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「秋元康の女性蔑視的な歌詞」をさらに強化するネットニュースの悪辣さ

高山真2016.04.26

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 秋元康がHKT48に作った曲『アインシュタインよりディアナ・アグロン』の歌詞がひどすぎる、という意見が、さまざまなところで表明されています。このラブピースクラブでも、玖保樹鈴さんが、『女の子は頭からっぽでいい? んなワケあるかーッ!』というタイトルで見事なコラムをお書きになっています。

 玖保樹さんのコラムをベースにして、私の考えを何か足そうとするのは、失礼にあたる…。そう思えるほど、あのコラムは完璧です。なので私は今回、秋元康関連とは全く無関係のネタを書こうと思っていました。そこにきた、このニュース。ガジェット通信というニュースサイトで配信された記事です。タイトルおよびリンク先はこちらです。

【衝撃】秋元康の歌詞は「女性蔑視」だとリテラが怒ってるから女性の意識調査をしてみた → 歌詞のような思考の女性が多くいる事が判明
(筆者追記/私が見たのは「ガジェット通信」というサイトですが、オリジナルの配信元は、「バスプラスニュース」というサイト。アドレスはこちら)
http://buzz-plus.com/article/2016/04/25/akb-lyrics-lite-ra/

 要するに、「今回、秋元康が作詞した歌詞の世界観をベースに質問を作りましたので、アンケートしてみました!」みたいな記事なのですが、作成された3つの質問が、これ。

●学生時代あなたは「学力」と「可愛らしさ」のどちらをより求めていましたか?
●難しい事を考えず「ふわり風船のように生きたい」と思いますか?
●勉強ができても愛されなければ意味がないと思いますか?

 この3つの質問に対する、女性たちの回答が拮抗していたことを報告する、という記事なわけです。記事中に、

>差別や蔑視は「対象となっている当人がどう思うか」がいちばん重要なので、女性の心理を意識調査をしてみました。

 というフレーズがあるので、「ここまで答えが拮抗しているのなら、そこまで目くじら立てることではないでしょ」というトーンがあるのは明らかですが、もうね、「アホか」としか言えませんわ。

 この3つの質問なら、あたくしだって「YES」と答えますわよ。アタシはゲイなんで、恋愛を謳歌しはじめたのは、実家があるド田舎(カミングアウトが極めて困難な場所)から東京の大学に出てきてからのこと。同じような田舎出身のゲイの友達もたくさんいました。あたくしは東京外国語大学のパリジェンヌ学科だったけど、同じ大学に通うゲイもけっこうな数いたし、慶応にも早稲田にも立教にも青学にも、東京大学にも一橋大学にもゲイの友人はいたけれど、彼らと学問の話なんかしたこと、ほとんどなかったわ。

 自分の体のラインがいちばんカッコよく見えるTシャツのサイズ。その裾を、どのようにベルトに巻き込めば、さらに「美味しそうな」ラインが出来上がるか。そして、ヒップがいちばんジューシーに見え、かつ脚が長く見えるジーンズと、その履き方。それに合わせるスニーカーやブーツのデザイン…。そういう「武装」を考えに考え、週末ごとに「どこのクラブでゲイナイトが行われるか」「バーで会ったイケるオトコに対して、どんなふうにアプローチするか」を話し合って、いちばん「点数が高くなる見た目」で勝負に出る…。「魔女会議」で話していたのは、そんなんばっかりですよ。

 誤解のないよう申し添えると、こういうの、ゲイだけの傾向ではなかったわ。六本木とか西麻布のクラブでガッツリ踊っているようなカッコいいノンケたち(美味しくいただいた子たちもいました)が、慶応の子だったり東大の子だったりっていうのは、別に珍しいことではなかったの。彼らも彼らで「モテたい」「カノジョほしい」とか、聞かされるこちらの耳まで酸っぱくなるほど口にしていたしね。

