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ひとりでカナダ大学生やりなおし~アラフォーの挑戦 Vol.11「バービー」原爆ミームから考えたこと

橘さざんか2023.08.12

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10か月のカナダ留学を終え、7月末日本に帰国しました。あらかじめオーダーしていた空港タクシーが来ない、空港にメガネを5本忘れて帰国する(まだカナダの空港の忘れ物室にあります)などのトラブルがありましたが、今また日本で元気に元の生活を取り戻しつつあります。

日本でももうすぐ公開、かつ原爆ミームで前評判に傷のついた「バービー」ですが、私は帰国前に一足早くカナダで見に行ってきました。バービーのことを「セクシーすぎて危険だ、原爆のようだ」と表現する場面があったようなのですが、私は字幕を追うのに必死で頭の中の印象には残っていませんでした。しかし日本に帰ってから知った原爆ミームは本当に悲しいもので、まるで、てっきり通じ合っていたと思っていた外国人の友達に裏切られたような気分でした。この話から派生して3つのことを思い出しました。
まず一つは、数年前に私がフランス語を習っていた時のこと。フランスの映画を字幕なしで見て、その後先生からスクリプトをもらい、内容を確認するという授業形式をとっていました。授業と言ってもおじいちゃんのような先生と1対1で、授業から逸れた話をいくらでもしていい気軽なレッスンでした。その時扱っていたのは「最高の花嫁」という映画で、あらすじは以下のようでした

ヴェルヌイユ家には4人の娘がおり、上3人が結婚したのはそれぞれイスラム教徒、ユダヤ教徒、中国系の男だった。敬虔なカトリック教徒ドゴール主義者でもある父クロードはこれに頭を悩ませ、家族全員で集まった食事会でも人種差別的な言動を繰り返していた。クロードの怒りとは裏腹に、妻のマリーや娘、その婿達は互いに親交を深めてゆく。
Wikipediaより

異人種間結婚という社会的テーマに真っ向から挑んだコメディで、フランスでは大変ヒットしたということですがその先生が言うには「いまだに異人種間結婚がタブーすぎて公開されなかった国がある」とのことでした。本当かどうかはわかりません。とにかく、その映画のなかで4姉妹の上三人が異人種・異教徒結婚をしたあげく、一番下の妹が黒人と結婚しようとするところから始まる話なのです。その中で、白人の妻と結婚したイスラム教徒の夫のセリフにこんなものがありました。
「愛する娘3人が異教徒と結婚したあげく一番下の妹が黒人と結婚するなんて、彼(父クロード)からしたらまるでフクシマだ!」
泣きっ面に蜂のインテンスバージョンとしてフクシマを挙げたのでしょうけれど、私から見ると福島の災害は望まれない結婚と同列にできるものではなく、強い違和感を覚えました。しかしそれをフランス人の先生に話しても「私たちはフクシマに強い同情を持っている。だからこそこの表現が生まれたのだ、差別ではない!」とのことでまったく意見がかみ合いませんでした。
確かに日本人は「不謹慎」といって、人の不幸や災害を一切口にしなくなるきらいはありますし、それがもしかしたら日本の閉塞感や議論しない習慣、社会風刺コメディが生まれない背景などにつながっているのかもしれません。だとしても映画のこのジョークは私には受け入れられないものでした。
次に、1年前に私が原爆にアメリカ人がつけていたコードネームを知ったときのことです。ファットマンとリトルボーイ・・・。大量の人をあのように殺す兵器につけられたあだ名としてあまりにポップで、グロテスクに感じました。まるでスタンリー・キューブリックの映画そのもののセンスで、それが現実であることがショックでした。
最後は一番最近の話なのですが、ボーイフレンドが一人で映画「オッペンハイマー」を見に行った後その感想を話してくれていたときのことです。彼は原爆のことを「The atomic bombs those need not to be dropped,~」と話していて、日本語訳すると「投下する必要のなかった原子爆弾」と言ったのですが・・・・「必要ない」ではないだろうと。Those must not to be dropped、つまり「投下してはいけなかった原子爆弾」と言ってほしかったと、数日経ってから(日本に帰ってから)思いました。彼個人の問題ではなく、欧米の教育、というより歴史観の問題なのだとわかってはいますが。アメリカ人は「第二次世界大戦を終わらせるためには原爆を落とすしかなかった。それにより本土決戦になるよりは少ない死者で戦争を終わらせることができた」と歴史の授業で教えられると聞きますが、それに近い歴史観を、悲しいけれど、日本以外の多くの国が持っているのではないかと思いました。

とまぁ、原爆ミームは蓋をしていた私のモヤモヤ(というより懊悩に近い)を呼び覚ましましたが、映画「バービー」自体はポップでフェミニズムでシャレていてよかったです。何よりいいと思った点が、家父長制などのイデオロギーは教育されたものであり、解除可能であるということを明確にしていること。それによりこの映画が風通しの良い、ポジティブなメッセージの映画になっていると思いました。

9月から国内留学ということで九州に引っ越し、この連載のnew chapterが始まります。これからもよろしくお願いします!

写真©Tachibana Sazanka


お気に入りの道でした。


夏になると、今まで何もなかったところがいきなりビアガーデンのパティオになったりしていました。


一家に一本はあるホットソース。買って帰りました。

 

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