ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

あけましておめでとうございます。

北原みのり2013.01.03

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あけましておめでとうございます。
 
 
今年はおせちをつくりました。42歳にして初めてのおせちづくり。黒豆煮たり、塩数の子の塩抜きして、伊達巻きもやってみる! とめちゃくちゃ張り切って難関に挑戦。つくっている間は楽しかったけれど、時間をかけた鰊の昆布巻きに失敗すると、あああと腰くだけそうになる。料理中の心はけっこう、忙しい。そして、誰ともしゃべらず、会わず、テレビも見ず、新聞すら読まず、電話も取らず、ツイッターもフェイスブックも見ずに・・・静かに料理に集中していると、時々不思議な感覚が訪れるのだ。会ったこともない祖母の母やその母やその母のことをが、頭に浮かんでくる。ねぇ、おばあさん、あなたはどんな女だったんだろう。どんなふうに生きてきたんだろう。そんな風に話しかけたくなってくる。年末、毎年毎年家族のためにおせちをつくってきた女の歴史を思う。ああ、私はもっとあなたたちのことを、知りたい。どんな風にどんな思いで、女を生きてきたの?
 
 
大晦日の夜は、近所に住む友だちと神田明神で初詣。0時を少し過ぎた頃で、参道にはびっしりと人人人。それでも例年よりも少ない印象を受けながら並ぶ。自然に周りの人の会話が耳に入ってくる。
 
 
後ろに並んでいた20代の男の子たちが言っていた。
「なんだここ、全然、規制してないな」
「すればいいのに。いい加減だなぁ。ずるする人がいるんじゃないか」
「○○神社の方がきちんとしてたぞ」
 
 
新年初驚きとはこのことだわ、と思わず後ろを振り返って顔を見たくなってしまう自分を抑えた。
心から驚いた。自ら規制されたいと思う人って、本当にいるんだ。
 
 
私の感覚で言えば、参道には人はたくさんいたが、命の危険を感じるレベルの密度は全くなく、むしろ例年より人が出ていないと思うほどだった。警察官はいるにはいたが、こちらに並んで~、というくらいで、メガホンを持って「10列にならんで、少しずつ前に出て、間あけずに進んで、お参りは後ろの人もいること配慮して、前の人の後ろにきちんとついて、グループはグループごとでお参りして!」とありがちに喚く人もいなく、だからこそ私たちは自由に並び、自由におしゃべりをしてた。早い列(といっても列といえるような列はなかったけど)に並んだ人はずいずい前に進めるし、入ろうと思えば途中から前の方にスーッと入っていけるほどのゆるさで列はあった。規制の必要など、まるで感じないほどの、緩やかな人混み、であった。
 
 
一緒にいた友だちが言った。
「色々とあって、規制だけが残ったって感じだね」
人口が超過密な時、確かにある程度の規制は必要だったんだろうよ、と友は言う。だけど、明らかに規制が必要のない状況になっても、人は規制された方が楽だ、と思うようになってしまったんだね、と。20代の男子の話を聞いて私も思った。状況が規制をつくるのではなく、規制が人の心を規制してしまったのかもしれないって。そして「ずるされたくない」という狭量さにも、心冷たくなる。人が人を監視するような、そんなことが当たり前になってしまうのだとしたら、何て生きにくい社会だろう。
 
 
1日の夜は祖母に会った。87歳の祖母に、また戦争の話をせがんでしまった。終戦の時20歳だった祖母から見たあの頃の日本のことを私は知りたくて、何度も何度も聞いてしまう。東京大空襲に会い、多くの死体を見て、必死に生きてたから「あの頃天皇陛下をどう思っていたかは全く覚えてないけど、誰も天皇を神様だなんて思ってなかったと思うなぁ」と言い、実はアメリカ兵とかもどうでもよくて、隣組のオジサンの怒号の方が怖かった・・・という20歳の女だった祖母の言葉で戦争の話を聞きたいと思う。
 
 
今回、初めて聞いた話。祖母は大きな旅館の女将だった。そこでは毎年戦友会が開かれていた。女将として戦友会の接待をしているときに、祖母は色んな話を聞いたと言った。「仲間内だから話せたんだろうね。なんでオレはあんな悪いことをしたんだろう、って言いながら、吐き出すように話していた男の人が、いっぱいいたよ」祖母がハッキリと覚えているのは、中国で女の人の両足首にヒモをつけ、それを二頭の馬にそれぞれ結び二頭を反対方向に走らせ股を裂かせた元日本兵の話。他にも、子どもを殺した元日本兵の話。女をレイプした元日本兵の話。男たちは、仲間のうちだけで、酒を飲みながら、酔わずには話せなかった。家族には決して話せなかっただろう「殺人」「強姦」「拷問」を、仲間内では話せた。「なぜ、あんなことをしたのか、自分でもわからない」という思いと共に。
 
 
「ああやだ。気持ち悪いこと、正月から話しちゃった」
祖母は、なんとなく笑い、こう言った。
「感覚が、なくなっちゃうの。それが戦争なのよ」
 
 
今日、男女平等をうたう日本国憲法24条をつくったベアテ・シロタ・ゴードンさんが亡くなったというニュースを読んだ。
数年前、ベアテ・シロタ・ゴードンさんの講演会に行った。80代のベアテさんがキラキラした目で言ったことを、私は絶対に忘れたくない。「日本は素晴らしい憲法を持っているんです」。祖母と同世代のベアテさんだ。たくさんの女の人生、時代に振り回される私たちの人生。色んな国の女の人生。時代は変わる。だけど、巡る。だからこそ、私たちは失っちゃいけないのよね。感覚を。恐怖を。記憶を。そんな思い。
 
 
色んな思いの静かなお正月。
今年も、みなさん、どうぞラブピースクラブをよろしくお願いします。
女の欲望、女のカラダ、私たちの性を、もっと肯定できるように、私たち一生懸命働きます。働こうと思う。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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