 難しいことを考えず、ふわりと風船のように生きる…。最高じゃない? でも、それができない世の中であることなど、昔から知っている。だから、武器というか手持ちのカードとして「学歴」とか「知力」というものがある…。ホントはそんなカードを切らなくたって、楽しく生きていける世の中であれば、それがいちばんいいのに…。

 当時10代後半から20代前半の、それなりに「学力」で道を切り開いた(と言うと僭越なのはわかっていますが)あたくしたちも、みんなそういうふうに思っていたわ。で、みんな「カレシ」を欲しがっていました。「愛とはそもそも、どんなものなのか」ということを根源的に突き詰めると、むしろややこしくなるからひとまず脇に置いておくけれど、みんな「愛されたかった」のよ。

●どうして、「学力」と「可愛らしさ」が、二者択一のものになっているの? どうしてそんな二者択一が、「オンナの子にだけ課せられた質問」になっているの? 偏差値の高い大学に通うノンケオトコの集団の中に、「カッコよさ」「外見」にこだわる小僧などいるはずがない、とでも言うつもり?

●仮に難しいことを考えられる頭を持っていても、風船のようにふわふわ生きていける世の中だから、どんな性別やセクシュアリティを持っている人でも理論武装をせずに生きていられる…。それこそが「ステキな社会」とか「豊かさ」の象徴なんだけど、それを享受することの、何が悪いの?

●高学歴のオトコの子は、全員が全員、「オレはオレで完結してるから、オンナに愛される必要などない」と思っているのが自然…。こういう前提がなければ、そもそも「勉強ができても愛されなければ意味がないと思いますか?」という質問をオンナの子だけにするはずがないんだけど、そのあたり、わかってる?

 こんな穴だらけの、結局は誘導尋問の機能しか果たしていない、ざっくりすぎる質問3つを、女子だけにすることで、「ホントは女子もこう思ってる」と導こうとする。その魂胆そのものが、もう差別じゃん。こんな誘導尋問をしたうえで、

>差別や蔑視は「対象となっている当人がどう思うか」がいちばん重要なので、

 とか、何をかいわんや、でしょう。「セクハラなんて笑って流しますよ」とか言ってる銀座のクラブのママの言葉を引き合いに出して、「笑って流せないオンナのほうが悪い」とか言いたがるオヤジたちみたい。そんなオヤジたちのことを、あたくしは9年ほど前に『愛は毒か 毒が愛か』という本で書きましたが、状況、さらに悪化してない?

 あたくしは、19歳の自分ならなんの考えもなしに「YES」と答えるような悪辣な質問に、現代女子の半数が懐疑的だったことに拍手を送りたい気分よ。「アンタたち、カッコいいわ。大人よ。そういう注意深さ、若いころのアタシにはなかったもん」って。

 ただ…、ただね、若いオンナの子たちに、「つーか、うちらくらいの年から注意深くしとかないと、足をすくってくるようなバカに対抗できないし」って言われる可能性はもちろんあるわよね。そう言われたら、アタシはその絶望の深さに、なんて答えればいいのか、まだわからないわ…。

 海の向こうでは、マドンナが90年代にはすでに「すべてを手に入れるオンナ」をやりちぎり、ビヨンセがいたデスチャだって15年も前に「自立するって簡単じゃないけど、宝石も車も家も、アタシは自分で買うんだよ! おんなじふうに思ってるガールズ、手を挙げてよ!」と歌っている。あの時代、特にマドンナは「多数決に従うオンナ」じゃなかった。だからこそ広がっていったものがあるのに。

「秋元康」的な存在は、秋元康だけじゃないのよね…。


PS
あたくしの新刊『恋愛がらみ。 不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』のサイン本、ラブピースクラブさんでお取り扱いいただいています。少しお時間はいただきますが、あなたのお名前を入れ、一言メッセージも添えさせていただきます(ご注文があったことをお知らせいただいてから、ラブピースクラブさんにお邪魔しますので、どうしてもタイムラグができてしまうことをご了承ください)。
18歳以上の方でご興味がある方は、こちらをチェックしてみてくださいね!
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