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「顰蹙は買ってない」

茶屋ひろし2014.12.02

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腹が出てきて戻らない、など、年をとったな、と思うことのひとつに、おならが出てしまう、ということがあります。我慢ができないとも言えますが、こらえる暇もないという感じです。歩いているときに、ふいによく出るようになりました。音付きです。職場の書店でも出てしまいます。


立ち止まっているときよりも、動いているときの場合が多いようです。
なるべく人が近くにいないときに出て欲しいものですが、このところコントロールが難しくなってきました。緊張感がないのか、昨夜のビールが多いからか・・、たぶん両方です。
それなのに、客の男性が店のあちこちで屁をこくたびに、やめてよもう、と顔をしかめています。


何年か前に、姉と二人で、いわさきちひろの美術館に行ったことがあります。平日の昼下がり、館内にいたのは高齢の女性がほとんどでした。
髪を染めて、ヒラヒラした花柄のシャツやパンツをはいた女性たちは、二人や三人で同じ絵を見ながら、ブーブーと勢いよくおならをしていました。
全方位から合唱のように聞こえてくるので、思わず姉と顔を見合わせて苦笑しました。
お互いに気にしていないのか、耳が遠くて聞こえないのか、わかりませんが、おならをしながら楽しそうに喋っていました。


いつか自分もそうなるのかしら、とは思いましたが、こんなに早くそのときがやってくるとは思っていませんでした。
ただ、音が大きいほど臭くない、ということは昔から変わらないわ、と思います。


何の話ですか、すみません。そんなことより、百田尚樹の新刊、『殉愛』(幻冬舎)の話です。
なんだか、毎回、彼の名前を出してしまいます。そんなことより選挙でしょう、と思いながら書いています。


前回の終わりに少し書きましたが、初回に入荷した20冊がその日のうちになくなったため、大型書店に仕入れに行って、その後も同じようなペースが続いたので、取次ぎからの次の入荷日を数えながら、出張がある週末には品切れを起こしてしまうかもしれないと、また雨の中、仕入れに行きました。


この『殉愛』という本に関しては、タイトルだけで内容が知らされていませんでした。
その前に出た小説があまり動かなかったため、初回の仕入れ数はそれほど気にしていませんでした。前の小説『フォルトゥナの瞳』(新潮社)の帯には「人の運命と死が見える」などと書かれていて、今度は「殉愛」って・・・、どちらも内容は知りませんが、「なんだか渡辺淳一みたいになってきたわね・・」なんて、スタッフと話していました。
これまでは、特攻隊にボクサー、整形に出光の社長さんなど、素材が具体的だったからです。


発売当日の朝、テレビを見たそのスタッフの女性がメールをくれました。「やしきたかじんについて書かれた本みたいです!」
たかじんは大阪で活躍したタレントです。
それは売れるわ! と思った私は、たまたま休日でしたが店に行って、電話で追加を手配しました。そういえば事前に、取次ぎのひとつから、いりませんか、と電話があったことを思い出しました。情報がまわっているところもあったようです。


やしきたかじんが亡くなってから、ノンフィクションは2点出ていて、それぞれ売れ行きが好調でした。そのうちの1点は、たかじんの父親が在日コリアンだったことを伝える内容で(『ゆめいらんかね』角岡伸彦、小学館、2014)、それは私も買いました。たかじんは生前、そのことをひた隠しにしていた、と書かれています。
現在も続く冠番組で、歴史修正主義の竹田恒泰や津川雅彦(ブログが変・・)に、それこそ百田尚樹が、意気揚々と話している姿を思うと、やるせない気持ちになります。


『殉愛』の内容をよく知らないまま出張に行って、東京の書店員さんたちに会って様子を聞かれて、上々です、なんて答えていました。知名度の違いか、東京ではさっぱりで、そっちでたくさん売ったほうがいいと思う、ウチに来た150冊を回してあげたいくらい、などと言われました。
けれどなんとなく、はやり物だから、大阪人の反応も、最初だけじゃないかと思っていました。


出張から帰ってくると、取次ぎから思ったより多く入荷があったみたいで、ストッカーにまであふれていました。これはちょっと多すぎるかも・・、と思っていたら、twitter上で、裏が取れていない、とか、写真の筆跡が違う、といった捏造疑惑が持ち上がり始めて、そのせいかどうか、売り上げのスピードががくんと落ちました。そして、たかじんの娘さんから出版差し止め請求が・・。
真偽のほどはわかりませんが、彼の言動を好きではないので、つい批判的なつぶやきばかり見てしまいます。


在庫が残りそうな一冊を買って読んでみました。
ほんまかいな、と思いながらも、へー、あのたかじんが・・、と面白く読めました。これがフィクションだったら、そうでもなかったかもしれません。
「顰蹙は金を出してでも買え!」と言ったのは、幻冬舎を立ち上げた人でしたが、『殉愛』は、私の顰蹙を買うようなものではなく、ひさしぶりに読んだメロドラマでした。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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