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みなさまこんにちは。行田です。
今月から連載のタイトルを「Feminist一年生」に変更しました。
一年生ということは来年は二年……?ということはありません。世界は常に変わっていきます。それに合わせてわたしも常に真摯な気持ちでFeminismと向き合っていきたい。そんな気持ちを込めました。新たなタイトルと共に、これからもよろしくお願いいたします。

さて、9月は本当は別の内容を、と思っていたのですが、急遽変更して”Queer Eye”のジョナサンの自叙伝についてお届けします。

※まだ読めてないのでネタバレはちょっと……! という方は急いで読んで、こちらのコラムに戻ってきてくださると嬉しいです。


※性的虐待、性暴力に関する記述があります。くれぐれも無理をなさらず「あ、今はだめだ」という方は、ブラウザをそっと閉じて、温かいものを飲んだり、甘いものを食べたりしてください。

9月の第2週、私はある自叙伝を読んでいました。そして、途中で本を閉じ、涙を流し、ふーっとため息をつきました。そこからまたページを開くのには、かなりの勇気が必要でした。
その本のタイトルは『どんなわたしも愛してる』(集英社,2020)著者はNetflixの大人気リアリティ・ショー、”Queer Eye”のメンバーの中でも飛び抜けて元気でチャーミングなジョナサン・ヴァン・ネス。

“ほんとうのわたしを知っても、ファンでいてくれるの? わたしの人生を全て知っても? わたしの人生にどんなことがあったか全て知ったあとも?”(同書p.12より)

ジョナサンが本文中で繰り返し読者に投げかける問いの意味のひとつがわかった時、わたしの胸は締めつけられ、一度本を置かざるを得なかったのです。

ジョナサンは、性的虐待のサバイバーでした。セクハラに遭ったわたしと同じく、性暴力のサバイバーだったのです。

そして、そのことに悩み、苦しみ、繰り返し自分自身を傷つける行動をとってきたのです……わたしと同じように。

まずは「ジョナサンって誰?」という方のために簡単な紹介を。

Jonathan Van Ness. 1987年イリノイ州クインシー生まれの現在33歳。ヘアメイクアーティストとして働く傍ら、『ゲイ・オブ・スローンズ』という人気ドラマのパロディ番組で芸能界入りを果たしました。その後、Netflix制作の”Queer Eye”のオーディションを勝ち抜き、ヘアメイク担当として番組に出演し、人気が爆発。番組はエミー賞にもノミネートし、彼も一躍時の人となりました。

本文中でジェーン・フォンダが言ったように(p.159)ジーザスのような美しいロングブラウンヘアとひげが特徴で、時にはスカートやワンピースも着こなし、ノンバイナリー(男性と女性の両性を自認する人)を体現しています。本書後書きには

“本人はthey/he/sheのどれで呼ばれてもOKとのこと”(p.283)

と訳者のコメントがありますが、わたしにとってジョナサンはジョナサンで、代名詞が似合わないように思える。そんな人です。

自叙伝の始まりから終わりまで一貫しているのはテレビでもお馴染みのハイテンションなジョナサン流おしゃべり。訳者の安達眞弓さんに脱帽です。

レッドベルベットやユニコーンのカップケーキ、ウーピーパイ、たっぷりのお茶を乗せたテーブルを挟んで「ねぇ、ちょっと聞いてくれない?長くなりそうなんだけどね」とジョナサンが目の前でわたしに向かって話してくれているようでした。

だからこそジョナサンの告白が肉体的な衝撃をもわたしに与えたのでしょう。

ジョナサンが性的虐待に遭ったのはおそらく小学校入学前後。

「お医者さんごっこ」と称して年長の少年に日曜学校の懇親会の間虐待を受けていたのです。

それが家族に明るみになった時、彼らはジョナサンが「性被害」に遭ったとは考えませんでした。本当にその認識に至ったのは数年後、ジョナサンが高学年になり過食嘔吐を繰り返してしていることが知られ、セラピストに全てを打ち明けたからでした。

