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モテ実践録(20)「パイパン」問題

2021.05.19

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前回、そろそろ収入も増えたし制度もしっかりしているので、子どもを産むことを考え始めたと書いた。その途端に、精子提供をしてくれる(かもしれない)と言っていた海外の友人とは連絡がつかなくなったのだが、今は彼も仕事が忙しそうだし、後述の理由によってもあまり気にしていない。数日前、私は卵子凍結について説明を聞きにいき、凄腕占い師に出会ったときのような衝撃を受けたのです。

そもそも前回のコラムの更新後に、最近結婚した同い年の友人に会ったところ、自らは不妊治療をしているので「卵子凍結ができるなら今しておけ」と言われ、確かに精子をくれる(かも)と言っていた友人も日本に来られるまでには数年かかるかもしれないし、まだ退職金も少し残っていたので「そっか、卵子凍結するか」と軽い気持ちで、説明を聞きに行った。説明を聞く前は、卵子凍結をすれば、いつか受精卵を子宮に戻して自動的に妊娠できると思っていたのだが、実のところ、そんな単純な話ではなく、100万円近くをかけたとしても出産確率15%が関の山だそうだ。ただし、40代以降の妊娠可能性はグッと下がるので(これは女性だけのせいではなく、大体の場合において女性よりも年上の男性パートナーの精子の加齢も原因らしい)二人目の出産を含めて、少しでも可能性を手にしておくための選択と考えてもよいですよ、と教えてもらった。


とはいえ様々な話を聞いていて、精子バンク等もこの世には存在するので、お金さえあれば出産は可能なのだという感想を私は抱いた。採卵まではホルモン剤や手術などを含めて大変そうだけれども、それさえ終えておけば(可能性は限られているとしても)数年後に使いたくなった時に使うことができる。さらに説明の中で、40代以降の女性が出産する場合、精子提供者が30歳以下だと妊娠確率が3倍になるという学術研究結果を教えてもらい、説明してくれた方が「いろんな条件を課さずに、30歳以下で精子をくれるという、顔が嫌じゃない人を探せばいいですよ」と言うのを聞いて、私は、「あ、もう『自分に合う人』とか『自分を大切にしてくれる人』を探そうとしなくていいんだ」と肩の力が一気に抜けた。
精子提供者を探すとなれば、例えば「家庭を一緒に築けるか」など、さまざまな条件を課す必要はない、ただひたすらに精子提供をしてくれる30歳以下の人を探す(あるいは精子バンクを利用する)のみだと、すごくシンプルに思えた。なんだ、すごく簡単なことじゃないか。私にもできそうだ。友人が、現代美術家だったら面白がって精子提供してくれるんじゃないか、とさまざま話していたのでそれも面白いと考えていると、実は95年のヴェネティア・ビエンナーレでは、飴屋法水さんなどさまざまなアーティストが自らの精子を500円で販売する「パブリック・ザーメン」プロジェクトというのがあったと教えてもらった。いろんな可能性があるんだなとびっくりする。一方で私は大学院で反ナチスの亡命作家たちの研究をしていたので、敵だと思ってきた優生思想との関係でこれをどう考えるのかは、まだ自分の頭の中で整理がつかない。そして友人には、30歳以下の、まだ自分の人生について手応えのない男性が、自分の子孫がどこかにいるかもしれないと考えることは恐怖だとも言われた。全くその通りだ。
卵子凍結の話はここまで。今後、病院にも行くのでまた追ってご報告したいと思います。

さて、今回の本題は脱毛の話。脱毛の広告では、女の子がツルツルな腕や足を「チラ見せ」してそれを男性が振り返るようなものも多い。光脱毛が一般的になってきたのは私が大学生の頃だったけれども、私はモテとは縁のない学生生活を送っていたので、脱毛に通うとなると変に異性を意識していることを表明するようで気恥ずかしかった。なので、最初にお店に行ったのは20代後半に入ってからのこと。たまにしか剃らない、それでも面倒に感じる、足の毛だけをどうにかしたいと思い、通い始めた。

ところで私は小さい時、池の脇に住んでいて(しかも鯉養殖の池だったので、年に数回水抜きして鯉を収穫?するのだが、その時はトンビが鯉をさらうので、文字通り空から鯉がよく降ってきた)、そこは草はボウボウ、ヤブ蚊がとても多い家だった。私は生まれつき色が白く肌が弱いので、特に足には、その家を離れて15年近く経っても刺された痕が十数カ所も「根性焼き」のようにはっきりと残ってしまっていた。それが、足を光脱毛にかけるうちに、どんどんと痕が薄れ、綺麗な色になっていったのだ。脱毛よりもだんだんそれが主目的になっていき、今でも色素沈着は何箇所か残っているものの以前ほどは気にならなくなっている。

そもそも脇毛などは薄い方なので、足以外の脱毛にはさほど興味がなかったものの(腕の毛も、ドイツでは剃らないのが普通なので留学後はあまり気にならなくなった)、このところ、また脱毛に通い出している。
というのも、去年、友人がその良さを熱弁しているのを聞いて、陰毛を全て除去することに興味を持ったからだ。友人は、年上の人から「自分が介護される立場になったときのために、陰毛を永久脱毛しておかなきゃね」と聞かされて脱毛に通い、今ではツルツルなのだそうだ。最初は、他人に迷惑をかけないことを目的にした脱毛だったのが、「すごく、楽なんだよね」と、その快適性を力説していて、その場にいた他の友人も、「実は私も永久脱毛してパイパンなんだ。楽だよね〜」と語っていた。その後に友人何人からも「実は自分も」「私も」という話を次々と聞いて、周囲の人間に流されやすい私は、必要性と快適性の両方に興味を持って安い医療脱毛に申し込んでみた。

