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東京で自分らしく生きること そして韓流 第11回「自殺対策その一」

オガワフミ2019.09.18

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「ウェルテル効果」という言葉を知らなくても、バブル世代以前のかたは岡田有希子さんの名前を覚えているのではないだろうか。後追い自死も社会問題となった。報道効果との相関もすでに国際的に検証済みだった:
a. 自殺率は報道の後に上がり、その前には上がっていない
b. 自殺が大きく報道されればされるほど自殺率が上がる
c. 自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がる
 
上記の検証結果(ウェルテル効果)に対して、WHO世界保健機構から「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」が勧告されている:
1. 機会あるごとに公衆に自殺に関する知識を与える
2. 自殺をセンセーショナルにする言葉や陳腐化させる言葉を使わず、また問題に対する解決策のように表現しない
3. 自殺に関する話題を目立つように配置したり、過度に繰り返したりしない
4. 既遂した自殺や自殺の試みの方法について詳細な説明をしない
5. 自殺既遂や自殺の試みがなされた場所についての詳細な情報を提供しない
6. 見出しの言葉遣いに注意する
7. 写真や動画の利用には注意を払う
8. 有名人の自殺を報道する際には特に気を配る
9. 自殺により先立たれた人に対して十分な配慮を見せる
10. 助けを求める場所についての情報を提供する
11. メディア関係者自身も自殺に関する話題に影響されるということを認識する
 
この話題はいつか扱うつもりだったが今回になったのは、最近ヤフーHP上で「K-POP人気の裏で、なぜ韓国の芸能人は自殺を選んでしまうのか」という扇動的な見出しのニュースが流れているのを目にしたからだ。見ると元は99日と15日に二回に分けて、扶桑社が運営する女子SPA!という「ちゃっかり生きる、賢い女性のホンネ情報」サイトによって配信された記事で、ヤフーニュース以外にもLINEニュースやグノシー等に一斉配信されたので、たくさんの若い女性の目に触れたことだろう。これに断固抗議する。上記世界保健機構の報道ガイドライン1. 2. 3. 6. 8. 9. 10. に著しく違反しているからだ。



 

寄稿したのはK-POPアナリストを名乗る人物で、K-POPの他にもハロプロエッグ出身の日本人女性アイドルグループの著書、格闘技や男性向け官能小説の記事等を執筆している男性だ。生まれて数年後父の仕事でソウルに滞在した経験もあるそうだ。

「無我夢中で全力疾走しているとき、死ぬことを考える人は少ないはず。少し落ち着いて、自分の内面と向き合う時間ができたとき、死という概念が首をもたげてしまうのです。そういう意味では、ハラ(KARA)とジョンヒョンさん(SHINee)は類型的な自殺に至るパターンといえるかもしれません。」

ここ一つとっても医療分析でも評論でもない無責任な素人憶測で、これを日本中に発信してしまう点で信ぴょう性ゼロだし、配信元はジャーナリズム失格だ。
 
そもそもファクトとして若年層の自殺率は韓国より日本の方が高い。OECDの統計でも20代の自殺率は日本は10万人中18.6、韓国は14.2と日本が4.4ポイント高い。10代も日本の方が高い。日本の若年層の自殺率は、OECD加盟国内では例外的に上昇傾向にある。芸能人ならではの自殺率が高いのかについても、他の職業と比較可能な根拠は無い。
 
筆者はジョンヒョンについてはずっと考え続けている。実際の自殺介入の現場で日本の中高生から彼の名前を出す(冒頭のウェルテル効果そのものの)訴えへの支援経験も1度では無い。その度、肉親男性のいないジョンヒョンの喪主を務めたSHINee4人のメンバーが、どれだけ健気に助け合って悲しみを共有し互いを支え合っていたかの報道についても率直に話し合うようにしている。ジョンヒョンに感情移入可能な若者は、大抵他メンバーの気持ちを想像する感受性も持ち合わせていることを信じているからだ。
 
