ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

カミングアウトの後で

茶屋ひろし2018.12.03

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この夏に沢山生まれたメダカは、空気が冷えていくにつれ数を減らし、6匹ほどに落ち着きました。生まれすぎだし死にすぎです。
親メダカも2匹死に、生き残っている2匹はよぼよぼとした泳ぎ方になりました。寿命は長くて2年とか。水が汚れたか酸欠か、といろいろ考えましたが、もう寿命と思うことにしました。
小さいメダカに流れる時間と人間の私とではその密度が違うのでしょう。

水槽のあるベランダに出ると、餌を求めて水面に集まってきた彼らですが、ある朝から、私の姿を見たとたんに素早く身を隠すようになりました。水草の陰や砂利に体をこすりつけるように避難します。
怯えている・・、なにがあった、と考えましたが、スズメかカラスが来たくらいしか思い浮かびません。
水槽のふちに鳥の糞らしきものもついていました。水でも飲みに来たのかもしれません。

家の中に入れたらどうかとも考えましたが、それはそれで埃が水面に積もりそうです。植木を使って鳥が止まりにくいように配置を変えました。ついでに、寂しくなった水槽に新しいメダカを数匹買ってきて放しました。すぐ買える命・・。
ミニバラも何度買っても枯らしてしまいます。ただ去年枯らしてしまった観葉植物で、再挑戦しているものはまだ枯れずに生きています。
その生き物に最適な環境を人工的に作り出すことはなかなか難しいものです。

先日会った女友達が、職場に新しくやってきた社員の男の子(30歳)がどうやらゲイらしい、と話してきました。「それがな、昔の茶屋君とそっくりやねん、しゃべりかた!」
20代の頃の私のしゃべりかたは、おそらくオネエ言葉の含有量が多めだったはず。それは「言い方がキツイ」ということにもなります。
尾木ママは子供たちの心を開かせるために柔らかく使っているそうですが、きついオネエ言葉が出ちゃう男性はゲイの可能性が高いかもね・・と思いました。

周囲にカミングアウトはしてないそうです。というか、問題はそこではないようで、「それがな、若い女の子たちへの当たりがきつくて、めっちゃ嫌われてるねん」と言います。
アルバイトの人たちを管理する立場にあるのに、その言い方がきつく、あきらかに彼女たちをバカにした物言いなので、みんな聞く耳を持たなくなってしまっているそうです。

いやでも、その流れやと、昔の私が嫌われてたみたいやん、私は女子にはやさしかったつもりやで・・、と一応断りを入れてから、「若い子に嫉妬してるんかな、あなたにはどうなん」と訊くと、「私や店長(男)には下手に出よるねん」とのこと。

それは単に性格が悪いだけかもしれませんが、ゲイかもしれないと言われると私も余計な気の回し方が出てきてしまい、「気を張ってるのかもしれないね」なんて同情してしまいました。

私にとって20代の終わりから新宿二丁目で過ごした八年間は、言うなれば「こなれさせてくれた」期間で、「まあ、そんなに気張らなくてもよくなった」という経験でした。

ゲイの知り合いがいなかった京都時代は、過剰適応というか自意識過剰というか、若さや世間知らずや男好きがもつれ合って、私の場合は特にノンケの男性に対して攻撃的になることが多かった。先日、木屋町で飲んでいた頃の同い年の男の子に「俺、茶屋君に言われたことで今でも覚えてることがあって・・」と切り出されました。何それ、聞きたくない、と思いながら「なんて言ったの、私」と尋ねると、「あんたの青臭い恋バナを聞いている暇はないのよ! って言われた」と笑いました。
とがってる! ていうか、つたない・・。赤面します。

でも確かに、当時は随時そんな口調で、しかも手も出していたから、かなり始末に負えなかったはずです。けっきょく、二丁目に行ってからもしばらくは、飲み屋でゲイの男性たちに対してもその荒ぶりは続くのですが、いろいろな形でたしなめられたり放っておかれたりして鎮火していったように思います。

そんな自分の体験から、とがっている若いゲイは沢山のゲイに出会えばほぐれることもあるんじゃないかしら、と思っていましたが、最近ツイッターで、二丁目でお店をやっているらしい、かなりベテラン風情の男性(50代くらい、実名で顔出し)が、「カミングアウトが相手の重荷になる可能性もある」とか、「日本のゲイは特に差別されていない」とか、矛盾した発言をしていて驚きました。

ゲイが差別されていない社会なら、カミングアウトをされて重荷に感じる人がいるわけもなし・・。
どうやら、二丁目で沢山のゲイに出会ってきても、こじらせたままの人もいるようです。内なる女性嫌悪や同性愛嫌悪に目を向けることなく自己肯定に先走ると、仮想現実に突入してしまうのかもしれません。

先日は、中小企業の経営者たちの集まりで、今まで行ったことのないゴージャスなホテルに泊まりました。一部屋を五人で使い、割り勘だったので出費はたいしたことありません。
ホテルのレストランでの食事も終わり、部屋飲みが始まる前に、部屋の中にあるジャグジーとテレビの付いた広いお風呂に入って、白いバスローブを羽織りました。

優雅だわ・・とリビングに戻ると、おじさんたちは皆持ってきた短パンとTシャツに着替えていました。
「バスローブが似合うね!」なんてひやかされながら、近所のスーパーで買ってきた赤ワインを開けようとコルクを捻ったら、乾いていて途中でもげてしまいました。寝かしていないワインを買うとたまにあることです。

皆が注目する中なんとか開けると、「こぼれなくてよかったね!」「(ワインがバスローブにこぼれていたら)生理が始まったとか?」「これでようやく女になれたって?」と急に笑いが起きたので、一瞬きょとんとしてしまいました。

事態はすぐにつかめたのですが、出てきそうな言葉が「梓みちよじゃねーし」しかなくて、あれ違うわ、そうじゃなくて・・「あ、えっと、私は女になりたいわけじゃないのです」と普通に答えたら笑いがやみました(*カミングアウトは初対面の時に済ませています)。

「えーっ、そうなの?」と一様に不思議そうな顔をされたので、セクシュアルマイノリティについて、ざっと3分間クッキングをしてみました。

それは、ゲイ差別というより偏見によるハラスメントでした(女性差別的ではある。ていうか、小・中学生みたいだった・・)。
相手と同じくおじさんになった私のカミングアウトは、今やこういう場面で意味を持つのかもしれない、とあとで思いました。みんなお子さんいるしね! とか。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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