ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。Since 1996

聖なる母にさよなら

北原みのり2010.08.03

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 数日前の東京新聞、金原ひとみさんのコラムがよかった。手元にないので記憶だけで書くけど、金原ひとみがギャル系ママ雑誌を面白く読んでいたところ、同じものを読んだ夫が、「自己顕示欲が強すぎる、母親として尊敬できない」というようなことを言ったのだそうだ。それを聞いて金原ひとみは号泣したという。いつまで母親に、聖性を求めるのか、と。
 
 シングルマザーの女性が子どもを殺す事件が続いてる。34才の女性が子どもを洗濯機に入れたり等の虐待を繰り返して死なせたのは先月。つい先日、23才の女性が二人の幼い子を放置したまま一月家に帰らず、死なせた。元夫にも実感にも頼らず(頼れず)、誰にも助けを求めることなく、そうなってしまった二人の女性。
 
 23才の女性が書いていたというブログが紹介されていた。
「ひとりじゃないんだと、思わせてくれた小さな命。」「本当にいとおしく思えます」「ただ無事に生まれてきてくれたらそれでいいよ」「家族なかよしこよし」
 いい子だったんだろうな、と思う。家族といえば、「なかよしこよし」。小さな命といえば、「いとおしい」。幸せのセオリーが彼女にはきっとあったんだろう。もし彼女に、「子どもなんて産まなきゃよかった」「もう、子育てやってらんない」「殺したいと思う時がある」と、本音を、例えばブログであっても発露できるような、そんな力があったのなら、と思う。
 
 金原ひとみはコラムの中で、「男が子どもを簡単にほしがるのは、何かを諦めることを、全く考えていないから」というようなことを書いていた。女は問答無用に、色々をいったん、諦める。問答無用に、人生が変わる。別にそれは不幸なことじゃない。ただ、男とはずいぶんと違う、というだけ。だけどその変化は、「家族一緒が一番の幸せ」とか、「愛する人の子どもを産む幸せ」とか、誰も口にする当たり前の幸せのセオリーを自分に言い聞かせているだけでは、きっと心の中に大きな大きな疑問がどうしたって生まれてしまうくらいに、大きい。どうして、女だけ、どうして、私だけ、どうして、母親だけに、そこまで求めるの。
 
 彼女たちがもし、「やってらんない」思いを、もっと素直に表現できたなら。やってらんないって思いを、もっと色んな人に言えたなら。それを表現したところで、「不幸な女」でも「寂しい女」でも「ダメな母親」でもなくて、とてもよくある女の本音である、ってことが、彼女たちが感じられたのなら。
 
 安直な幸福を語る社会で、不幸な女は増加する。
 
 
 
 
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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