ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

  • TOP
  • 牧野雅子
  • 日本は本当に「性犯罪が少ない国」なのか!?

日本は本当に「性犯罪が少ない国」なのか!?

牧野雅子2020.07.01

Loading...

日本は「性犯罪が少ない国」なのだそうだ。

女性が痴漢被害のことを話題にして、おまけに痴漢に遭ったことがない女性なんてどこをさがしてもいない、なんて言ったりしたら、「男はみんな痴漢だというのか!」と謎解釈で怒り出す男性たちまで。

仮に、あらゆる女性に痴漢被害経験があるとしよう。

しかし、そのことは、すべての男性が痴漢加害者であるということを意味しない(当たり前だ)。

それなのに、そう言っているのだと決めつけて、痴漢呼ばわりされたと怒り出すのは、痴漢以前の話である。

人の話を聞いていますか、ちゃんと文章を読めていますか、というレベル。

加えて、女性たちの痴漢被害に遭ったという話を否定しまくるのも謎対応である。

自分がそれまで知らなかった事実を突きつけられたら、これまで自分はそのことを知らなかったなぁ、と自省して、認識を変えればいいだけの話だ。

それを、「ウソだ、ありえん」と否定するのは、言わずもがな、性暴力の二次加害(セカンドレイプ)だ。20年くらい前までは、痴漢被害の話は、
「痴漢被害に遭ったことがないのはオンナとして恥」
「痴漢被害に遭ってこそ一人前のオンナ」
などと言われて、大事な話は聞き流されていた。

それを言っていたのは、男性たちだ。

「痴漢に遭ってこそ一人前のオンナ」
なんてことが言えるのは、多くの女性が痴漢被害に遭っているという「事実認識」があるからで、当時の男性たちは、日本に痴漢が多いことをよく知っていたということだ。

今でも、「痴漢に遭ったことがないのはオンナとして認められてないからだ」と同級生の男子から言われたという女子高校生からメールが来ることがあるから、「痴漢被害に遭ってこそオンナ」説は、水面下では健在なのだろう。

古い雑誌をめくっていくと、以前は、痴漢加害を武勇伝のようにして語る有名人たちがいたことや、「男はみんな痴漢だ」と、男性たちが笑いながら語っていたことがわかる。「男はみんな痴漢だ」とは、他ならぬ、男性たちが言っていたことなのだよ。

痴漢を「性被害」とは考えず、「犯罪」だとか「重大な人権侵害」とも見なさず、女性たちの抗議の声を、「痴漢被害に遭うのは女性として魅力的な証拠だから」とかなんとか言って、とってつけたような、おべんちゃらで丸め込んで、被害当事者の声を黙らせ、それでも黙らない女性たちには、「ブス」というルッキズムそのものの言葉をぶつけて嘲笑し、その一方で、痴漢を性的な娯楽として消費してきた。

それは今でも女性専用車両を利用する女性たちへのバッシングに見られる。

そのあたりに興味のある方は、『痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学』(2019 エトセトラブックス刊)にまとめているので、読んでいただければと思う。

80年代、90年代の話を少しする。

わたしは、中学の少しと高校以降、通学に電車を利用していた。その当時、電車通勤のサラリーマンたちは、スポーツ新聞を手にしていることが多かった。スポーツ新聞のうしろのほうには、性風俗情報が掲載されたページがあり、女性の裸の写真やイラストが掲載され風俗ページをこちらに向けたり、ひどいときには顔に押しつけてくるようなことが、たびたびあった。

そのときの彼らの顔を見てみると、こちらの反応をうかがってニヤニヤしていて、困惑して恥ずかしがっているこちらを楽しんでいる感じ。

電車の中で体を触られる痴漢も嫌だったが、こういう嫌がらせも痴漢に負けず劣らず嫌だった。
しかし、考えてみれば、恥ずかしいのは、そのサラリーマンたちのほうだ。そもそも、通勤通学時の電車の中で、スポーツ新聞の風俗ページや、男性誌のヌードグラビアを、通勤時とおぼしきスーツ姿の男性が読んでいること自体が衝撃的だと思うのだけれど、社会問題になっているようには思えなかった。

地方住まいのわたしでも、電車の中の痴漢にはうんざりだったが、都市部ではもっとひどかった。東京で電車通学をしていたという同年代の女性たちと話をすると、学生時代は毎日痴漢に遭っていた、1日に複数回も遭っていた、同時に何人もから触られたことがある、下着の中に手を入れられるとか、精液をかけられるなんてめずらしいことじゃなかった、などなど、痴漢被害話が止まらない。

これ以上、痴漢被害に遭いたくないから、大学は電車通学しなくていいところに行きたいと、住み慣れた東京を出たという人さえいた。都市部のひどさは想像以上で、絶句することも多かったが、彼女たちの話を聞いても、ウソだとか、話を盛ってるなどと思ったことは一度もない。

男性たちが痴漢を娯楽として消費している時代を、リアルタイムで身をもって経験しているわたしからすれば、「痴漢はない」とか、「男性全員を加害者呼ばわりするな」とか、いやはや、たかだか20年くらい前のことでも、ここまで歴史修正、しますかねーという感じ。

記録や記憶がどうであれ、大きな声でそれを打ち消すような内容をがなり立て、その時代を知らない人たちに「そうなのか」と思わせたほうが「勝ち」みたいなゲームでもやっているのかといぶかりたくなる。

でも、これ、既視感がある。

「従軍慰安婦問題」でこの国の少なからぬ人たちの態度と重なる。

女性たちの痴漢経験を聞いて、それを、「男はみんな痴漢だ」と聞こえた気がしたとしたら、きっと、「男はみんな痴漢だ~!!」と、痴漢ネタで遊んでいた上の世代の男性たちのコトバが、時間差で突き刺さっているのだと思う。

文句があるなら、上の世代の男性たちに言えと申し上げたい。

Loading...

牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP