ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

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先週末、上海に行った。5日前に急に思いついてチケット取ってとにかく出ようっ! という発作的な旅だったけど、外の空気を吸えて本当によかった。前日まで煮詰まっていた原稿をそのまま抱えて上海についたけど、ホテルに着いてものの20分で書き終えた。煮詰まっていたのが嘘みたい。空気の入れ換えってほんと、大切。そして、こんな風に海外にサクっと来られる今の環境にも感謝。ラブピースクラブのスタッフに感謝感謝。
 
 
原稿書き終えて編集者に送信して、さて、ツイッターでもやるか。飛行機がアップグレードされてて超快適、ビジネスクラス最高! とかつぶやこうと思ったら、このページは表示できない、との案内が出てきてしまった。上海はツイッター禁止。
街並みはヨーロッパ、その中をボコボコと近代的なビルが建ち並び、平日深夜でもジャズバーやクラブには人が集まり朝までずっと賑わう上海。10年前に初めて来た時の方がもっと異様な活気があったように思うけど、衰えた感じは全然しない。この街の雰囲気を私なんかは「バブルの頃の日本みたい」という言葉しか思い浮かばないのだけど、今の若い人だったらなんて表現するんだろう。今どき、歌舞伎町だってこれだけ人は歩いてない。
で、そんな上海でツイッター禁止。うっかり忘れそうになるんだけど、やっぱりここは共産圏なんだ。フェイスブックも、マイスペースも使えない。Yahooジャパンやラブピースクラブはみられるのだけど、個人が好き勝手に発信できるツイッターは危険ってことなのか。上海に住む友人は、外国のサーバーのアクセス権をもっていてどうしても必要な時は、海外のネットにつないでIDとパスを入れて使うそうだけど、それでも非常に重くて、ほとんど役に立たないのだそうだ。
 
 
「中国って、どんな選挙方法なの?」
ご飯を食べながら友人に聞いた。友人は、一瞬、はぁっ? という顔をして、大声で笑った。ばかなあたし。
「選挙? 選挙って言った??? 何言ってるの? ここは中国だよ!!!」
 
 
 深夜の上海を歩く。日本人の女は、すごく目立つ。そもそも若い日本人観光客が少ないせいもあるけれど、髪の毛が茶色くて、くるくる巻いてあって、つけまつげで目が大きくて、高いヒールを履いて、腕をクの字に曲げたままバッグを持って、ヒョコヒョコと歩く日本人は、そこだけスポットライトが当たっているかのように目立つ。友人は「日本の女の子は本当に可愛い。アニメからそのまま抜け出たみたい!」と絶賛するが、確かに髪が茶色かったり、つけまつげの中国人にはなかなか会わない。「かわいぃいい」子はいないし、オシャレだなぁと関心する子も少ないけど、愛想が悪いせいかみんな大人っぽく見える。「かわいさ」って、なんだろう。
 
 
日本でテレビを観ていて最近気になるのは、首から上をぷるぷる震わせている女の子がなんだか多くない? ってこと。それは、例えば写真を撮る時や、TVカメラの前で静止を求められる時に顕著に表れるんだけど、キメ顔をつくって、プルプルと首から上が小刻みに揺れる感じ。芸能人だけじゃなく、一般人もけっこう、これやる。私もうっかりやっていたことがある。プリクラのせいかな、とか思う。目を大きくあけて、口の形を作って、一番可愛く見える顔のまま、プルプルプルプル震えている感じ。無意識にやってしまう、かわいさ。このプルプルプルプル震える感じを、意識的に押さえて、シャン! としたら、日本人女子の「かわいさ」の定義は少し変わるような気がする。そのくらい、けっこう多くの人が、プルプルしてる。
 
 
上海の夜。疲れ果ててマッサージ店に行った。たばこも吸える、ビールも飲める、中国政府認可のマッサージ店でビールを飲みながら足マッサージを受けた。身体を冷やしながら足暖めるってどんな感じよ。中国人の若いマッサージ師が友だちに話しかけている。色々たくさん。友だちはほとんど通訳しない。後で「何て言ってたの?」と聞くと、「まったく、うるさい男だった。身体にいいご飯とか、このツボが腎臓に効くんだとかなんとかさっ!」と言う。ちょっとびっくりする。「どんな仕事してるの? どこから来たの?」とかプライベートなことを聞いているからうんざりしているんだと思っていた。ツボの話だったら、むしろ、聞きたかったよ・・・と言うと、彼女はピシャリと言った。
 
「マッサージ師はマッサージだけしていればいいじゃない? プアーな仕事だとは思うけど、しゃべる仕事じゃないでしょ」
 
 マッサージ師はプアーな仕事なんかじゃないけど? 少なくとも日本では、とか言いかけてやめた。考えてみれば、その友人は台湾出身で、お金持ちの銀行員の父親がいて、イギリスの暮らしも長い。彼女は、すごくアッパークラスの人なのであった(ついでに言えば男女差別を憎むフェミニストでもある)。階級というものが日本なんかよりもあからさまに色濃くある世界なのだ。・・・中国だけど。中国なのに? 中国ってなに?
 
 
たった2泊の短い旅。上海エキスポに行こうかと思ったけど、あまりの暑さにくじけて行かなかった。空港までは時速400キロのリニアモーターカーに乗った。カーブする時に、グイーンと車体ごと傾いた。ジェットコースターみたいだ。こんなもん、よく作る。市内からたった7分で空港に着いた。帰りは、エコノミークラス。「行きのビジネス、すごくよかったです」とチェックインの際に話しかけたら「そうですか」と日本語をしゃべる中国人が笑いもせずに言った。「帰りは、エコノミーです。オーバーブッキングありませんから」・・・「はい」と言うしかないし。
 
 
風が通った。違う文化を違うスピードで生きる人たちに少し触れると、自分の中の軸が少し優しく、どこかにずれて、楽になる。家に帰ると、猫たちが「この暑いなか、どこほっつき歩いてたの?」と言いながら(妄想)、差し出した手に頭をこすりつけてきた。かわいい。
 
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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