ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

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 サッカーの試合で、李選手がゴールを決めた。「日本に帰化し、日本人として喜んだ」みたいなことが色んなメディアで報道されている。”日本のために頑張る在日”という表現は李選手のお父さん自身の言葉として紹介されているが、多くの記事やニュースで「日本」「日本人」「日本」「日本人」「日本」「日本人」と怒濤のように並んだ李選手賛美の記事を読んでいると、ここで書かれている「日本」と「日本人」は、私に関係のあるものなのだろうか、という気持ちがわいてくる。
 
 つくづく「差別」の構造って似ている。在日だからより頑張らねばっ! と頑張った李選手の思いは、女ならより頑張らないと認められないっ! と置き換えても十分に通じる。また、世間で肯定的に使われる「女らしさ」「男らしさ」の曖昧な定義に振り回されるのも、全く同じだ。
 
 それでも。日本人って、何ですか。
「日本人ですか?」といわれれば「はいそうです」と言えるけど、「エスニック的には?」と聞かれたら「わかりません」というしかない。「北の顔だよね」とか「南の顔だよね」とかいう会話はふだんの会話ですることはあっても、だからといって自分のルーツやエスニックを特定しようとはまるでならないのは、「日本国籍」が「エスニック」に替わる強いアイデンティティだから、というよりは、「エスニック」が何であるか「ネイション」とは何か、という教育をほぼ受けていないからなんだろうな、と思う。
「男ですか? 何をもって男ですか?」と突き詰められても「ははは、男だから男だよ」で会話が終えられるような曖昧さで生きていられるのと、同じ。国のこともセックスのことも「自然」だと思っているのかもしれない。そんな感じでエスニックを語り国を語り、猿まねした韓国人選手を「同じモンゴロイドのくせに」と嘲笑い、あいまい
に、”自然”に、日本人でいることを日々重ねてる私たち。
 
 最近、友人と、尖閣諸島とか竹島とか北朝鮮とか領土問題とか、すでに戦争気分の人がいるよね、っていう話をした。友が言う。
「尖閣諸島で熱くなっている男をちょっと茶化したら、『じゃ、あなたは戦争になったら中国の味方をするんですか?』って凄むんだよ。ばかかと思ったよ。どっちにつくとか、どっちの味方だとか選べないのが戦争なのに」 
 
 国と国との争いにうっかり巻き込まれたくないのに、巻き込まれるのが、私たち。
 せめて。主体的に絶対的に俺は男で日本人である、と言い切る雄叫びの、実はとても曖昧でお粗末な「国」「ジェンダー」「民族」観には、何よりも絶対に巻き込まれず被害にあわないで生きたいものです。・・・あ、サッカーは好きです!
 
 今年はじめてのコラムになりましたが。今年もどうぞよろしくお願いします。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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