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幸せな毒娘 Vol.22 地下アイドル生存期①

JayooByul2023.05.12

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私は日本で地下アイドルの生活をしたことがあります。地下アイドルの中でも研究生という身分でしたし、事務所の怪しさに気づきすぐ辞めたので実際の活動期間はそんな長くはありませんでしたが、その短いあいだの経験は私にとって忘れられない悪夢のような時間でした。

大学2、3年のころの私はいろんなオーディションを受けていました。日本で声優さんになるのが夢ではありましたが、大学に通いながら専門学校にも通うような経済的な余裕がなかったことと、もとをたどれば声優さんの「歌」にほれていたので、私もそんな「誰かに希望が届けられる歌」が歌えれば声優さんじゃなくてもいいと妥協もありました。それからオーディション雑誌を買いあさると、だいたいのオーディションは女性の年齢に10代から20代前半までのリミットがあったので、けっこう焦っていたのです。

それと日本ではアイドルやモデルさんが演技をしたり、声優になったりと、いろんな領域を網羅していたので、取りあえず芸能界に入ってさえしまえば、のちのち自分のやりたいことが実現できるのではないかという、漠然とした期待もありました。

実は今日話そうとしている事務所以外にも受かったオーディションはあって、その事務所の指示だったり、個人的に学びたかったりで、演技や歌の教室に何カ所か通ったこともあるのですが、それは今日の話とは関係がないことなので省きます。

その地下アイドル事務所の社長との出会いは、あるオーディション雑誌からでした。当時は社会経験も少なく、日本という社会にもあまり詳しくなかったため、雑誌に載るくらいの事務所だったらまだ信用できるところかも? というほわーんとした考えがありました。

最初はアイドルとして応募をしたわけではなく、芸能事務所が主催する一般人を対象としたモデルとしてのバイトでした。前の事務所に所属しながら、広告サイトや資料などに載るようなモデルのバイトをしたことがあったので、まずは芸能界らしきことをしながら生活費も稼ぎ、ほかのオーディションも受けていくという計画でした。

面接は渋谷のあるファミレスで行われました。その社長の印象は明らかに危なそうな人物に見えて、まったくよくありませんでした。でも人を外見で差別しちゃいけないという気持ちと、芸能関係の人は個性的なのかな? という安易な考えがあったので、面接を続けたのです。

すると彼は急に私にこんなことを提案してきました。

「興味あるのはモデルだけ?  アイドルには興味ないの?」

私は思わず、「私もう22歳なのにアイドルになれるんですか?!」と答えてしまったのを覚えています。今もそうですが、アイドルからほかの分野へ乗り換えることは簡単に見えたので、もしアイドルになれるチャンスが与えられるのなら、私の夢への道も近づくと、そう思ったからでした。もし夢がかなえられないとしても、アイドルとして活動をすればとにかく歌うことだけはできる。それも悪くない選択だと思いました。

彼は自分がマネジメントしているグループは実力を重視しているから年齢は関係ないと、私と同い年のメンバーもいれば年上の女の子も入っているからそれは問題にならないと説明しました。彼が見せてくれたグループは、たしかにテレビで見てきたほかのアイドルと比べたらダンスに力を入れていて、とてもかっこよかったです。

続けて説明された収入清算に関してですが、事務所がブログだったりライブだったりと、仕事を持ってきて宣伝活動を担当してくれるので、個人が得た収入の3割をもらうことになると言いました。それにまだ小さい事務所だから、宣材写真は自前で、レッスン費用は月々2万5000円かかるけど、普通に活動をしてればそれくらいは余裕で稼げるから実際払う金額はないと説明されました。

彼の印象があまりにもインチキだったので、100%信用はできませんでしたが、望むものがある人間って愚かなものですね。正直なところ、ウソだとしても1%でも本当なら……夢がかなえられるかもしれないという、夢への熱望が強すぎて、不安だけど信じてみようという気持ちが勝ってしまいました。

3割ってたいして多くない金額だし、本当に詐欺なら3割とかじゃなくて、もっとおいしい話で誘うのではないかという、当時の私なりの浅はかな計算がはじまったのです。ひどい目にあったとしても、清算をしてもらえない程度なのではないかなぁと、そんな自分なりの最悪のシナリオを作ったりもしてみました。それでも私は、「何が何であれ、歌が歌えるのなら挑戦してみる価値はある」という結論に至ったのです。

その結論に説得力を持たせたのは、社長の「素直さ(に見せかけた誘導)」でした。真っ先に水着撮影のことを口にしてきたのです。アイドルの活動となると、モデルの仕事も兼業になるから水着姿で写真を撮ることもあると話されました。韓国ではアイドルが普段から水着姿で放送に登場することはあり得ない話ですが、コンビニや本屋などで普段から肌を露出した女性たちの雑誌がズラリと並んでいる日本ならではの文化だろうなと、多様性の一種として思っていたーーガスライティングされていたところでした。

それでもやっぱり不安や嫌気が差したので、「私は外国人の身分だから、変なのを撮ったら国際法に引っ掛かります」(*注1)と説明しました。ウソでもなかったし、自分を最低限守るための手段でした。すると彼は笑いながら、水着の撮影はまったくいやらしいものではなく、テレビに出てくるアイドルたちみたいに、自然な感じでしか撮らないと答えたのです。むしろ変な写真を残してしまうとアイドルの活動が続けられないんだとか。それを聞き、私はバカみたいに安心してしまいました。そうだよね、処女性が強要される日本のアイドルなんだから、下手に変なことはされないよね、と思ってしまったのです。

(*注1)韓国ではAVは違法で、日本で外国人が風俗やそういった仕事に就くのも違法行為になります

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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