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おかんとコピ Vol.18 去勢手術と横浜家系黒猫

李信恵2021.05.09

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去年の今頃は布マスクを作り続けていて、今年はずっとフランスパンを焼いている。あちこちに行けなくなって、会えない人もたくさんいる。いろんなことが変わった。一方、コピは相変わらずひたすら可愛い。親バカも平常運転だ。コピは、パンを作っている時はだいたいいつもキッチンの片隅に置いてある某ZOZOTOWNの箱の中で(全然某になっていない)、焼き上がりを監視している(心配そう)。「パンを作るのも良いけど、俺にはよおやつくれ」と云いたそうだ。

あ、フランスパンについては、身体障害者にしかできない表現を追求する「劇団態変」の機関誌『IMAJU イマージュ』に[酒と食いもんのエッセイ 12]「リンダの簡単フランスパンレシピ」を寄稿しているので、みなさん読んで作ってみてね。

去年のGW 明けは、コピの去勢手術のため朝から病院へ向かった。病院につくまで、コピは車の中でひたすらみゃうみゃう鳴いていた。いつもなら車の中では自由にさせるけど、今日は手術と云うこともあって、自宅からすでに大型の洗濯ネットに入れてからキャリーへ。いつもと様子が違うので、何か伝わっているんだろうか。手術の前なので、朝ご飯は無し。それも不服なんだろう。去勢に備えて、キャットフードを去勢後の猫用に徐々に変えておいた。去勢後、ホルモンバランスが狂って太る猫も多いらしいので、それに備えたのだけど。コピはすでに、1歳過ぎて5.5キロもある。まあ、健康に注意するに越したことはない。

病院に到着すると、まず麻酔や手術の同意書にサイン。信頼はしているものの、同意書にはネガティブなことしか書かれていないので読むのが辛い。どんな手術でも100%安全ではなく、万が一のことがある。コピはただでさえ、片方のタマが陰睾(腹腔内)なので、全身麻酔の開腹手術になる。去勢手術することについて、少しの葛藤はあったけど、腫瘍化したりがんになったりする確立の方がはるかに高そうだし。悪くなって手術するよりも、この際と割り切った。けれど、不安は増すばかり。手術が終わり次第連絡があるとのことだが、手術が手術だけに時間が掛かるかもしれないため、夕方以降になるとのこと。

通常の去勢手術だったら、二つのタマがタマ袋に入っていたら、局部麻酔でタマ袋をぴっと切ってタマを抜いて結構簡単で早い手術らしいのになあ。その話を家族(大小ダーリンこと夫と息子)にすると、タマ袋を切るということは、想像するだけでも恐ろしいそうだ。でも、全身麻酔でお腹を開く方がずっと大変なことには違いないとは思うが。それはさておき、手術が終わるまで離ればなれで、とても怖くて寂しい。けれど、私が近くにいてても全く役に立たないし、コロナ禍で混雑を避けなきゃいけない時期に、待合室にずっといるのも迷惑だ。なので、自宅で大人しく待つことにした。別れ際に、コピに「頑張ってね(涙)」と声をかけた。コピはすごく機嫌が悪そうだった。

コピの手術が無事に終了、数時間過ぎた夕方の電話があり、すぐさま車でコピを迎えに行った。手術を終えたコピは、ひとまず元気だ。以前飼っていた愛娘犬のキムチの避妊手術後は、全身麻酔のせいでぐったりして、その姿を見て泣いたけどコピはそうでもない。でも、ぼーっとしているようだ。問題の片方のタマは、体内で「タマらしきもの」が見つかって、摘出されたそうだ。途中まで降りたけど、止まった&育たなかったのかもとのことだった。念のため、癌化してないか調べるため病理組織検査に出すとのことで、その結果は1週間後。院長先生や看護師さんから、「コピちゃんは病院内でもお利口さんで、大人しく過ごしていましたよ」と褒められた。大変だったけど、頑張ったね。偉かったね。

しかし、自宅に戻ってしばらくすると、コピはしんどい体を引きずっていつも過ごす1階のおいらの部屋ではなく、3階の寝室に向かった。ベッドの下の薄暗い場所に潜り込むと、隠れて寝た。傷を早く治すための本能なのだろうか。傷口をなめないように(エリザベス)カラーを付けているけど、それがめちゃ嫌そうで、動くたびにどこかにぶつけるし、ベッドの下から出る時や階段の上り下りの時は引っかかりそうで、かえって危険だ。傷跡はかなり大きく、13針縫ったと院長先生は云っていた。明日の朝までご飯はもちろんお水もダメなので、かわいそうだけど我慢してね、と声をかけた。

そういえば、カラーを嫌がるときはどん兵衛が良いと、以前Twitterで見掛けた。もちろん、麺ではなく器のこと。なので、すぐさま夜に作ってみた。発泡スチロール製で軽く、コンパクトだ。カッターで首のサイズに合わせて底をくりぬき、念のため切り口はビニールテープでカバーした。カラーを変えると、コピはややご機嫌になった(ように見えた)。ちなみに家にどん兵衛がなかったので、横浜家系で作ってみたが問題はなかった。むしろきりっとして格好いい。親バカかもしれないが、こんなに横浜家系が似合う猫はそうそういないと思う。作る奴もいないが。

手術当日の夜は、コピが心配で眠れなかった。けど、朝が来るとコピはベッドの下からはい出し、お水を飲んで、ご飯も食べて、薬も飲んだ。ひと安心。そのあと自分が爆睡した。回復を祈りながら、静かな毎日を過ごした。手術から5日目には、コピはめちゃ元気になって食欲も普段同様レベルまで回復した。毛を剃られたお腹がちょっと痛々しいなーと思うが、そのうちに生えてくるだろう。

1週間後に病院へ行き検査の結果を聞くと、体内で見つかったはずのもう片方のタマはタマではなかったそうだ。コピは生まれつき、片方のタマしかなかったらしい。お腹を開いてみないと結果が出なかったし、今は元気に過ごしているので手術したことに問題はなく、良かったと思う。病院からレンタルしていたカラーを返却するというと、院長先生が「もう少しつけておいた方が良いんじゃないかな。縫合した糸が全部外れるまでは」と云うので、スマホに撮っておいた家系カラーの写真を見せると、いつも無表情で淡々としている院長先生が「ブッ」と噴出した。看護師さんが小声で、「笑う先生なんて、ほんと珍しいですよ」と私に囁きかけた。院長先生とスタッフさんたちに、お礼がてらコピ柄(黒猫柄)の布マスクをプレゼントしておいた。

そして、元気になったコピはその後は毎日のようにzoom会議に乱入。コロナによる影響で、お家時間がこんなに長くなるとは、想像もしなかったけれど。今でもコピは私を癒しながら、私の仕事のお手伝いと云うか邪魔をすることに明け暮れているのだった。大変な日はまだまだ続きそうだけど、みんな、コピのようにたくましくしぶとく、のんびりと生き抜こうね。

 

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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