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病める時も、また病める時も、ずっと病んでても、わたしはパーフェクト

行田トモ2021.05.13

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身長153.5cm、体重62㎏、BMI26.5、
体脂肪40.9%(肥満)、内臓脂肪レベル7.0(標準)

突然何だと驚かれる方もいるだろう。これが、今のわたしを現す「ひとつ」の数値群、つまり、どんな体型をしているか。
内面も、信条も関係ない。肉体に関する数字たち。
しかし、わたしはこれらを自分のすべてだと思ってしまった。
その結果、わたしは何をしたか。
泣きながら、さらに食べたのだ。



ある週末、わたしはホテルに泊まってドラマを見ていた。

Netflixでシーズン3まで配信されている”THE BOLD TYPE”(邦題『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』※最終シーズン5が本国で今月末放送開始予定)だ。

元コスモポリタン編集長が制作に携わったこのドラマは、ファッション誌の編集部で働く等身大のミレニアル女性3人を描いている。
セックスの話題はもちろん、バイブが偶然おそろいで誰のものかわからなくなったり、膣トレ道具がうまく取れないのを助け合ったりと、日本ではまだしばらーく作れなさそうなエピソードの連発だ。
それ以外にも、乳ガン、ボディ・ポジティブ、宗教とセクシュアリティ、人種問題など、社会的なテーマもみっちり織り込まれており、ラブピ読者の皆さまに刺さること間違いなしのドラマである。

そんなドラマを見て、早寝早起きをして、自分なりに心を鎮めて家に帰った。
ベランダを眺めているパートナーに自分の考えを話した上で、「これからどうしたい?」と尋ねた。
彼女は「トモちゃんがいない間、ホッとした」と泣きながら答えた。
わたしは「そっか」と言うしかなかった。
そう、お別れの時が、来てしまったのだ。



3月のコラム『時にはわたしの話を』で、神戸の親元から彼女の待つ家に帰ると皆さんにご報告した。
それからたった3週間。わたしたちの関係は修復不可能になってしまった。
彼女と出会って5年、パートナーシップを結んで一緒に住み始めてから約3年。
その最後の2年でわたしの体重は30kg近く増えた。
最初は体重が40㎏台に安定してふたりで喜んでいた。しかし、その後もどんどんわたしの肉体は肥大し続け、ある日、初めて訪れた精神科で医師にさらりと言われた。

「摂食障害ですね」
食べ過ぎだとは思っていた。ただ、摂食障害の場合は嘔吐がセットだと思い込んでいた。ところが、摂食障害についての本には、吐く行為を伴わない「過食性障害」という病名が書かれていた。
わたしはずっと、過食性障害だったのだ。
親元にいる時は、兄の結婚式と、東京に戻るまでに少しでも痩せたいと、かなりシビアな食事制限と運動をしていた。
そして東京に戻ると、ひとりの時間が増え、寂しさから台所に座り込んでチョコレートなどを貪るようになった。一日中焦燥感とともに食べ物のことばかり考え、手元に甘いものがなくなると不安でたまらなかった。練乳をそのまま飲んだりもした。
食べても食べても飢えが治らなかった。心の飢えが。おそらく、うつになる前の自分=良い自分と考えていたのだろう。体重は38kgだったのに。

スキニーな体型からどんどん遠ざかる自分を嫌悪し、むちゃ食いをしてはまた落ち込み、不安定な気候とコロナの影響もあり、塞ぎ込んでばかりいた。
パートナーは、過食が進み、病的に食べ物に執着するわたしが怖かったと言っていた。だから、東京に戻ってもヘルシーな生活を続けようと思っていた。
でもできなかった。あっという間に4kg太った。
今なら、帰宅後の過食の原因がダイエットの反動や、環境の変化によるものだと理解できる。摂食障害に関する本も読み始めた。それでも、パートナーの心を傷つけるには十分な行いをしてしまったのだ。

出会って5年、わたしはずっと病んでいた。自傷行為もしたし、過食も自傷行為の一種だと言える。
「トモちゃんは無事だろうか」
外出中ずっとそんな心配をしていた彼女の心の限界がきてしまったことを、責められるはずがない。
むしろ言いたい。5年もの間、ありがとう、ごめんね、と。

慣れた手つきで再び親元に荷物を送る準備をする合間に、上述のドラマの残り数話を見た。
自分は雑誌のモデルのようには美しくないから、学校に行きたくないし、食べたくないという少女が出てきた。
彼女との関わりがきっかけで、主人公のひとりは、デザインスクール主催のショーで編集部の仲間をモデルにすることを決意する。
編集部の中でも太めの女性がランウェイを闊歩する姿を見て、少女が呟いた。

“She looks so beautiful.”

