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SMAPファンのため以上に、あたくし自身とSMAPファン以外の人たちのために言います。「解散反対!」

高山真2016.01.15

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 もうすぐ発売になるエッセイ『恋愛がらみ。』(小学館)の表紙カバーの最終チェックをしているとき、SMAPの解散報道を聞いて、しばらく仕事が手につかなくなりました。自分でも驚くほどのショックで、「ファンでもない自分がこれほどショックを受けているのはどうしてなんだろう」ということが、余計にショックというか、驚きです。あたくしにとってSMAPといえば、「歌やステージが好き」という以上に、かれこれ15年ほど続いている「木村拓哉のほうれい線の濃淡の確認」とか、「ラブシーンと英語で書こうとして『ラブ・ショーン』と書いてしまう脇の甘さを堪能」とか、「スーザン・ボイルに『はるばる日本にお越しいただきありがとうございます』と英語で話しかけるも、横にいた通訳に聞き直されてしまう様を鑑賞」とか、そういったことがメインだったはず。なんか木村拓哉の話ばかりですが。っていうか、ファンの方々、ごめんなさいね。でも、嘘をついても仕方がありませんものね。

ただ、このラブピースクラブの連載の、14年7月7日アップ分で書いたように、「40歳を超えても、まだこれだけ『数字』のことを言われ続ける木村拓哉は、芸能界でいちばんの重荷を背負っているアイドルである」と思う気持ちは持っているし、そのことを応援している気持ちもある。でもねえ、その程度では説明がつかないんですよ。どうしてこんなにショックなのか。だから、今回、自分なりに本当にじっくり考えてみることにしました。

 なんか、昔のエッセイばっかり引っ張り出すことになってしまってごめんなさいね。あたくし、やはりこのラブピースクラブの連載の、14年7月21日アップ分で、Sexy Zoneのメンバー構成の変更のニュースにからめ、自分なりに「アイドル」というものを定義したことがあります。
<アイドルは、単に「テレビ番組で歌ったりスクリーンで演技したりしている、可愛い顔した子(性別問わず)」のことではない。ものすごくザックリ言ってしまうと、「世の中のことや、世界のことをまだ何も知らなかった時期に、『この世界でキラキラと生きていく』ことを、体を張って見せてくれる人」、それがアイドルという存在です>
<かつてのあたくしがそうだったように、「その人が光を放っている様子を見ると、ほんの一瞬でも、生きていくことが怖くなくなる」というくらいの切実さで、「自分だけのアイドル」を信じているオンナの子たちが、いまでも日本にはたくさんいると、あたくしは確信している>

 約1年半前、あたくしはこう書いていました。で、この気持ちはいまでもやっぱり変わっていないわけです。

 で、今回のニュース…。SMAPという「アイドル」を応援しているメインのファン層は、さすがにSexy Zoneと同じ年代ではないでしょう。たぶん、20代中盤以上から50代くらいまでの間に、ほとんどのファンがいるのではないか、と。語弊を生むことを承知で言いますが、ハッキリ言って「いい大人」ばかりです。でも、だからこそ、こうも言えるのです。

「大人になったら、生きていくのは、怖くなくなる…? そんなわけ、ないよね」と。

 私はいまでも、10年以上前にオンエアされていた『すいか』(日本テレビ系)というドラマが大好きなのですが、その作品の中で、厳しくも愛情豊かなメンターとして登場していた、浅丘ルリ子演じる“教授”が、自分の教え子に言っていた言葉が忘れられません。
「生きていくのが怖いのは、誰だって同じです。私も、そう」
そうなんです。どれだけ年を重ねようと、怖いものは怖いし、しんどいものはしんどいのです。

 日本ではすでに、「3年単位で生まれては消えてゆくアイドル」ではなく、「10年、20年、30年と、ファンと一緒に年齢を重ねてゆくアイドル」が生まれています。そういった分野で、女性アイドルの元祖を挙げるなら100人が100人とも松田聖子を挙げると思いますが、男性アイドルでそれを「確立」したのはSMAPと言っていいと思います。

「生きていくことが怖くなくなる。そんなの嘘」と思う人は、昔からいたことでしょう。でも少なくとも、いまは、「その思いの受け皿になる人」がいる。「一般人のそういう思いを、2年や3年で肩から降ろすことなく、がっちり全身で引き受けて『アイドル』をやり続ける人」がいる。松田聖子のファンでなかろうと、SMAPのファンでなかろうと、その事実はほとんどの人が知っています。そしてその「事実」が、先々を生き抜かなくてはいけない自分たちの肩をどれだけ軽くしてくれているか…。その恩恵は、もしかしたら聖子ファンやSMAPファンでなければ日頃から意識するのは難しいかもしれない。しかし、意識はできなくても、多くの人たちが共有しているはずです。

「アイドル」は、芸能人だけが背負う「使命」ではありません。スポーツ選手をアイドルにする人、活動家をアイドルとする人、文筆家をアイドルとする人…、本当にさまざまなアイドルがいます。SMAPを「マイアイドル」にしていない人も多い、というか、人口比で考えたら、そちらのほうがマジョリティでしょう。でも、そんなマジョリティの人たちも、「もし、自分のアイドルが、このような形で消滅の危機を迎えたら」と想像したとき、「他人事だから」と平静な気持ちのままでいられる人のほうが少ないはずです。そして、「生き抜いていく怖さ・つらさ・しんどさ」を知っている人であればあるほど、「SMAPというアイドルの存在で、怖さ・つらさ・しんどさを軽くしていた人たち」という『同志』の心の中を思うのでは、と…。

他人の心の中とリンクする、そのくらいのことで「ショック」を感じてしまうなら、今現在、ダイレクトに「衝撃」を受けているファンの心中はいかばかりか、と、ショックを受けるのです。私は、今まさに、そんな気分です。

私はSMAPファンではありません。でも、以前の連載をコピペしてしまいますが、「『その人が光を放っている様子を見ると、ほんの一瞬でも、生きていくことが怖くなくなる』というくらいの切実さで、『自分だけのアイドル』を信じている」人たちが、ほんの一瞬、重荷を降ろせる場所を持ち続けていることが好きです。

そのことが好きだから。そんな人たちの様子を見ているのが好きだから。あたくしにもそんな場所があるから。その場所が突然取り上げられたら、自分の身が凍るのも知っているから。だからダメなのよ、解散なんかしちゃ…。

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