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ほとんどの人がマスクをしているという状況はこれまでになかったことで、しかもそれが、自己防衛のためではなく他人に感染させないため、という理由が、すでに世の中を変えてしまったような気がしています。もちろんそうは思わず、他人からウイルスをもらいたくないからマスクをしているんだ、という人もいるでしょう。しかし結果は、その人が感染していて無症状だったら集団感染を抑えている、ということになっている。図らずも利己主義が公共に貢献している、とか。
二カ月に一度は喉を腫らして耳鼻科に通っていた私も、この一年、二回しか行く必要がありませんでした。三軒の院長たちの顔が浮かびます。マスクのおかげで持病が落ち着いたという人もいるだろうから、耳鼻科の経営は悪化しているかもしれません。

いいことと悪いことは同時に起こる。

本屋での変化といえば、おじさん客の素行が正されていった感じです。
やたらと怒鳴る人がいなくなった、立ち読みしている雑誌でくしゃみを受け止める人がいなくなった、唾をつけて会社四季報をめくる人がいなくなった、タンをからませる音がしなくなった、店内につまようじが落ちていることがなくなった。
すごくないですか。これはマスク効果です。
言っても聞かない、聞こえない、延々とやってくるそうした人たちの行動様式を変えてくれました。

おじさんを変えるには、モラルを説くよりウイルスへの恐怖のほうが早かった。
自分のために律義にマスクをつけているのかもしれませんが、ようやく社会人に見えてきたよ、なんて皮肉です。

いいことと悪いことは同時に起きる。

コロナの影響もあったと思いますが、この一年の『鬼滅の刃』というコミックの売れ行きはすさまじかった。ウチみたいな小さな店でも新刊が出れば数百冊が即日完売する、それがふた月にいっぺんのペースでやってくる、増刷を重ねる20点の既刊も売れ続けます。
鬼滅さまさまやねー、なんて喜んでいたら、登場したのが転売屋たちでした。
全巻セットをネットで売れば数千円もうかるらしい。今回驚いたのが、中高年の男性と女性が交互に買いに来たことでした。それも推定60代がたくさん来ました。年金をもらっている世代だと思われます。

しかも買い方が奇妙。バラバラな巻を買って、次に来た人がその埋め合わせをするようにその他の巻を買っていきます。支払い方法も、何%還元の時はみなPAYPAYで、その期間が過ぎると今度は図書カードで、といった具合。
組織化されている、というか操られている?

一人のおじさんに尋ねてみるとあわてたように、「いやあ、転売に見えるでしょう。でもちゃうねん、孫がぎょうさんいてな」と答えました。んなわけあるかい。孫に買ってやりたいおじいちゃんが何でまっすぐ鬼滅の売り場にたどり着くことができるねん。
ある意味正直、大阪のおっちゃんです。
売り場の情報も出回っているようです。
うろんな目つきの人、ちょっと興奮気味の人。任務を課せられた転売屋の人たちは今でも来て、最近は付録によってすぐ売り切れる女性誌や幼年誌も狙ってきます。
そうやって買い占められて、本当にそれが欲しい人(子どもとか)に販売できないことが切ない。
日本は貧しい国になったな~、とつくづく実感します。毎月コロナの給付金が一人あたり50万円支給されていたら、最低賃金時給1500円が達成されていたら、こんなことはなくなるかしら。

そういえば、コロナ初期にはマスクの買い占め問題もありました。動機は似ている気がします。
マスクはまだ逼迫したところもあったのでしょうが、鬼滅の刃はさすがにどうなの、という思いです。
メルカリヒットの現象も踏まえて、みな個人商店というか経営者になりたかったのか、とも思います。でもウチを仕入れ先にしないでほしい。人の商売を邪魔していることに気づかないのは、やはり未経験者だからなのか。社会の、経済の、搾取される労働の仕組みをわかってほしい。これまで搾取されてきたと感じるなら特に。
1杯190円の生ビール、1枚1000円のセーターの、その裏で泣いている人がいるということ。リベンジを転売に代えないでほしい。
そこらを考えるための本もたくさんそろえているのになー、という歯がゆさもあります。

「赤信号、みんなで渡ればこわくない」というネタ、当時は体制への反抗だととられちゃったけど、本当は、危険だとわかっているのに突進してしまう日本人のことを皮肉ったものだったんだ、と、ビートたけしが最近書いていたのを読んで身に沁みました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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