そこで初めてキャストの肉体に注目した。腕のそばかすと(おそらく)生まれつきの大きなシミを隠していない。ドレスを着た時に背中がむっちりとして、肉付きが良いのがわかる。縮毛をストレートにせず、ドレッドなどで楽しんでいる。
「等身大」というのは、キャストのボディでも表現されていたのだ。
ショーの後、特大号の締め切り直前で、編集長がやり直しの指示を出す。

”この業界はつい儲けを優先しがちでーー大人びていれば14歳の子供でもモデルとして使うーー手に入らない美しさを「標準」だと思わせてーー多くの人に重圧を与えている”

自分たちの使命は女性に自信を持たせることだと、大きな方向転換を決めるのだ。
猛ダッシュで撮影をやり直す編集部員たちは輝いている。BGMにわたしの大好きな曲が使われていた。
Anne-Marieの”Perfect”だ。

“雑誌に出てくるようなスーパーモデルじゃない。わたしはパーフェクトじゃない。でもそれでいい。わたしにとっては、パーフェクトだから”

わたしは泣いていた。
夢中で見ていたドラマにも、大好きな歌にも、前を向くためのメッセージがたくさん込められていた。それにすら気づかなかったなんて。
泣いて、泣いて、泣きに泣いて、今はもう涙も出ない。
でもそれでいい。涙で曇った視界で大切なものを見逃してしまうのはもう嫌だ。
前を向かないと。
こんなにすてきなパートナーに愛されていたのだから。
その思い出まで涙でぐちゃぐちゃに濡らしたくはない。
それよりこれからどうするかを考えたい。

いったんはダイエットを忘れて、食べ物はおいしくて体に良いものだと思えるようになろう。
そう言ったら友人が早速りゅうちぇるの動画を教えてくれた。

わたしは友人にも恵まれている。泣いたら頭を撫でてハグしてくれる友人に。
母に「戻ることになった」と連絡したら「こっちに来るまで、しっかり生きなさいよ」と励ましてくれた。
わたしは両親にも恵まれた。無償の愛を与えてくれる両親に。
これ以上何を求めるというのだろうか?

更新完了の通知を受けて、役所に障がい者手帳を取りに行った。
等級が3級から2級に上がっていた。それでも落ち込まなかった。
だって、昨日のわたしも、今日のわたしも、そして、明日のわたしもきっとパーフェクトだから。
だから堂々と歩くのだ。わたしのランウェイを。

【最後に】
このコラムに書かれているうつ病、摂食障害に関する見解はあくまで行田個人の経験に基づくものです。何かおかしいな、不安だな、と思われた方はまずは専門医の受診をおすすめします。
そこまで勇気が出ない、という方はチェックリストが載ったうつや摂食障害の本を探して読んでみてください。ただ、自己判断よりも病院にかかることがベターであることは言うまでもありません。病院を探すきっかけ作りとして、本を読んでください。

オススメの本を2冊ご紹介します。
『メンタルブロックを外して摂食障害を治す21日間プログラム』(安田真佐枝著/米良貴嗣監修/合同フォレスト/2020)
☆チェックリストで「わたし摂食障害だ!」と納得がいきました。

『ツレがうつになりまして。』(細川貂々著/幻冬舎文庫/2009)
☆あー、わたしもこう!わたし、うつだわ!と思えた本。天気が悪い日に延々と眠ってしまったりと、あるあるが描かれていて自分だけじゃないと安心しました。

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
立教大学 文学部 文学科 文芸・思想専修卒
在学中に一年間ロンドンに留学。
ストックフォト会社、美術館、出版社事務を経て、現在はうつ病との共生を目指して半療養中。自身の病気と、セクハラ被害を受けたことをきっかけに、女性のwellbeingを模索中。同時にジェンダー、セクシュアリティ、クィア、フェミニズムについて考える日々。
趣味は読書、観劇、『ル・ポールのドラァグ・レース』『Queer Eye』を見ること、海外セレブウォッチ、
ハムスターの世話(でも噛まれて泣いた)
最近のブームは韓国ドラマ&文学、アルゼンチンタンゴ。
笑顔で沼に沈没中。

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