「エロいと思ってほしいからパイパンにしているけど、実際には自分がすごく快適」と話していたとある友人が言うには、彼女の周囲の独身女性のパイパン率は100%だと言う。「でもね、既婚の人は処理していないみたいなんだよね〜」と彼女は言う。ずっと以前にタレントのいとうあさこさんが、日本の女性の生涯未婚率は20%弱だというデータを前に「嘘? 私の周りは全員独身だよ?」と言っていたのをテレビで見て大いに共感して以来、私は「偏在」ということに気を配るようになった。つまりこの場合、私の周りではいわゆるパイパンの処理をしている人の割合はかなり高いらしいけれども、世間一般としてはどうなのかはわからないなと思ったのだ。

ということで、Twitterで24時間限定でアンケートを実施した。145票も投票をいただきどうもありがとうございました! その結果、陰毛すべてを医療用・光脱毛で処理している人は17.2%(25人)、隠毛の一部を除去しているのは24.8%、陰毛以外の箇所(手足・脇など)を脱毛したことがある人は20.7%、医療用・光脱毛共に経験なしという人は37.2%ということが分かった。この結果を目にした九州在住のお友達からは、「脱毛したことがない人がこんなにいるとは」と連絡が来たので、彼女の周りでは脱毛している人が多いのだろう。陰毛の脱毛をしている人にとっては「こんなに(約58%)陰毛の脱毛をしていない人がいるんだ」という結果かもしれないが、反対に、40%が一部であれ全部であれ陰毛の処理をしているというのは、そうではない人にとっては驚くべき結果かもしれない。(友人にはブラジリアン・ワックス派もいるので、正確な結果はこのアンケートだけではわからないけれど。)

ところで私は、カナで書かれた恋愛・性関係の言葉が苦手で、「コンドーム」と保健体育のテストに書けずに職員室に呼び出された話は前にも書いたけれど、キス、セックス……等々は、パソコンに打ち込んでいる現在でもなんだか恥ずかしくなってしまう言葉である。上に書いた「パイパン」などは、たぶん私の口を音声として通ることは一生ないだろうと思うけれど、「そもそもこれって、何語だろう?」と調べてみると、麻雀で無地の「白牌」から来たそうだ。ってことは男性由来の言葉なんですかね? 女性の側から、毛がない状態は何と言うのだろうか……などと考えて行くと、なかなか難しいんです、これが。ドイツ語では陰毛をSchamhaar(恥毛)と言い、パイパンはSchamhaarlosigkeit(恥毛がない状態)と言うらしい(辞書に載っていた)のだけれど、そもそも自分の身体に生えている毛を「恥」と言うのは抵抗がある。あえて言うなら「無陰毛状態」かもしれない。

脱毛の契約のために一度某美容外科を訪問し、2度目には自分で全て(お尻を含めて)毛を処理した状態で処置台に乗る。電子シェーバーを買ったものの、お尻を含めた陰毛を自分では全部うまく剃ることができないし、どこまで毛が生えているのかこれまでよく理解していなかった。私は数年前から、ぶっきらぼうだけれども待ち時間が短いのが利点の婦人科に検診で通っていて、そこはサーファーのように日焼けした男性医師で、かつ、部屋の端っこの方の簡単な衝立の奥で「はい、ズボンとパンツ脱いで」というような古い病院なので、あくまで事務処理のように下半身裸(スッポンポン)で診療台のような場所にゴロンと寝転がることに対する抵抗はほぼ消えかかっている。友人は陰毛の医療脱毛の際「痛すぎて笑気ガスを吸っている」と言っていたので、私は「自分はマゾがかっているから大丈夫かな」と思いながらも台の上で身体に力が入ってしまった。目を閉じているうちに、1箇所1箇所丁寧にレーザーが当てられる。確かにバチっとはするけれども耐えられないほどの痛みではない。30分もせずに終了。そして2週間ほど経つと毛が面白いほどポロポロと抜けてきて、最後には一時的に「無陰毛状態」になった。

すると確かに、友人たちが声を合わせて「楽だ」と言っていた意味がわかったのである。生理の時はもちろん(私はタンポン派なので広く血がつくようなことはないけれども、それでも)段違いであるし、普段にパンツと擦れている毛がいかに邪魔なのか、言葉にするなら「すうすう」というような快適さに夢中になった。その後、肌が荒れたので毛は生やしっぱなしになり、2度目の脱毛はこれからだけれども、いやあこれはいいですね、何よりもともかく自分のために良き、と思うようになった。
前述の「エロいと思ってほしいから」と脱毛をしている友人はもう何度も処理を終え、「無陰毛状態」が長く続いているらしい。それでモテるのかな? 効果はわからないけれども、自分にとって楽であれば、それだけでとても良い選択だと思える。男性側からの物の見方を内面化したり、彼らの見方で消費されたり、消費されるような言葉を自分で使うのではなく、自分の選択として快適な方が選べるのならば、それはとても良いことなのだろうと。

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(沼ZINE主宰)

沼ZINE主宰。https://numazine.themedia.jp

大学4年生の夏、内定が出ず定員割れの交換留学に申し込む。翌年、全く話せない状態でドイツへ向かい、毎日サービスデーのバーを回る「居酒屋ドイツ語」と呼ばれる勉強法で語学を習得。帰国後、大学院を経て都内の出版社に勤務しながらドイツ語翻訳を行う。2018年、友人とウェブマガジン「沼ZINE」を開始。趣味は映画・演劇・美術鑑賞、へっぽこ旅。

翻訳したドイツ語コミック「マッドジャーマンズ 」が第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品、第4回日本翻訳大賞二次選考対象作品に。

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