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TENGAでフェアプレー

田房永子2011.12.02

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 妊娠したばかりの頃、なにか、まんこ全体が少し降りたという感じがした。たぶん骨盤の形や位置が変わったからだと思うけど、明らかにその頃から私の下半身は「セックス向き」じゃなくなっていた。膣に何かを挿入するのがためらわれる。それでも私は「『妊娠中の挿入セックス』がどんなもんか、絶対にやってみよう!」と思っていた。だが夫は出産が終わるまで挿れない、と断言していた。私は「ちょっ! 挿れてみて! ちょっとでいいから! ねっ、お願いお願い、先っぽだけ!」と頼んだ。その時私がしようとしていたのは最早、セックスではなくチャレンジであった。もう既に自分の膣が「ちんちんやバイブが通るところ」から「赤ちゃんが通るところ」へ変わってしまっていることに自分が一番気付いていたのである。結局挿入は一度もせず、性的快楽の意味では今、私の膣は機能していない。
 その代わりなのかなんなのか、表面の感度がドえらい上がっている。今までただの皮膚でしかなかったまんこの外側(おまんじゅう部分)の感度が異常にバツグンになり、ちょっと触れると目がとろんとしてしまう感じだ。
 乳首に関しては、現在は“エンドウ豆姫”状態になっている。エンドウ豆姫というのは布団を20枚以上重ねてもその下にエンドウ豆が一つ入ってるだけで「背中が痛くて眠れない」と訴える超敏感なお姫様である(アンデルセン童話)。私の乳首も、現在は下着・シャツ・厚手のトレーナーの3~4枚越しからの刺激がモアベターである。トレーナー越しに何かモノが乳首部分をカスる時、頭の中で「オウッ♡」という声が出る。
 総合して、おっぱい揉んで~乳首くりくりして~あちこちペロペロして~クリちゃんとこんにちわ~ピストン運動ごくろーさん~な「普通のセックス」は完全に不可能な状態になっている。人によって違うと思うけど、私はどの工程もできない。
 そして「オーガズムを感じると子宮収縮し、早産に繋がり胎児に危険をもたらす」とよく言われているし、実際にお腹の中がギューンと固まる感じがして怖い。だから自分の性欲を放置するのだが、夢ーガズム(ムーガズム:夢精の女版)で勝手にイッてしまう。勝手にイクってことはやってもいいってことだろうと一人でする時もあるのだが、終わると「赤ちゃん動かなくなったらどうしよう…ヤベエ…」と一気に暗くなっていちいち面倒くさい。だが、その直前に感じる快感はものすごいのである…。単に、普段からムダ打ちせず危険がないように集中してるから気持ちがよさが高いのかもしれないが、あまりにすごいので「お前は快楽を選んで子を危険な目に遭わせる鬼なのか?」と神様かなんかから試しの審判をされてるような妄想すら浮かぶ。
 私はこの鬼にまつわる罪悪感をなるべく感じずにオーガズムを得るオナニー体位を見つけた。「足をすごく開いた正座」である。お腹ギューンが全くないわけではないが、寝た状態でするよりも断然にギューンが弱い気がする。格好も座禅っぽくて神に近くなってる感じで縁起がいい気がする。とにもかくにも妊娠してからは一人の時にしか安心してオーガズムを感じることができなくなってしまった。
 この肉体と精神の変化によって、今の私の「セックス」には、愛撫もオーガズムも必要ではなくなっている。
 このコラムで前々回、TENGAについて記述した。あの時は、つわりの一つとして「人に触ることができない」状態だった。人でも動物でも、生きている物の近くに寄れない、という状態だった。そういう時の「触らないセックス」において、TENGAはかなり有効なグッズだ。そのTENGAについての記述がツイッターで広まり、いろんな感想を読むことができた。「出張へ行く時、妊娠中の奥さんにTENGA EGGを渡されるといいかも」と書いてる人がいた。確かに「アナタ、これ持っていって」と出張へ出かける夫へ妊婦の妻がTENGA EGGを渡してる写真の広告が「たまごクラブ」に載ってないことのほうが不思議だなぁと思った。
 他の感想では「TENGAを使えば男はイケるけど、その場合の女はイケないじゃないか(フェアじゃない)」というのもあった。確かにそうである。そのアンフェア性をまたTENGAがカバーしてくれた夜のことを、今回は報告したい。
 ツイッターで広まったのがきっかけで、TENGAの社員の方から連絡があってTENGA本社へ出向く機会を得られた。「妊娠中の『触れられない』セックスでのTENGAがもたらす有効性」について1時間熱く話し、帰りにいろいろなタイプのTENGAをお土産でいただいた。
 前回の私のTENGA体験は、スタンダードな赤シリーズのみの使用であり、TENGA EGGは未知であったが、その「たまごクラブ」っぽいイメージのデザインから、EGGはTENGAシリーズの中でも一番の「妊娠中のセックス向け商品」であると思っていた。EGGシリーズを実際に使ってみると、どちらかと言うと“手コキ補助”という感じが強かった。つわりで他人の皮膚に接触できない時、ちんちんと手の間にEGGがあるだけで“手コミュニケーション”(手コキとコミュニケーションをいま強引にくっつけました)に有効である。やはり、見た目が可愛らしいので赤シリーズよりも抵抗感が少ないし、妊娠や病気の時などの手コミュニケーションの入門として本当に優れた商品であると感動した。(しつこいですが、本当になぜに、妊婦雑誌で紹介されていないのか、今世紀最大のWHY?です)
 更にEGGには「ひっくり返すことができる」というスゴイ特色がある。ひっくり返すと「まんこを模したぬるぬるプルプル部分」が表に出る。それを電動マッサージ器にかぶせればぬるぬるプルプルが震動し、それを女の部分にあてると気持ちよい、という裏技があるというのだ(私はこの衝撃裏技情報を以前レディコミで読んだのですが、TENGAの人も認知していました)。この「ぬるぬるプルプル部分」はもしかしたら妊娠中の“エンドウ豆姫”並みの感度を誇る乳首やクリトリスにちょうどよい刺激なのではないか? まだ試していないが、是非とも試してみようと思う。こうして私のチャレンジは、日々刻々と変わっている。

