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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 人にやさしく 

中沢あき2026.02.08

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年明けにドイツに帰ってきて早々、野暮用あってベルリンへ弾丸出張に出た。日帰りだから朝の出発は早い。中央駅までの地下鉄は、朝の6時台でもそれなりに出勤の人々が乗っている。静かな車内でふと視線を上げたら、窓に貼られた市内交通機関のポスターが目に入った。「Seid lieb zueinander.」日本語に訳せは「お互いにやさしく思いやりを」といったところだろうか。

そういえば近年、こうした交通機関の職員が乗客から攻撃的な態度や暴行を受けたりする事件の話を聞く。ドイツの電車の駅は改札がない代わりに、時々抜き打ちで検札員が車内に入ってきて、乗車券の確認をしている。こういうシステムだからキセル乗車は日常茶飯事、切符を持っていない人が検札員に尋問されているシーンをたびたび見かける。私はまだ見たことがないけれども、そこでトラブルになることもあるんだろうな。ちなみに罰金は私の街の市内交通機関は60ユーロ。数ユーロけちると痛い目に遭うぞということだが、その場での支払い拒否や抵抗したりすると、警察に通報される。そういう時に対応する職員も大変だろうな。件のポスターに写っていたのは女性の職員。現場には女性の検札員や乗務員も少なからずいる。各交通機関とも、制服を着た警備員も配置して見回りをさせているけれど、最近ではそうした警備員や警察にですら攻撃を仕掛ける若者たちもいるのだとか。警察も人手不足でそんなことを相手にしている場合ではなかろうに、大変だな。

中央駅でベルリン行きのICEに乗り込み、朝ごはんのパンをかじってコーヒーをすすり、ラップトップを開く。ベルリンまでは問題なく走れば通常は4時間半もかからない。けれどもやはり駅ではない場所で電車は止まる。ため息をつくも、もう想定内だからそれほどはあわてないけれども……。しばらくして流れたアナウンスが語る停車の理由は、この先を走る電車内で警察の出動があったから……。またキセル乗車か、それとも誰かが暴れたのか。それにしてもこの「警察の出動」という物騒なアナウンスを昨年辺りから頻繁に聞くようになったと感じる。私自身、電車に乗る機会は月に数回程度なのに、それでも毎回のようにこのアナウンスを耳にするのだ。遅延や走行停止の理由として流れるこのアナウンス、以前はこんなに聞いた覚えは無いのだけど。

用事を終えて夕方、ベルリン中央駅から帰りのICEに乗り込んだ。始発なのに、すでに遅れている電車をベルリンの寒さに震えながら待つ。さっき買った水のボトルがどんどん冷えていく。20分遅れでプラットフォームに入ってきた車内に乗り込んで、やれやれと予約しておいた席に座ったとき、車内放送が流れてきた。いわく「警察の出動」で発車が遅れています、と……。またかい!?

と、窓の外のプラットフォームで警察官数人を相手に、大きく手を振り上げたりして喧嘩腰で話している大柄な男性が見えた。この寒い中、コートやジャケットも着ずにパーカーだけの姿、ものすごい形相と大袈裟なジェスチャーで警察官たちに何かを話している。あれか……。何が発端かは知らないが、たぶん、俺は悪くない、みたいなことを主張してるんだろう。足元に大きめのスポーツバッグを置いているところを見ると、この電車に乗る予定だったのかしら。しかし彼の話は終わりそうにないし、警察が出動してすぐに決着がつくわけじゃなかろう。他の席からもこの様子を覗きに乗客がやってきてはため息をついて戻っていく。これさあ、もう待たないで発車していいんじゃないですか?この男性がどこまで行くのか知らないけど、これは終電じゃないし。

結局、その喚く男を残したまま30分遅れで電車は発車し、その後も何の原因かはもうわからないけれどもさらに電車は所々でノロノロ運転になり。諦めの境地で、ベルリンの駅で買ってきたポテトチップスを人目も気にせずバリバリと食べる。50分ほどの遅延でやっと自分の降車駅に着いた時にはどっと疲れた。一日に2度も「警察の出動」に遭うなんて……。

自分のコラムを見返してもそのことが綴られているけれど、ドイツはますます暗い時代に向かっていっている、それを肌で感じることが多くなってきている。度重なる「警察の出動」のアナウンスはその具体的な表れだと思うけれども、なんというか、全体的に人々の感情が余裕がなくなってきて、ギスギスしてきていると感じる。だからこそ、あのポスターの一言が、それもなんてことない、幼稚園や小学校で習うようなコミュニケーションの基本の言葉が余計に心に沁みるような気がする。人にやさしく、ね。

©︎: Aki Nakazawa

地下鉄の窓に貼られた市内交通会社の啓蒙ポスター。「Respekt sollte nie auf der Strecke bleiben. Seid lieb zueinander.」敬意を決して失ってはいけない。お互いに思いやりを、と書かれています。ちょっと疲れて帰ってきたときだったので、余計に心に沁みました。人によって敬意の払い方や種類も微妙に違ったりするからその擦り合わせは大変だけれども、でも相手に向かってアグレッシブになるのは無しですよね。どこも心に余裕がなくなってきているなあと思う中でふと思い出した話。年末に友人宅を訪れた際に、その近くで突然私たち親子に文句混じりで声高に話しかけてきたおばあさんに心底驚いた話をしたら、その友人夫婦は「あ〜、いつも誰かに話しかけているんだよね、あのおばあちゃん。悪い人じゃないけど、ビックリするよね〜。まあおばあちゃんの長話を聞かされている工事現場の警備員さんなんかはちょっと大変そうだけど」と大笑いで返されて、こちらもつられて笑ったことを思い出しました。こういうおおらかさがあると、いろいろとまるーくなるんだな、笑いって大事だなと思った次第。今年は笑いのパワーを使ってネガティブなことを吹き飛ばしていきたいですね。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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