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”俺”と言ってみるわたし

アンティル2011.08.18

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ひしぶぶりこコラム・・・キーボードを打つ手が震える。ただいまお腹にぶるぶると振動するマシーンを装着しながら久しぶりのコラムを書いていいる。あっ!また同じ字を2度打ってしまった。
このマシーン。実に半年ぶりの装着だ。もう使うことはないと心に決めたダイエットマシーン。止めた理由は、痩せる痩せる!と喜んで、ある朝、鏡を見たら右っ腹の所に“三”という字が浮かんでいて、牛の背に烙印された管理番号みたいな傷を作ってしまったからだ。いつか消えるだろうと、笑っていたら、その字がどんどん濃くなって、結局“三”の字は日に日に濃くなり、今では遠目でもわかるほどに成長してしまった。私と牛が脳裏であまりに重なり、鏡を見るのが辛くなってそのマシーンはクローゼットに入れた。
なぜまたその悪夢を繰り返しているかというと、それはただ私が肥えているからだ。
あー本当に肥えている。最近、私と会う人の視線がおかしい。顔を見る前にまず私の腹を見ているのだ。「こんにちは」とか「はじめまして」と腹を見ながら挨拶される恥ずかしさがおわかりだろうか?名刺を差し出すその視線の先に腹がある光景をあなたは見たことがあるだろうか?私は生まれてはじめてエステというものに興味を持ち、うん十万するダイエットコースを申し込もうか迷っている。それほど私は肥えている。
このコラムをお休みしていた半年間、腹以外に変化したことがある。それは“私”だ。海外にいることが多かったこの時間で私は外国人の友達が激増した。しかもその関係が濃い。2日に1度はスカイプで2時間以上の電話をし、メールで今日の話しを報告し合っている。日本の友達より海外の友達と接している方が多いくらいだ。その友達達は私がオンナであることを知らない。そして中途半端に日本語を理解し話す。
これまで“私”は、自分のことを“ひと”と言ったり、できるだけ主語を使わず会話する技法を身につけ、生きてきた。
なぜこれまで使わなかったかと言えば、それは“私”が“私”だからだ。
“私”が“私”のままで生きるためには、私は“私”でもないし、“俺”でもない。一人称を持たない“私”が“私”なのだと。なんと言われようと、変だと言われても“私”は“私”を守るために“ひと”以外の一人称を捨てた。
しかし、“私”はついにその禁断の一人称に手を出したのだ。
この外国人達には“ひと”と言えば“人間”と理解し、“私”というと「なんでいつまでそんなにビジネスライクなんだ」ということになる。しかしそんな不便さがその理由ではない。私を突き動かしたもの、それは、今の私と外国人男子との関係において、“私”は“俺”や“僕”だからだ。日本の男子とは築けないような相手を知りたいと思う濃密な人間関係。スカイプで話している時、メールを送る時、“私”はいつも“友情”という言葉が浮かべている。絵に描いたような“友情”、マンガに出てきそうな“熱い会話”。その関係を本気で信じられると思っていることを含め、私はこの状況をふかんして楽しんでいる。どこか距離のある“私”と“俺”、“俺”と“おまえ”男の友情。だからこそ“私”は“俺”にも“僕”にもなれるのだ。そうそれは仮面のようだ。
しかし、これまで使ったことがなく、使うことにどこか気持ち悪さを感じていた“私”が“俺”や“僕”を使おうとしたってそう簡単にはいかないのだ。
まず照れくさい。頭の中で違うキャラクターを作ってやっとの思いで口にする
「俺さぁ・・・」なんか“自分”が大きな存在になる違和感を覚える。そして一番難しいのが“俺”と“僕”の使い分けだ。「40歳過ぎて“僕”っていうのかな」とか「フォーマルなのは“僕”?」「親友には“俺”?」TPOがわからない。今の所は8:2で“俺”の勝利。しかし何度言っても馴染まない。
がんばって“俺”を使いながら、そんな状況を楽しんでいるとメールの内容や会話もなんだか“通常”の“友情”を逸脱する。
「○○くんに早く会いたいよ。」
「○○くんに会えないとさみしいよ」
そして返ってくる言葉が“俺”に拍車をかける。
「アンティル。俺も・・・」
「アンティル。早く顔を見たいよ・・・・」
さて“私”が“私”であることにこだわり、それが私の生き方になりジェンダーになっていった“私”。そして新たな体験、仮面となった“俺”“僕”。そんな仮面を、もし、私がオンナであることを知っている人が見たらどうなるか。
もしそれがFTMを嫌うレズビアンだったら・・・。FTMとレズビアンとの攻防。次回はそんなことを書いてみたいと思います。
アンティルの昔話。長いまま放置してしまってすみません。現在連載中の「本当に笑える話 ピンキー」ではこのコラムを追い越し、昔話しの続きを坂井恵理さんと共に連載中です。

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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