ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

走らないメロ子

北原みのり2013.12.26

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ちょうど去年の冬、20代の編集者から連絡がありました。
「女友だちの本を書いてほしい」との依頼でした。
正直、それはどんな本になるのかしら? さっぱりわかりませんでした。
私はここ数年、自分が知りたいことを取材して書く、というような仕事が多かったので、「女友だち」について、何を自分が知りたいのか、そして何をどう書けるのか、まったく想像がつかなかったのです。
ぼんやりする私に彼女は、「結婚しなくてもいい、男と一緒に生きなくてもいい生き方を模索したい」と言いました。でも、やっぱり分かりません。「だいたい、結婚と女友だちはどう関係があるの?」と、ますます困惑。それでも、「女友だちと助け合いながら生きる道を書いてほしい」と編集者は食い下がります。
・・・・わかった・・・でも・・・書けるかな? と思いながらも書きはじめようとしたのですが、最初は全く書けませんでした。女友だちのことを考えれば考えるほど、私が「知りたいこと」「知っているつもりになっていること」・・・という分類はまるでできず、それどころか哀しい思いがフラッシュバックしたり、辛かった経験を思い出しては、お腹が痛くなったりするのです。(あ、もちろん楽しい思い出もあるけれど、なんていうか濃厚で忘れがたい体験って、痛みが伴ったりするものじゃないですか)
そして色々考えるうちに、気がつきました。私にとって「女友だち」って、人生そのものって言えるくらいのテーマなんじゃないか、と。俯瞰してみるにはあまりに大きなテーマで、神について書くくらいに、抽象的で、しかし具体的な感情を伴うリアルな人生の話なのではないか、と。
そんなわけで、あまりにもなかなか書けないので、寓話から書き始めることにしたのでした。私が理想とする女友だちの話、私が具体的に体験した女友だちの話、それをギュッと凝縮したような寓話。それが「走らないメロ子」の話です。
正直、この本はぜんぶ寓話にしたかったくらいです。ぜんぶぜーんぶ、「誰かの話」。「象徴的な話」。にしたかった。友だちとのあいだに流れたドロドロした感情や向き合わなければいけない具体的な痛みを、具体的に「本当にあったこと」として書くのは、とてもじゃないけれど難しいと思ったから。しかも私の一方的な見方を書くのはフェアじゃないと、思ったから。
なもので。「ぜーんぶ、寓話にしたい~」みたいなことを一応編集者には伝えたのですが、あっけなく却下されました。それは「向き合え」ってことなんだろうな、と、覚悟を決めました。
・・・と書いていると、どんなドロドロで恐ろしいことが書いてある本なのだ・・・と思われるかもしれませんが、書き終わってみれば、私の本にしては爽やかな本になってしまった・・・のではないかと思います。そして編集者が期待してくれたような、「指南書」にはならなかったかもしれない。でも、女友だちとの間に、痛みや悲しさや不信を感じたことのない人っていないでしょう? そんなことには、きちんと向き合えて、自分なりに答えを出していけたのではないかな、とは思います。
そんなわけで。「メロスのようには走らない」です。副題には「女の友情論」とありますが、何も論じてはおりません。でも、ときどきぶつかってしまう女友だちと、つないだ手を放さないために、どうしたらいいのかな? って一緒に考えてもらえたら嬉しいです。女友だちとおしゃべりをするように。
KKベストセラーズから発売中です。
そして1月9日、この本をテーマにライター&漫画家の田房永子さんとトークをします。ぜひみなさん、いらして下さいね!
http://bookandbeer.com/blog/event/20140109_bt/

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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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