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寂聴さんが出家した理由・・・世界メノポーズデーに向けて、今しっかりと考えたいこと。

北原みのり2023.10.03

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ちょうど8年前のこと。友人の編集者が瀬戸内寂聴さんのところに私を連れていってくれたことがありました。
私は寂聴さんに聞きたいことが二つありました。
一つは、神近市子さんてどんな人でした?(市子推しとしては聞かずにはいられません)
もう一つは、なぜ出家したのですか?

寂聴さんは、どちらも簡潔に答えてくれたのでした。
神近市子さんは?
「口紅をしっかりとひく人だった」
出家した理由は?
「更年期だったんだと思う」

もう、すっごく、明快ですよね!!
激しく頷き、腹を抱えて大笑いしたものです。

寂聴さんが出家されたのは51歳。もちろん出家の背景には色々色々色々あったのは言うまでもありません。ただ「更年期だったから」と、寂聴さんが反射神経的に答えて下さったことって実は真実・・・なのではないかと思うのです。ええ私も来月で53歳。まさに更年期まっさかり、出家したい気持ちをギリギリ生きてるお年頃です。

人生それなりに経験を積んできた。
不幸の味も舐めてきた。
何を幸福に感じるかも理解している。
生きる技術も重ねてきたお年頃。
それでもなぜかこの体調の変化には今までの知恵だけでは追いつかない!
それが更年期。

「世界メノポーズデー」というのがあるそうです。10月18日です。更年期(メノポーズ)を通して女性の健康について考える日とされ、世界各国で様々なイベントが行われます。
良い時代になったな・・・としみじみ。
だって。「更年期」という言葉って、20年くらい前までは、中高年女性に向けた嘲笑の言葉として使われることが多かったですよね。それが今は、中高年女性の健康を考える大切なキーワードとして語られているのですから。とはいえ、この時期の身体の変化や現実について、女性たちが学ぶ機会は少ないのも事実。

私自身、更年期といえばホットフラッシュくらいしか知らず、それは閉経した後に起きるものと思い込んでいた時期が長かったです。

45歳の時だったか、耳鳴りと不眠に苦しんだことがありました。更年期症状だったのだと思うのですが、耳鳴りを漢方医に相談したところ「更年期かもしれない。ホルモンの影響かも」と言われた私は激しく抵抗したのでした。「いえ更年期じゃありません! 私は定期的に生理があります!」と。更年期と思われることがイヤだったのだと思います。エイジズムに反対! と正しいことは簡単に言えますが、自分の中にも老化への恐怖があったということでしょう。でもまぁもちろん、40代であれば閉経していなくても更年期世代なのです。

もしかしたら私のように、「私は更年期ではない。まだそうじゃない」と考える更年期まっさかりの人、実は多いんじゃないかなと思います。
先日も50歳の女性が「もう少ししたら更年期になる」と言っていたのでよく聞くと、「生理が終わってからが更年期」と思っていることが分かりました。また、「母親が更年期にならなかったから私もない」と言い切る女性もいます。「ホットフラッシュがないから更年期じゃない」と考えている人も少なくないようです。

でも、更年期についての研究が進むなかで分かっているのは、更年期とは誰もが加齢する段階で通る道、それはもう40代からフツーに起きること、ということです。40歳を過ぎるころから女の身体を生きている以上エストロゲンが激減する、テストステロンも激減する、という真実です。そして女の体はこのホルモンにかなり影響をされている。そのホルモンの影響を想定していた以上に、はぁああああああああああああこういうことだったのねー! と世界の真理を知るかのように突きつけられるのが、更年期、という人生のステージなのです。

具体的には・・・

生理が不順になるよ。
膣が乾くよ。濡れないよ。
ほてることもあるよ。
悪寒したり、寝汗をかくよ。
眠れないよ。
不安だよ。
物忘れがひどくなるし、気分の変化が激しくなるし。
背中とお腹と肩に肉がついて、なかなか落ちない。
薄毛になるし、肌かさつくし。
乳房は、縮む。