バンドでミュージシャン志望だった高校生が国内最大の芸能事務所にスカウトされて練習生になった。音楽市場で活動したければ、アイドル産業に何らかの形で関わらないと発信の場が与えられないのは韓国も同じだ。デビュー後ソロ活動ではFM「青い夜、ジョンヒョンです」のディスクジョッキーを心から楽しんでいた。ソロデビューアルバムは、コンセプトやデザインは他メンバーやグループ活動の統一イメージに配慮しつつも、中身はギターサウンドの自作自演スタイルだった。
 
一方SHINeeは藤原TOMOくんが在籍したA’st1や筆者イチ推しの2PM同期で、2008年にSMエンターテインメントからSuper Juniorに続くボーイズグループとして満を持してデビューした。サウンド、ファッション、ダンスの3点においてこれまでにない最先端のイメージをコンセプトにしていた。ヨーロッパの作曲陣、中性的なヘアメイクと仲宗根梨乃やトニー・テスタ振付による誰にも真似できない「人間の限界を感じるようなパフォーマンスの頂点(カル群舞)」を特色として国際的な評価を得て来た。
 
ジョンヒョンの最新ソロアルバム「PoetArtist」は多くの賞を得た。今筆者の手元にある死の数か月前のSHINee日本ツアーメイキングDVDでも「全力疾走」している彼の舞台裏の笑顔と圧倒的な声量、彼にしか出せない心の奥底まで届くハスキーな声質しか認められない。5年目のジンクス前に解散するグループが多い中、メンバーがチームワーク良く全員仲良かったのも、この悲劇に際して胸が引き裂かれる思いがした。とても「類型的」と類型化することはできない。
 
 
 
 
 
母と姉に育てられたジョンヒョンはマザコン・シスコンを自認し「女性は全ての芸術家にとって最も大きなインスピレーションを与える(ミューズのような)祝福された存在」と発言したことで炎上し、謙虚に若いフェミニストと私信で長いやり取りする中で「同情や美化が差別につながることもある」と自らの誤りを認め、相手の立場から学ぼうとする姿勢が後にネット上で公開されて世代を超えた共感を呼んでいた。それ以前には、SNSや当事者へのDMでセクシャルマイノリティへの支持、支援を公私共に表明し、本国のネット右翼から左翼認定を受けていた若者だった。
 
筆者は学生時代に象牙の塔(白い巨塔とも呼ばれた)や国から虫けらのように扱われていたセクマイへの思いから、エイズ医療を改善する研究をしたいという怒りを爆発させることで、長期に亘った引きこもりから渡米するエネルギーを得た。アメリカのLGBTフリークリニックに長年勤める内に、せっかく研究の成果あって人々がついにHIVで死ななくなったのに仲間がうつ病や依存症・ヘイトクライムや自殺で亡くなって行くのを救うことは出来なかった。その悔しさから今は自殺対策がライフワークになっている。日本では病理学や保健学を專攻したがアメリカで公衆衛生学を学び直した。別の機会に対応策についても更に書いて行きたい。
 
自分はこれからもジョンヒョンのことを考えながら仕事にプライベートに生きていくのだと思う。父親を幸運にも年齢順に失って知ったのだが、先立たれた側は残りの人生をある意味死者と共に生きて行く。共通の思い出を分かち合い、固有の記憶に自分を励ますことが残りの生を意味深くする体験を、誰もが持っているだろう。ジョンヒョンを愛した人は皆、彼が与えてくれたものに励まされて生きて行くと思う。そうして行く限り、我々の心の中で彼の命が尽きることはないのだから。
 
本日のインフォメーション: よりそいチャット~誰にも相談できない悩みに~
生きるのがつらい。孤独で寂しい。なんだか悲しい。その気持ち、LINEやチャットルームで伝えてほしいな。https://yorisoi-chat.jp
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オガワフミ(おがわ・ふみ)

福祉職員。ゲイ。中年。杉並在住シングル。心身の健康とKPOPの相関について考える日々。ラブピースクラブがその辺で発掘。A型。天秤座。好きな言葉はアイスクリーム。推しカラーはパープル。好きな香りはグレープフルーツ。TOEICスコア990だが日本語少々不自由。夢は夜間中学保健教諭。ハイビスカスティーを常飲。最近パン作りにハマっている。

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