 そして、アンフェア性をカバーしたのは、カップタイプの白のソフトシリーズだった。
 TENGAの社員さんが、「赤のスタンダードシリーズよりも、白のソフトシリーズのほうが刺激が弱いので、人にしてもらってる感や寸止め要素が加えられて、女性が主導で使うのは白のほうがオススメです」とお土産で白シリーズもくれた。そして白シリーズを使用してみると、やはりTENGAの人が言うことと同じことを、我輩の夫の“我輩”も感じ取ったようであった。
 カップタイプのシリーズは、手に持っていれば男の人が主導で動けるので、「挿入されてる感」が強く味わえるのである。ここが、持ち手が主導のEGGと違う点である。TENGAは女性器を模した物品のため、音などもリアリティーがあり、私の脳はTENGA白シリーズによって、完全なる“セックスしてる感”を味わった。「セックスですること」は一切何もされてないのに、あの「セックスで感じる至福感」が体に充満していくのが分かった。膣が、クリが、ぴくんぴくんイッちゃう、というのとまた違う「イッちゃう」が、そこにあった。セックスを楽しんだあとの脳がハッピー要素であふれかえるフワ~ッとした感じ、あの、脳の中に快楽物質がシュワーっとはじけてひろがっていく、あの「はじけ」がブワッブワブシャー!! と強く広がるのを感じた。クリぴくぴく系のオーガズムはないが不足感はなく、完全なるフェアプレーになっていたのである。ノーオーガズムでフィニッシュなのでお腹ギューンもなく、心はフワフワ幸せ気分になった。
 セックスって、一体なんなんだろう? 私は乳首をコリコリされてあっふんうっふん言って、おちんちん入れてズポズポしてあ~ん、E気持ち。それがセックスだと思っていた。そうしないと、あの最後の幸せな「フワ~ッ」は感じられないものだと思っていた。だけど、いくらウマイ人とコリコリしたって、あの「フワ~ッ」は感じられないことがたくさんある。この、体はイッてないけど「フワ~ッ」だけを感じるのもセックスであり、今思うと子どもができた時のソレはなんだか不思議と粛々としていた、あれもまたセックスであり、気のない相手とコリコリしあってゲンナリするアレもまたセックスだったわけである。セックスは、膣でイクとかクリでイクとか、それだけじゃなくいろいろあるんだ、と思うと、異様に明るい気持ちに包まれて明日も元気に生きれそうな勇気がわいてくる。
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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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