しかし、その後の家族の行動は、よりジョナサンを傷つけ、ジョナサンはさらに自分を傷つけながら生きていくことになるのです。

トラウマを抱えているが故の自己破壊行動。

ジョナサンの場合は、それが過食であり、お酒であり、マリファナ、売春、覚醒剤、リスクを伴う不特定多数との性交渉でした。

その結果、ジョナサンはHIV陽性の診断を受けたのです。

しかし、これは特別なケースではありません。ただ、ジョナサンの場合は、上記の破壊行動だっただけです。

過去の悪魔は突然後ろから襲いかかってくるのです。何かとても楽しいことがあったあと、ふとひとりになった時に。電車を待つ間に。夜ベッドに入った瞬間に。家でぼーっとしている時に。

思い出すのです。あの視線を。わざと背中を触られたことを。二の腕を撫でられたことを。倉庫の中で泣きながらパートナーにメッセージを打ったことを。

そこに様々な過去の経験や、現在の不安が加わってストレスとなり、わたしが走るのは過食と自傷です(「でした」と言えないのがつらいところです)

誰もが苦しむ可能性のあることを、ジョナサンは自伝の中で全て話してくれました。相変わらずティータイムの席のようなテンションで。それでいて、とてつもなくつらかった過去を。

ジョナサンは願っています。この本が発売されることによって、世の中に同じような悩みを抱えた人がたくさんいて、どうかその人たちに寄り添ってほしいと。

そして、固定観念に縛られることなく、自分は自分、とそのままの自分を愛して受け入れられるようになればなるほど、他人の意見に振り回されなくなると伝えてくれています。


“子どもじみた固定観念も捨てたし、自分のやり方を曲げてまで人のご機嫌をとるようなことは、もうしない。意に沿わない自分に変わることもやめた。わたしはずっと同じジョナサン”(p.274)


もちろんこの自叙伝はつらい話だけではありません。ジョナサンの大好きなフィギュアスケートや体操の話が出てくるので、同じ趣味(わたしも)の人にはたまらないはず。

そして皆さん、もうご存知ですよね。ジョナサンが憧れのあの「クイーン」と共演したことも。(「?」という方は本書をどうぞ!)


この本を読んで、”Queer Eye”の人気の理由がわかりました。

それは、依頼人を別人にするのではなく「本来の心地良い自分の姿」にしてあげるからだと。

その魔法を可能にしているのは、スタッフの努力と、ファブ5の生き方ではないでしょうか。


最後に少し、わたしが涙した部分を引用させてください。


“もっと大事なこと。サバイバーは、愛と笑いと光に包まれ、心の傷を癒す自由があるって言いたい”
(p.96-97)


さて、ジョナサンは本書で言葉を変えつつ何度も同じことを聞いてきます。「わたしの全てを知っても、わたしを好きでいてくれる?」と。

答えは決まってます。YAAAAS!!!! QUEEEEEEEEEEEEEN!!!!!

あなたがジョナサンでいる限り、わたしはあなたが大好きです。


p.s. survivorと聞いて、あなたが思い浮かべる曲はなんでしょうか。デスティニーズ・チャイルドでしょうか。それとも、グロリア・ゲイナー?

わたしのイチオシはアレサ・フランクリンです。最高なので”ALETHA FRANKLIN SINGS THE GREATEST DIVA CLASSICS”で探してみてくださいね。それでは、行田でした。

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行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
立教大学 文学部 文学科 文芸・思想専修卒
在学中に一年間ロンドンに留学。
ストックフォト会社、美術館、出版社事務を経て、現在はうつ病との共生を目指して半療養中。自身の病気と、セクハラ被害を受けたことをきっかけに、女性のwellbeingを模索中。同時にジェンダー、セクシュアリティ、クィア、フェミニズムについて考える日々。
趣味は読書、観劇、『ル・ポールのドラァグ・レース』『Queer Eye』を見ること、海外セレブウォッチ、
ハムスターの世話(でも噛まれて泣いた)
最近のブームは韓国ドラマ&文学、アルゼンチンタンゴ。
笑顔で沼に沈没中。

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