・・・・」
病院の白い世界が一瞬で灰色の世界に変わる。そして私はその場で泣き崩れた。
「おい、あんたどうしたんだよ。どっか痛いのかい、あっ! 看護婦さん! ちょっと大変だよ!!」
私は逃げるように病院を飛び出した。
コンコン コンコン
アンティル「Tさんいますか?」
Tの母「あーアンティル。まぁ上がりなさいよ。」
これまでとあまりにも態度が違うTの母親に即されるまま、私はTの部屋に入る。
Tの母「T! アンティルが来たよ。」
Tはベットで上半身を起こし、雑誌を見ていた。
T「・・・・」
Tの表情は気まずいような、でも隠すことができない幸福笑みを全身に纏っているという感じだった。
Tの母「病院に来てくれたんだって。だったらOさんにも会ったでしょう。TはさっきOさんと婚約したんだよ!」
TはOを許した。そしてOはTとの関係を守るために昨晩、元カノと別れ、その場でTに電話をした。元カノがいる状態で電話したのたという。TはOに元カノと話させろと迫ったという。本当に別れたのかどうか、確認するためだ。
TはなぜOを許したのか、それは小陰唇を整形し誰にも恥じることのない性器を手に入れた自信の現れだったようだ。Oは元カノと別れた足でTの病院に向かいプロポーズをした。そして今朝、Tの両親に挨拶をした。
その後、私はKの時のようにOの嘘を見破り一波乱を起こしたものの、TとOの結婚への道を見ているしかなかった。そして私とTとの5年近くにもわたる愛憎のドラマは幕を下ろした。Tは私に関係の維持を求めた。しかし、私は決心した。Tから離れる。それは、新しい人達との出会い、街との出会い、仕事との出会いが私を変えてくれたおかげだった。
ついに地獄からの生還。
2年後、Tから結婚式の招待状が届いた。しかも私の両親も呼ばれている。派手な演出に、見たことがないようなしゃちほこ付きのケーキ。さすが名古屋! と笑い声を上げられた時に、私の地獄は思い出に変わった。
それから6年後、Tから電話がかかってきた。もうすぐ子供が生まれるという時だった。それで不安定になったのか、私とつきあっていたことがバレて、子供の一生に傷がついたらどうしてくれるんだ! という恐喝のような電話だった。話し続けるTからの電話をガチャと切った時、なぜ私はTと付き合っていたのか考えずにはいられなかった。そばにいた猫がニャーと私の足にすり寄る。
ある日の夕方。私は自分の足でしっかり大地を踏みしめることができるようになった自分に気がついた。
追記
Oがついていた嘘は「俺は心臓病だ」ということ。Tは病気でも仕事に励む姿に惹かれたそうだ。しかし、それにしては行動が怪しい、Oが病気の治療のため飲んでいるという薬を調べたところ、それは整腸剤だった。そしてOはそれを認めた。チャンチャン♪

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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