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モテ実践録(24)緊縛バーとコミューン

2021.11.12

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前回の更新の後で、常連の友人に誘われて緊縛バーに行った。お店の半分は普通のバーになっていて、残りの半分のところに畳敷きの座敷があり、上に梁がわたしてある。常連の友人が先に入店し、私ともう一人の友人が後から行くと、常連の友人はちょうど吊るされてアンアン喘いでいた。しかし、あまりに普段の生活とは別の空間であったため、私は「そうか」と妙に納得して空いている席に座り、その様子を眺めていた。

まもなく、縄を解かれた友人が私たちのほうへ戻ってきて、お店のルールを説明してくれた。入場料は男性と女性で異なる。縛るほうも、縛られるほうもお酒を飲んではいけない。そしてワイヤーの入ったブラジャーは危険なので外す。お店にはコスプレ風なものも含めたくさんの衣装があり、友人は簡単な浴衣のようなものを着ていた。真似して着替えた頃に、常連の友人が「私の師匠にお願いしておいたから」と、私も縛られることになった。

下から上から、繊細に編まれていく縄は、腰のところで重心がくるようになっている。編み込みのように胸から足まではりめぐらされた後で、足につながった縄が高く吊り上げられ、最初は開脚のような形、そして最後にはエビフライのように全身逆さになった。しかし、太ももや腰に重さがかかっているので、全く痛くない。友人がアンアン言っていたのとは対照的に「ふーん、こんな感じなんですねー」などと言っている間に体験は終了した。床に足が戻り、縄が解かれると、一気に暖かい血液が流れ、それは気持ちよかった。

知らない人に他のお客さんの前で縛られ、吊られるという体験は興味深かったし、同時に、途中で痛みにギブアップしてしまった同行した友人とは正反対に吊るされることへの耐性はあったものの、緊縛という行為自体に興奮を掻き立てられることは私の場合はなさそうだ。そこで私は、やっぱり相手との関係性こそが自分にとっては重要なのだ、と悟った。

帰り際、常連の友人が「もしこれから一人で来ることがあったら」とアドバイスをくれた。「絶対に、お店以外で会っちゃダメ。いい人に見えても危険なことがあるから」。確かに、他の人の目がある店内と違って、緊縛という、身体にダメージを与えるかもしれない行為に対して「ここまではOK/ここからは嫌だ」という相互の同意が必ず守られるとは限らない。人間関係を抜きにした緊縛にそれほど興奮せず、それでも緊縛をさらに深めようというまでにはハマらず、少なくともこれまでは再訪していない。

私は最近、とある漫画がきっかけで関係性について考え直していた。今さら私が紹介するまでもないけれども、インターネットでも連載している「作りたい女と食べたい女」という大人気コミックだ。少食だけれどもボリューミーな料理を作るのが好きな主人公が、同じマンションに住む、同じく一人暮らしで大食漢の女性(春日さん)と知り合い、二人で食事をするようになるというストーリー。(ネタバレになるけれど)第16話で主人公は、学生時代からの恋愛バイアスに対する違和感などを思い出し、春日さんと一緒にいたいという気持ちについて考えを突き詰める中で、自分がレズビアンなのだと思い至る。
この話を(電車で)読んで、私はともかく心が揺り動かされて涙が出た。そして、その心の動きについて考えているうちに、レズビアン=女性の身体に興奮する人なのだろうという自分の雑な理解に気がつくこととなった。私がこれまでにわずか・微々・少数機会ながら経験したヘテロの関係性でも、身体に興奮することもあれば、ただ単に、一緒にいる時間が心地よいということがあったではないか。それを私は、「私は女性器を舐めたいとは思わないから、レズビアンじゃないな」という風にしか考えていなかった。それは偏見であったと思う。もっとたくさん一緒にいたい、相手の考え方を知りたい、一緒にいると楽しい。そんな、性欲からはスタートしない関係性の希求という点では、私も結果的にレズビアンというカテゴライズに当てはまる可能性はたぶんあるし、他のカテゴリーに当てはまることもあるだろう。大事なのは相手との関係性だと思い至ったのである。

前から、将来的に一人で妊娠することを計画する中で、同じように妊娠を考えている女性の友人(緊縛バーに行った二人とは別人である)との同居を夢見ていたが、先週になって、良い物件が見つかったと連絡があった。とんでもなく古いことを除けば(そしてそれが引っかかってはいるのだけれど)、立地や広さ、間取りなど、どれもがとてもユニークで面白い。いろんなことに関心があり、知識があって、アクティブな彼女と暮らせるなんて、夢みたいだ。二人でその場所を大事にして、コミューン的に空間を開放したい。ただし、現在住んでいる家が、都内で2部屋、システムキッチン、風呂トイレ別、洗面台付き、日当たり良好で月7万円なので、その快適さを手放してよいものかどうか、とても迷っている。通勤時間と家賃だけで決め、思い入れはなかったはずのこの地域に、10年近く住んですっかり情が移ってしまった。
しかし、いつまで先延ばしにできるのか。仕事は契約社員になったので、契約は残り約1年。その後に就職先を決めて、また慣れるまで数年……と待てば、ただでさえ経血が減っているのを恐ろしいほどに実感しているのに、妊娠だってできないだろう(思い出すと、私は初潮が10歳で早すぎたのだと思う)。そして、34歳になった今でも踏みとどまるのに、例えば2年後の私がさらに思い切った決断ができるとは思えない。いつになったら良きタイミングが訪れるのか。待っていれば一生こない気がする。

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や

(沼ZINE主宰)

沼ZINE主宰。https://numazine.themedia.jp

大学4年生の夏、内定が出ず定員割れの交換留学に申し込む。翌年、全く話せない状態でドイツへ向かい、毎日サービスデーのバーを回る「居酒屋ドイツ語」と呼ばれる勉強法で語学を習得。帰国後、大学院を経て都内の出版社に勤務しながらドイツ語翻訳を行う。2018年、友人とウェブマガジン「沼ZINE」を開始。趣味は映画・演劇・美術鑑賞、へっぽこ旅。

翻訳したドイツ語コミック「マッドジャーマンズ 」が第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品、第4回日本翻訳大賞二次選考対象作品に。

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