まぁ、色々おきます。そんなこと起きてない! と感じている人もいますが、実際は辛いことに慣れ過ぎていて「我慢している」という状況かもしれません。

私の場合は耳鳴りからはじまり、悲しい気分に支配されることが増えました。駄目な政治とか、日本のミソジニーとか、そういう外的要因ももちろんありながら、落ち込みや不安が強くなった。さらに膣も乾くし、骨盤底筋も緩んできたのも実感します。漏れちゃったりね。あと忘れっぽくなったりとか。・・・というと、「忘れっぽいのは昔からだろ」と言われるのですが、いいえ更年期のせいですから!!

あーん、いいことないじゃん! と元気なくなるような気もしますが、この更年期が過ぎたら華麗なる老化時期が待っているわけです。だからこそ女の身体で生まれたこの人生、この大変革期を丁寧に通りぬけられたら、きっとその後も老化も楽になるだろうと楽観的に考えたい。で、楽観的に考えるだけではどうしようもないので、具体的なこと、色々してます。

まずHRT治療を受けるようにし(婦人科に通うことが増えました)、大豆など女性ホルモンを積極的に取るようになどしています。デリケートゾーンケア用品は必需品として使っているし、代謝が落ちているので食生活も気をつけるように自制するようになりました。そうそう、苦手な運動だってしています。それがどのくらい更年期ケアになっているのかは実証はできないのですが、それでも、様々なお姉さんたちが通ってきた道、先輩たちに更年期の過ごし方を聴きながら、彼女たちのアドバイスを最大限採り入れて自分の身体で実検している最中です。
もしこういうケアを一切せず、更年期に関する情報もあまりなく、ただ「これは誰もが通る自然現象」と我慢していたら・・・私はこの時期をちゃんと乗りこえられるのか自信がありません。寂聴さんの更年期がどれほど大変だったか・・・HRT治療もなく、情報もなく、様々なフェムケア用品もない時代に、更年期を女性たちがが受け入れ乗りこえるのはどれだけ大変なことだったのか想像を絶します。

男性中心の社会で、女性の身体はずっと無視されてきました。
医学の中心は男性身体。
女性の身体が中心に考えられた医学はありませんでした。
女性ホルモンについての研究も長年されてきませんでした。
例えば未だに、男性の19%しか体験しない勃起不全=EDに関する研究は、女性の90%が体験するPMSに関する研究よりも5倍も多く行われている現実があります。
更年期について、私たちは知らないこともたくさんあります。
だからこそ、メノポーズについて語ることは、私たちの身体を知ること。そして人生の後半をどう生きるかを実践することなのだと思う。

10月18日は世界メノポーズデーです。さてここでお知らせです。 ラブピースクラブでは10月18日の世界メノポーズデーに向けて40代~50代の1000人の女性にアンケートをとりました。とても貴重な声が集まったと思います。近日中にこのアンケート結果についてご報告しますね! またメノポーズに今苦しんでいる方、準備したい方に向けての特集をラブピのオンラインと、ラフォーレ原宿のお店でもしています。いつもより少しオトクな金額でメノポーズケアグッズが購入できるので、この機会にぜひ試してください。

そしてこれは私からのお願い。40代~のメノポーズ世代の皆さんと、もっともっと情報共有していきたいです。メノポーズの体験談や、相談、悩み事など、ラブピースクラブにお寄せ下さい。ラブピも更年期世代に向けてちゃんと情報発信していきたいです。ぜひご連絡を下さいね!

HRT治療があったら寂聴さんは出家していたのかどうか・・・なんてことを想像しながら、更年期の過ごし方のユニークさこそ、女の人生の多様さかもしれません。そんな話、もっともっとしていきたいですね。

世界メノポーズデーの特集はコチラから!
そうそう、寂聴さんに神近市子の話を聴いてから、私は口紅を持ち歩く女になりましたよ。はい、影響受けやすいのです、かっこいい女にね!

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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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