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自衛隊オフィシャルマガジン、その名も「MAMOR(マモル)」

牧野雅子2016.02.22

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このコラムで取り上げるのにうってつけの雑誌、その名もMAMOR(マモル)。防衛省が編集協力した、自衛隊オフィシャルマガジンだ。防衛省のHPによると、「毎月、日本の防衛に関する旬な特集や、自衛隊の基礎知識、日本各地に展開する部隊の活動紹介、装備品の紹介などを、わかりやすい記事と、迫力満点の写真で提供しています」。ニッポンをマモルくんたちの情報誌と言ったらいいのかな。

2007年の創刊から、誌面には、自衛隊の制服に身を包んだ女性タレントが登場する。表紙は彼女たちの敬礼姿、グラビアタイトルは「防人たちの『女神』」。「防人」であるマモルくんたちの「女神」として、制服姿の女性タレントが笑顔を振りまく。
「女神」は、自衛官への憧れの気持ちと、制服姿で敬礼をした感想を「こうした基本的な身のこなしや気持ちが災害救助などの活動で発揮されるんですね」と語る。自衛隊は災害救助や縁の下の力持ち的な重要な任務を担っているのだというイメージが、「女神」のインタビューを通して伝えられ、彼女たちの言葉をそのまま受け止めるように読者は促される。
そういえば、マッチョな組織の代表である警察も、キャンペーンでは、女性タレントを一日署長に任命して、制服を着せたりしますね。女性割合が低い組織なのに、広報には女性をバンバン使うっていうのも、同じ。ちなみに、自衛官の女性割合は6%に満たないんだそうだ。

2016年3月号は、「発表!マモル敬礼大賞 2015年の表紙を飾った女神たちから選ぶ」と、敬礼を特集。防衛省のHPに掲載された編集後記には、「マモルでは、毎号、表紙でタレントさんたちが敬礼をしていますが、2015年に掲載されたタレントさんたちの中で、誰の敬礼が一番正しい自衛隊式敬礼か、を審査した『敬礼大賞』も発表しています」とある。
一般にイメージする敬礼の、右手を頭にかざした姿勢を、挙手の敬礼という。敬礼の作法は、服装や場所等によって違い、それは訓令に細かく定められていて、文字通り形式的なものだ。だから「正しさ」が求められる。
「女神」と祭り上げながら、その姿が正しいかどうかを審査するというのはどうなのか、とは思いますけどね。

特集では、審査結果のみならず、その審査基準や正しい敬礼作法が図説されている。読んでみると、自衛隊式では、下ろした方の左手は握るとか、つま先の開く角度が男性と女性では違う(男性は60°、女性は55°に開く)とか、興味深くはある。
しかし! ここで解説に用いられているのが、ぱっと見、帽子だけ被った裸の女性の絵なんですよ。
グレー一色で無機質に描かれてはいるけれど、胸の盛り上がり具合も強調されて、しかも臍まで描かれている。生々しい女体を、そのまんまで提示することを避けるために、生身の人間じゃないですよというエクスキューズのために、デジタル加工したような絵。
裸に帽子だけ被っているというのが、これまたバランスが悪いのだ。挙手の敬礼は帽子を被ったときの敬礼ゆえ、帽子は不可欠だってことは分かるけど、それなら制服を着せればいいんじゃないのか、と素朴に疑問。わざわざ制服を「脱がせて」解説する必要があったのか?
表紙では、女性タレントたちは皆、笑顔で敬礼姿を披露している。そもそも、敬礼で笑顔、それも歯を見せた笑顔の敬礼はOKなの? それって正しくないんじゃないの? でも、そこにはコメントはなかったんですよね。「女神」だからいいのかな。

読者への「お知らせ」によれば、本誌のウリは「トップアイドルの制服姿が見られる!」「女性タレントが本物の制服を着て表紙とグラビアを飾ります。いま、話題のあの子も出ています!」ということらしい。
「女神」のサイン入り写真などが当たるプレゼントもあり、応募の際には「表紙に出て欲しい女優、タレント」を書くようにと指示がある。自分の好きなアイドルの普段とは違った姿を見たいというファンにアピールし、そこから自衛隊に興味を持ってもらおうという趣向だろうか。
「あの子」扱いというのもすごいですね。
「正しい敬礼」の審査で、審査員のコメントが「初めてにしては非常によくできています」「指先をそろえていればもっとよかったですね」等々、小学生を先生が評価しているような感じなのは、「あの子」だからなのか。「女神」と祭り上げている割には扱いが「あの子」。いや、そういう扱いを許してくれる人を「女神」と呼ぶのか。

そうそう、MAMORには、「マモルの婚活」というページもあるのでした。以前、婚活を特集したときに反響が大きかったため、連載化されたのだそうだ。本号に登場するのは3名の男性。このコーナーが縁で結婚したカップルもいるんだとか。「気になる人がいたら手紙にてご連絡を。マモルがアナタのすてきな出会いを応援します」とあり、イマドキ手紙? と思いきや、メールが使えない環境の隊員もいると書かれてあった。な、なるほど…。
自衛官と結婚したいアナタ、お手紙を書いてみてはいかがでしょうか?

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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