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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編「金持ちの町のアイスクリーム」

中沢あき2022.08.16

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ドイツの学校の夏休みは6週間。しかし保育園の休みはありがたいことに3週間と短めだ。その夏休みの終わり、義姉一家を訪ねてミュンヘンへ遊びに行った。4年ぶり、しかも夏に訪れるのは私も初めて。国内外からの観光客や若者で賑わうミュンヘンの街並みは、さすがかつてのバイエルン王国の栄華が残る美しさ。白い石造りと金色の装飾の堂々たる建物が並ぶ通りを歩きながら、久しぶりに旅行気分にひたることができた。一応我が町も人口百万人を超える大都市なのだけど、なんというかこの華やかさはないよなあ、とちょっと気持ちが上がる。

そんな浮きだった気持ちを鎮めて、いや沈めてくれたのは、アイスクリームショップに入った時のことだった。その日は30度を超える気温の夏日。蒸し暑さはなくとも日差しは強く、もうすぐ家に帰るとはいえ、お腹が空いたー、疲れたーとぐずる子どもと歩いていたら、アイスクリームのカップを持って道端にたむろする人々が目の前に。あ! ここのアイス屋さんで食べていこう! と家族で揃って店内へ。なかなかの混み合い具合の店内のカウンターに進んで、アイスを選ぶ前に夫が1玉いくら? と訊いたら、2ユーロです!

その回答に、夫婦揃ってちょっと怯んだ。我が街よりも断然高い……。このところの物価上昇でアイスの値段も今年は上がった。でも我が街では1.50ユーロのアイス屋さんの話をして、高い! と友人が騒ぐくらいの程度である。このお値段、さすが金持ちの街だな……。たぶん夫は2玉いこうと思っていたに違いないが、彼も1玉になった。ま、でもこれがミュンヘン価格なのよねと思っていたら、その近辺の大学に通う夫の姪っ子いわく「その近くのもう一軒のほうがオススメなんだけど、そこは2.20ユーロよ」

あとで調べてみたら、現在ドイツ全国のアイスクリームの値段の平均は1玉1.40ユーロでミュンヘンの平均が2.10ユーロ。我が街は1.20〜1.50ユーロが相場なんだそうだ。うーむ、これを貧富の差と言っていいかは微妙だが、街によってこんなに差があるものなのか。

もっとも2ユーロのアイスクリームはボリュームもたっぷり、お味も美味しくて満足だったからまあいいか、とお腹も心も落ち着いたので、そのまま姪っ子の通う美大の学生展を見に行き「ワタシを見て!」と主張するアート作品の数々にグッタリ疲れて帰ろうと正面玄関に向かったら、ベビーカーを押しながら一人でその重いガラス戸を開けて入ってこようとしているお母さんがいた。私があわてて反対側からそのガラス戸を引き開けると、そのお母さんは私に一瞬チラッと目をやっただけであとはそのままベビーカーを押して入ってきて立ち去っていった。なんだか変な感じがするまま外に出た私に夫が言った。「あの人、何も言わなかったね」

そう、私だったら、いや私の知る「普通」だったら、ここであのお母さんは一言お礼を言っていたはずだ。が、上品なサマードレスを着たオシャレできれいなあのお母さんは、まるで私がいないかのように、晴れやかな顔で大学の館内を見回しながら通り過ぎていった。えーと、もしかしたらこの学生展にとっても来たくて嬉しくて挨拶を忘れちゃったのかしら? などと考えても見たが、うーん、まただ、このモヤモヤ感。

ミュンヘンがとても美しい街でも、私がどうしても好きになれない理由を再確認してしまった感じ。新旧の壮大な建築が立ち並び、オシャレでトレンド感たっぷりまたは高級なカフェやレストランやショップが揃い、新宿の伊勢丹を思い出すような品揃えのデパート(他の町では見たことありません)もあり、文化も経済も豊かな町であるのに住みたいと思ったことが一度もない。観光するにはいいけど、自分が心地よく住むことが思い描けない街。もちろん親切な人たちとも出会うし、整ったインフラの便利さも感じるし。ここで商売でもして成功して、お金があれば暮らすのは楽しいのかもしれない。でもなんだろう、訪れるたびに毎回、自分が外国人であること、裕福な層ではないことに「わざわざ」気づかされるのだ。面と向かった直接的な差別ではないが、無意識的な線引き。お金のある生活を送る人たちの意識が、自分たちの範囲外には向かないという無意識かな。もちろんそこには悪気はまったくない。でも自分の世界とは違う世界の存在を無意識的に無視する、つまり気づかないような感じだ。

この街にだってお金のない人はたくさんいるよ、と夫は言うが、それならなおさら、貧富の差は激しいだろうなと思う。もちろんお金のある人はその分税金を多く収め、その税金でお金のない人たちの暮らしが支えられる、というのは合理的なシステムだ。けれど、そのシステムすらなんだか嫌なものに思えてしまうような感じを覚えた。
ミュンヘンに滞在中、高めの値段のカフェやパン屋を見るたびに、頭がそんな考えに囚われていた。

もっとも今は、自分の街に戻ってきてもスーパーに行けば相変わらずの物価高。数カ月前まで2.29ユーロだったオーガニックバターの値段は1ユーロも値上がりし、どの商品もだいたい30〜40%以上値上がりしている。これから連邦政府より、学生や年金受給者を除いた国民に1人当たり300ユーロのエネルギー補助金が支払われることになっているのだが、年末のエネルギー費の精算で1家庭につき1000ユーロ近く、つまり十数万円くらいの追加徴収金が課されると言われている状況では、焼石に水だ。でも、お金持ちの層にいる政治家たちには庶民のことがちゃんと見えていないみたいだ。あのお母さんのように。



写真:©️: Aki Nakazawa
ミュンヘンの悪口みたいになってしまったけど、いやいや、素敵な街ではありました。アルプスから下りてくる清流のイザール川やその支流が街のあちこちに流れていて、街中の公園の川へとたくさんの人が水着でボンボン飛び込んだり泳いだり、子どもたちも水遊びをしたりしてるのを見て、初めてミュンヘンを羨ましく思ったかも。この何週間もまとまった雨が降らないドイツはあちこちが干上がった状態で、この街の豊かな水流が余計に素敵に思えたのですが、考えればアルプスの氷河が溶け出した水が流れてきているとも言えるわけで……。物価高に干ばつにと、戦争なんてやっている場合じゃないんですけどね!

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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