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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 年の差なしのお友だち

中沢あき2025.10.21

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10月に入り、ドイツの学校は秋休みに入った。日本から来たお客さんに「ドイツの学校は今日から2週間の秋休みなんですよ」と言ったら、ドイツは春休みも秋休みもあるのねえ!と感嘆を込めて呟いていた。そうだよね、良くも悪くも日本じゃ考えられないこの休みの多さ。我が子の学校なんて8月末に夏休みが終わって入学式があって、6週間通学してもう休みである。いや、そういえば10月初めに学校運営の為の時間を取るという授業無しの休日があり、そのままドイツ統一記念日の祝日や週末と合わせて4連休があったな。11月に祝日の休みがあって、その後はクリスマスから始まる冬休みが2週間ほど。年明けたら2月か3月初めまでにカーニバルのための5日程度の連休があり、そしてイースターのタイミングで2週間の春休み。さらにバイエルン州などでは5月にキリスト教の祝日ペンテコステに合わせた2週間の休みがある。いやあ、バイエルン州に住んでなくてよかった…。でも我が子の学校も確かこの祝日の前後を1日休校にして、週末と合わせての4連休が予定されているはず。夏休みの開始時期は週ごとに違うものの、揃って6週間である。

もっとも、学校機関などの公的機関に勤める親以外はこんなに休みをしょっちゅう取れないので、学校の授業はなくても代わりに学童保育サービスはあるのが救い。この秋休みも我が子は2週間通しで学童保育に行っているし、他の家庭も2週間通し、または1週間だけ子どもを通わせるなど、それなりの数の子どもたちは校舎に居る。我が子いわく、いつもの学童保育のスタッフが毎日いろいろな工作や実験のワークショップをしてくれたり、スポーツを教えてくれたりと、プログラム盛り沢山で楽しいそうだ。普段は学年ごと、クラスごとに分かれる行動も、この時はみんなで一緒。1年生から4年生までが一緒になるのでそれも嬉しいらしい。

そう、ドイツの小学校は一般的に4年制である。ベルリンなど、一部で6年制の小学校も存在するが、多くは4年生になるとそれまでの成績や態度評価などで高等教育コースに進むか、実務的教育コースに進むか分かれていくドイツ独特の教育システムは時代の変化に合わせて改革が少しずつ進むものの、基本はこの流れである。なので学校全体で何かを一緒にやるとなると、おおよそ6歳から10歳くらいまでの児童が集まるわけだ。ちなみに「おおよそ」と書いたのは、ドイツでは小学校にも飛び級や留年が普通に存在するので、場合によっては1年生に5歳児や7歳児がいることも、4年生に11歳児がいることもあるからである。

普段我が子の通学の付き添いはパパの担当なのだが、今朝は彼の仕事の都合で私が代わりに付き添った。朝8時前、日本の最北端よりも緯度が高いこの町では10月後半ともなると、外はまだ暗い。2年生ともなればその中を一人で学校へと歩いていくドイツの子どもたちの姿は健気だなといつも思う。学校に着くと、私たちのすぐ後ろにやってきた女の子が「おはよう」と挨拶をしてきた。背の高さやちょっと大人びた顔つきからしておそらく4年生だろうか。我が子はパッと笑顔になって彼女へ話しかけている。お互いの名前で呼び合っていてすでに知り合いのようだ。ほおー、と思って、身長差がずいぶんとある二人がやりとりしている様子をそっと観察する。昨日、ケルン大聖堂の前で見た「ラブブ」の大きな着ぐるみ人形の話をする我が子に向き合うその女の子には幼い感じはまったくしない。

夏前まで我が子が通っていた幼稚園は、ドイツでは一般的である、年齢層が違う子どもたちが同じクラスになる保育システムだった。兄弟姉妹がいない子どもでも、年上の子が年下の子の面倒を見たりすることを日常の中で身につけていたし、かといってそこには上下関係のようなヒエラルキーはなく、相手が年下だろうが年上だろうが、それぞれの「個人」として認識して向き合っているようなコミュニケーションをしているなと常々感じていた。

小学校に進んでからはさすがに学年ごとに授業も学童保育も普段は分かれているけれど(ただし一部の学校では幼稚園の時のような年齢層の違う子どもを一緒にするクラス分けをすることもあるそう)、それでも休み時間には他の学年の子とも遊んだり話したりしているらしい。それは我が子だけがそうなのではなく、年齢によって行動やコミュニケーションを区切らないドイツの教育システムの中にいる子どもたちにとっては普通のことだ。4年生の子が我が子と放課後一緒に遊びたいと誘ってくることもしばしばである。

目の前の女子二人の話を見ながらふと思った。我が身を振り返れば、日本の教育システムで育った私の記憶では、たった一学年違うだけでも、それはだいぶ差があるように思えていたし、違う学年の子と気軽にコミュニケーションを取る機会がそもそもなかったようにも思う。学校以外でわいわいと遊ぶ機会がある子どもたちはまた違ったのかもしれないけれど、私には友達の兄弟姉妹とたくさん遊んだ記憶もあまりない。さらに私は早生まれだったので、同い年でも学年が違うと「年上」になる、またちょっと遠い存在になることに奇妙な感じを覚えていた。大人になればそんな学年の差も、数歳の差も気にしないで付き合う友人関係はたくさんできたけど、そもそも日本の一般的な社会においての上下関係のヒエラルキーは、もしかしたらこんな子どもの頃の環境も影響しているのかもしれないなと思ったのだ。物怖じせずに年齢の違う子たちとわいわいおしゃべりしている我が子やドイツの子どもたちを見て、ちょっとうらやましいなと感じた。

そんな我が子は一人っ子で、隣の家に住む、同じく片方の親が日本人で6歳ほど年上の女の子の友達がいて、その子のことは「お姉さん」として捉えているらしい。その「お姉さん」と彼女の友達のティーンの恋バナに加わっている我が子を見て、そのデコボコのサイズ感のシーンに驚きと興味深さを感じつつ、おもしろいなーと裏でそっと微笑ましく思っている母である。

©︎: Aki Nakazawa

朝、日が昇るのも遅ければ、日が暮れるのも早く、午後4時過ぎには日が翳って暗くなってしまいます。ついでに曇り空の日も続いて、まさにドイツの秋。めずらしく、いわし雲の青空が広がったのも束の間。また雨が続いています。これから暗くて寒い季節に深く入っていくドイツの秋は、心も体も明るく温める工夫を皆があれこれ考える時期でもあります。来月はもう聖マルティンのイベント。幼稚園時代と同様、小学校でもランタンを手に持って街を練り歩く行列はやるそうで、今年はどんなランタンを作るのか、子どもたちは楽しみのようです。

 

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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