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沢尻エリカ

田房永子2011.01.26

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 23日、沢尻エリカがシンデレラ大会(たかの友梨で痩せてキレイになった人を表彰する会)の場を借りてたかの友梨立会いのもと、離婚合意会見を行なった。ボロボロ泣きながら「身勝手にスペインに行って申し訳ありませんでした」というような事を言ってたけど、エリカさんがスペインに行ってたことも知らないので、連ドラを1回見逃して話が進んじゃってるような気分になった。
 涙をこぼし続け、目の下に大きくクマが浮かせて絶望的に悲壮な表情をカメラの前で晒して十数秒も頭を下げなきゃいけないような、そんなに凄いヤバイことをエリカさんはしたのだろうか? 仕事相手やファンには迷惑かけたのかもしれないけど、お茶の間に向かって謝らなきゃいけないようなことはしてないと思う。「よくわからない謝罪会見を勝手にするな!」と怒る人がいたら、また「身勝手に謝罪会見して申し訳ありませんでした」と延々と謝り続けそう。
 エリカさんが謝れば謝るほど、彼女の本業はなんだったのか、世間が彼女に何を求めているのか、彼女にこれから何ができるのか、誰にもわからなくなっていく。ただそこにはひたすら悲しそうに謝り続ける美女がいて、その光景は単なる「虚」だった。今までエリカさんがハイパーメディアクリエイター高城氏と何がどうして結婚になったのかよく分からなかったが、なんとなく今回のエリカさんの「虚」には、ハイパーメディアなイメージと繋がるところがあって、とても相性のよいカップルなんじゃないか、とさえ思った。
 「メイクに興味があるので、本当はメイクアップアーティストになりたかった」とエリカさんが言ってるのを何かで読んだことがある。見た目が美しすぎると、裏方の仕事は難しいのかもしれない。美しすぎて、前に出ないことを周りが許さない。「美しい貴女はずっと美しくいてほしい」「美しい貴女にはこういう言動、仕草で生活してほしい」「そこまで美しい貴女にはそんな態度はとってほしくない」という、凡人達からの無言の注文みたいなものが、エリカさんのような美貌を持つ女には生まれた時からすごく集まっているんじゃないかと思う。そういう見えない何かに縛られて、自分の意志とは無関係な言動を、時には取らざるを得ない運命にある「美人」。今の沢尻エリカは、世間の無責任で無自覚な願望に対して、美人が意志を持って抵抗する課程で生まれ出る「虚」の象徴のように思える。

 そのエリカさんの隣に立ってるたかの友梨の「虚」も凄かった。シンプルな白スーツでほぼスッピンのエリカさんと対照的に、ゴージャスでえらく重たそうなネックレスを下げて、ドレスの胸元にビッチリ張り付いたギンギラな宝飾部分の細やかな反射は、報道陣のカメラのフラッシュよりも速く点滅している。そこから飛び出しそうな豊満な胸の谷間。肩にかけた純白のストールが上半身を両サイドから包み込み、それはまさに大陰唇のようで、ガッチリメイクされた頭部は突き出た陰核と見まがうほど、全身で&"THE 女!"を主張している。
 「たかの友梨ビューティークリニック」に通えば、年をとってもたかの友梨みたいな美熟女になれるんだな。…なりたいのか? 別に。でもどうせなら「キレイで若い」と言われるオババになったほうがよさそうだし。女を捨てないってそういうことらしいし…? 本当にそうなの? 私にとっての美しさって一体何? 女たちのそんな疑問を一気に吹っ飛ばし思考停止させ、絢爛豪華な美を先に提示する。実態のない「虚」を具現化したようなたかの友梨の装い。

 美しすぎる故に、立ち位置と自分自身のバランスを見失い「虚」の道を通過せざるを得なくなっている状態の若いエリカさんと、美を追い求めるあまり華美すぎる「虚」を放ちまくるカリスマ熟女…。
 たかの友梨は言った。スペインに行ったエリカさんへ「私は親のように『帰って来い』と。『もうこれではあなたの運命は変わってしまうよ』と大人のアドバイスをさせていただきました。何度もメールをしました」。
 美人は放っておいてもらえない。美しくないために放っておかれて生きてきた者たちが持つ心の「虚」を埋めるために、美人はまだまだ日本に引き止められてしまう。あと少し年をとって見た目が崩れてきたら、もう誰かに謝りながら生きなくてもよくなって、エリカさんが本当にしたいことができそう、と身勝手に思った。
erikasan_20110123.jpg

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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