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おかんとコピ Vol.15 夏の終わりとはちわれ

李信恵2020.10.06

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夏が終わって、秋になると物悲しい。子どもの時は夏休みが終わるのが嫌だったが、大人になってずいぶん経ってもう夏休みなんかないのに、やり残したことがあるような、何か忘れてきたような気分になる。しかし、秋が深まれば深まったで、夏のことなんか忘れて行くんだろう。そして、今年の秋はコピがいるので寂しいとか感じている暇はなかった。

9月に入ってもまだまだ暑さが続くある日、前回のワクチン接種(2回目が6月)から3か月が過ぎたということで、去勢手術について相談するために動物病院へ。いつも通りというか、週末は込み合うので2時間ほど待ってから診察室へ。看護師(と云うのか?)さんがコピを見るなり「わー、この子の毛、ふわふわ!」とニコニコしながらコピに声を掛けた。今日の診察は若手のY先生だった。「黒猫でふわふわっ子、僕も昔飼ってたけど。このふわふわ、黒猫だと写真ではなかなか出ないんだよね。ほこりがちょっとでも付くと目立つし」と、これまたニコニコ。そんな話を聞いていたのか、褒められたのでカシコぶったのか、コピはタマ調べのエコーの際もとても大人しかった。このY先生、大学に戻ってさらに麻酔の勉強をするために来月から1年間ぐらいお休みすると、病院の受付に張り紙があった。会計の時にはいろんな人から「先生、ちゃんとここに帰ってきてや」と声を掛けられていた。いい先生がいっぱいの、いい病院だなあと思う。

コピの去勢手術は、できれば年内にはしなきゃいけないということだった。けれど体重がとどまることを知らずぐんぐん増えているので、「骨の成長が止まってからね」ということだった。しかし、普通に飼っていて、しかも素人がどうやって猫の骨の成長が止まったかどうかを判別するのだろう…。こまめに体重を測るしかないのかな。食欲の秋のせいかは知らないけれど、ごはんもいっぱい食べてもりもりうんちもする。「まあ、寒くなる前、年末にでもまた電話してから病院に来てください」とのことだった。手術は先送りに。コピは帰宅後にいっぱい遊んで、そのあと疲れたのかすやすや寝た。

この連載は相変わらず、コピの成長と1年ぐらいずれたままで、何とか追いつこうとしているのだけれど、出会ってから毎日毎日出来事が多すぎて、なかなかだ。何とか年内には、と思っているのだが、果たしてどうなるのか。それはさておき、つい先日の夕方、近所の公園を散歩していたら、はちわれ(鼻筋を境に顔の毛の色が左右に分かれているもので、「八」の字形に見えることから)の野良猫が寄ってきて「にゃあ」と可愛い声で鳴いた。「おいで」と近づいたら、いきなり毛を逆立ててシャーと云われた。「なんじゃそりゃ、お前が先に誘っといて」と思うと、チャリに乗った女性が近づいてきて、すぐそばで止まった。顔を見るとキムチ(以前飼っていた愛娘犬)の友だちのわんこの飼い主のお姉さんさんだった。

近況を訪ねると、「もうこの年だから、先のことを考えると動物は飼えない。だから、余生は保護猫の活動をしているの」と。「多分この猫は、餌をあげる私とあなたを間違えたんじゃないかしら。それが恥ずかしくてシャーって云ったんじゃない」と笑っていた。この公園だけでも15匹以上の猫の避妊・去勢し、今年に入っても数匹を保護して、飼い主を見付けたって。すごいな。つい最近も洗濯ネットに入れられて、捨てられていた子猫を保護したと云う。最初はカラスが網か何かに引っかかっているのかと近づいたら、猫が入っていたから驚いたって。コピみたいな子はこの世界にいっぱいいて、運よく助かることそうでない子がいる。

はちわれはよく見ると、「さくらねこ」だった。「さくらねこ」とは、不妊手術済みのしるしに、耳先をさくらの花びらの形にカットされた野猫のこと。きっとこのはちわれも、お姉さんのお世話になったのだろう。ちなみに私が住む東大阪市では、所有者のいない猫(野良猫)の去勢・不妊手術のためには 1匹につきオス猫6,000円、メス猫9,000円まで助成金が出るそうだ。なかなかいい街だ。

一方、はちわれはお姉さんからご飯をもらうと急いで食べ、そのあと振り向かずにすぐにどこかに行った。お姉さんは自転車に乗って、また別の猫にご飯をあげにと向かった。夏の日の終わりのことだった。

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李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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