ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

Loading...

 私は、夫のことが大好きだ。だけど放射能の話をしてる時だけはイライラする。私が「柏市で奇形の植物が見つかったんだって。『放射能の影響に違いない』ってブログにアップしてる人がいたよ。ほんとかどうか分からないけど、怖いよね」と言ったりすると、「そんなもの、放射能の影響かどうかはわからない」と否定的な言い方をする。私も「放射能の影響かどうかはわからないよね」と、同じことを言ってるのに…。
 何故か「放射能」の話だけ、急に夫は一方的に語気が熱くなり、いつもの感じじゃなくなる。なんだか、「来た来た! 俺の出番!」みたいな気が夫からバーッと噴出してきて、「どうしたんだろう…」と思ってしまう。夫は興奮気味に「どこかの国(はっきりと国名を言っていたが、私が忘れました)では今の東京と同じくらいの放射線量が空気中にあるのが普通なんだよ!」とか声が大きくなる。それはまるで、「もう放射能で死ぬのよ私! 今すぐ死んじゃうわ! どうしてくれるのよ!!」と狂乱してる私をなだめるかのような言い方なので、「??」となってしまう。私はどうにもならないことに対して「怖いよね」と愚痴を漏らしているだけなのに、「いいかげん安心しろよ!」と夫が怒り出す感じ(本人は怒ってるつもりはない)。夫が言ってる内容は、私にとっては「そうなんだ、放射能が多い国もあるのね。知らなかったわ」と思う情報なのに、言い方にムカッとして「他の国のことは今どうでもいいんだよ!」と、論点ズレてんのよ、ホント使えない男よね! という言い方で返してしまう。すると夫は興奮気味に今度は放射能の怖さを説明し出したり、「永子さんは怖がってるけど放射線量の値を毎日チェックしているのか!」と、放射線量をチェックしてないお前には怖がる資格がない、みたいなことを言う。私もムキになり「見なきゃ放射線を怖がっちゃいけないワケぇ~!!? さっきからなんなの、ただ怖いねって言ってるだけだろーが!」と不毛な叫び声を上げ、最終的には喧嘩のようになる。お互いに言ってる内容を整理すると、私たち夫婦は放射能に対して全く同じ「不安と恐怖」を共有している。2人とも同じような意見を言っているだけだから本来は喧嘩になりようがないのに、何故か毎度険悪になる。
 一度、「私が不安だ、と言うと『大丈夫だ』と返してくるくせに、私がそれで安心すると『でも本当は怖いんだよ』とまた逆のことを言ってビビらせるの? 言ってることがメチャクチャだよ」と聞いたことがあった。夫は「それは…怖がっていたら安心させる、安心したら今度は怖がらせて、また安心させる、そうすることで、俺は家庭内の自分の権力を誇示してるんだ。『頼れる、ついていきたい』と思われるように仕向けてるんだ。俺は小さい男なんだ!」と言ったので驚いた。「そんなことしなくてもついていくよ…そんなことするほうが逆効果だよ」と言うと、それは分かってるけど、やらずにはいられない、というようなことを言っていた。
 「女から頼られたい」そんな気持ちを素直に実行する時の男ほど、女からうざったがられる…この世はカラクリ時計です。私は、「永子より上でいたい、頭がよい立場でいたい」と思ってない男性と付き合ったことがない。高校生の時テレビでゼネコンという言葉がよく流れていて、当時付き合っていた大学生の彼氏が、唐突に「俺はゼネコンに詳しい」と自信満々に言うので、「ぜんぜんわかんないから教えて」と聞いたら、「ゼネコンは、あれだ。あれなんだよ」と全く要領を得ないことを言い出して、こちらが顔面蒼白したことがあった。ああいう時の男の人ってかわいそう。分からないことを分かると口走ってしまう、とても無駄な行為。だけどあれがやめられない、頼られることで優位に立ちたい欲が満たされる瞬間を味わいたい、という気持ちを優先させる、その場でぜんぜん必要がないのにやらずにはいられない、嗜癖のようなそれは、単なる中毒だと思う。
 放射能の話で男と女が噛み合わないのは、「優位中毒」を男達が優先させ、それが本来の会話をさえぎるという事態が多いんじゃないだろうか。それに比べて、放射能に対して同じ感覚、そして自分よりも高い知識を持っている女の人と話す時ほど、心安らぐ時はない。私にとって、彼女達と夫は全く同じなのに、夫はそこに「永子より上に立ちたい」という気持ちを持っている。それで会話がうまく進まない。政治家がすぐにあいつをやめさせるとばっかり言ってるのも、優位中毒そのものって感じがする。日本は「優位中毒」を軸に出来ていて、そのせいで非合理的になっていて、この、男達の変な中毒がなくなれば、原発だけじゃなくて他のいろいろなことが、とても合理的に安全に進むように思う。
 それには、男達がオカマ化するしかないと思う。「怖いよね」と言ったら「ホント怖いわよね~!」とか。松本元復興大臣も、もしかしたら「アンタ、遅いじゃないのッ! 何分待たせンのよ!」とオネエ語で話してたら、やめるまではいかなかったかも、と妄想した。
優位中毒
女向け商品度★★☆☆☆(女に人気の男性アイドルって優位中毒具合を意識的に調節していると思う)
原発よりも、これが突然なくなったほうが日本パニック状態になりそう度★★★★☆
だけどなくなっても案外すぐ慣れそう度★★★★★

Loading...

田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP