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捨ててゆく私 ゴキブリと石鹸

茶屋ひろし2019.08.21

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今年に入って密かに、けれど確信に近い、小さな目標を設定しました。
それは、ゴキブリを見ても過剰に反応するのは止めよう、ということです。

家で、職場で、その姿を発見するたびに、大きく驚いてすぐさま殺そうとする、というか、殺す。周囲の反応も似たようなもので、それによって、その感情(恐怖、気持ち悪さ)が増幅され、殺した後に全員でほっとする。そして確かめ合う、これに間違いはないのだ、正しいのだ、という全体的な雰囲気。

最近それを、ちょっとおかしくない? と思い始めました。
ゴキブリっていっても、ただの虫じゃん……、なぜそこまで忌み嫌うのか、と自分の感情に疑問を持ったわけです。
いまのところ、虫は苦手だし、そばにいると離れたくなりますが、ゴキブリに対しても、せめてそのレベルに戻せないか、と。

それは、養老孟司が「ここまでゴキブリを嫌うのは日本人だけ」と何かの本で書いていたのを読んだこととか、NHKラジオの子ども科学相談で、同じような疑問に対して先生が、「子どものころから悪いものとして刷り込まれてきたから」と答えていたのを聞いたことがきっかけになっています。

そうだよね~、と納得した私は、いつからこんな自分になってしまったのかを考えました。

ふいによみがえったのは、昆虫と戯れるのが好きでたまらなかった小学1年生くらいのとき、小さなゴキブリの赤ちゃんを飼育していた記憶でした。カブトムシとかザリガニとかを飼う仕様のプラスチックの小さな水槽に、土を敷き詰めて、二匹、ゴキちゃんとブリちゃんと名付けていました(三日目くらいでいなくなった)。

そして小学3年生のときでした。授業中に「ゴキブリ!」と誰かの悲鳴があがり、それに気づいたぼさぼさ髪のおじさん先生は、何気なしに黒板にいたゴキブリを手でつかみ、ひょいっと窓の外に投げたのでした。
すげえ、と私は口を開けていましたが、そのあとクラスの悲鳴は加速しました。
いま思うに、おそらく、あそこが私の分岐点で、私は先生の行動より、周囲の反応に染まっていったのだと思われます。

家ではよく、虫を連れて帰るたびに、母親に悲鳴をあげられていましたが気にも留めていませんでした。
しかし学校は社会、おじさん先生をゴキブリと一緒に汚いものとする、という周囲のジャッジに流されたのは、自分がその立場にされたくない、という恐怖心が芽生えたからかもしれません。学ぶべきは、先生の判断のほうだった、と今では思います。

あと、バイ菌を介在する汚いもの、というイメージがありますが、これまで生きていて、一匹や二匹のゴキブリで健康被害を生じた実感があまりないので、それも心が大げさにならないように努めています。

化粧品会社や洗剤会社(一緒か)のコマーシャルを見ていると、年々、怖くなってきます。そこまで、体臭や汗、カビ・ダニを排除しなくちゃいけないのか……、ゴキブリもその商売の恰好のネタであることは言うまでもありません。

先日、環境問題を考える絵本を読んでいて、シャンプーに使われている成分は台所用洗剤とほぼ同じ、という記述に、へー、知らんかったけど知ってた、と、あほの子みたいに思いました。

石鹸やボディーソープで体を洗うのをやめて10年、シャンプーの使用をやめてもう3年経とうとしています。体はぜんぶお湯で丸洗いにしています。
猫っ毛で、何度ワックスやスプレーで髪形をセットしようとしても、ぺたんこになっていた髪に、本来のコシや癖が戻ってきたのか、前髪が、かつての工藤静香のようにほっといても立つようになりました。

本来、汗や油は、体の表面を冷やしたり保湿したりするために出るもの。それを洗剤で無理やりこすげとって、ほら、油がなくなりまたよ、補填しましょう、とまた油を塗りたくる、そうしているうちに皮膚が弱くなって、さらにあれを塗りましょう、これを塗りましょう、となる、そうして髪は細くなりパサつき、皮膚は荒れていくのではないか。
細胞によるメンテナンスの邪魔をしているだけなのではないか。これはもう、自傷行為かもしれません。
臭いが気になるなら、汗をかいたらふき取る、着替える、水で洗う、くらいで、なんとかなるんじゃないの、と、一時期は狂ったように使っていた市販の汗拭きシートもとっくにやめました。逆に変な臭いが出る気もして。

こうまとめると、なんだか壮大な「キレイキレイ商法」の地獄に巻き込まれていたような気分です。

そういいながら、美容院ではシャンプーしてもらっています。いや、けっこうです、と断る日がいつか来るのか、自分でもわかりません。すっかり手が荒れてしまっている美容師さんたちを横目に、悶々とします。いい香りは好きだけど、これいかに。

ゴキブリも、家で出会ったときは、とりあえず、こ、こんにちは、から始めていますが、つまんで窓の外に放り出すことはできないので、ホウ酸団子を食べてもらっています。
翌日たいていひっくり返って死んでいます。それをトイレットペーパーにつつんで流しています。

結局、殺してるやん、汚いと思ってるやん、というところですが、これがゴールではないということを誓って(何に)、この報告を終えたいと思います。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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