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LPC官能小説第9回「小さい子供みたいに素直な彼の返事に、背中がゾクゾクした」

鍬津ころ2017.02.01

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 年明けそうそう、気持ちワルイほど気温が上がったり、かと思うとドカ雪が降ったり。
 今年も異常気象だねえ、なんてセリフがもう普通に感じる。

 それでも、スキー場に近い鄙びた温泉地には、昔ながらの「ザ・日本の冬」といった景色が広がっていた。
 両側に雪が盛り上がった細い道。週末というのに人も車も少ない町の空気は、キンと冷えて澄み渡っている。

 今日のお目当ては、町外れの小さな銭湯。知る人ぞ知る源泉かけ流しの、温泉銭湯なの。
 露天風呂もジャグジーも岩盤浴もついてない銭湯なんてつまんない。
 友達は皆そう言うけど、わかってないよね。温泉の醍醐味って、やっぱり泉質でしょ。
 だから私は、堂々の「おひとりさま」。
 誰に気兼ねすることもない、気楽な日帰りプチ旅行ってわけ。

 置物みたいなお婆ちゃんと猫が座っている番台は、レトロな映画のワンシーンみたい。私、恋に破れて北国をさまよう演歌のオンナになったような、メランコリックな気分でになった。
 硫黄の香りが濃い、木造の脱衣所。開店間もないせいか、先客はいない。
 磨りガラスの向こうには、もうもうとした湯気が満ちている気配。
 やっぱり、こういうのがホンモノの雰囲気ってヤツよね。

 演歌のオンナ気分も忘れて、私、ヤッホー!とばかりに浴室に駆け込んだ。
 思った通り、十畳もなさそうな浴室は真っ白な湯気で一杯。
 温かな霧の中に分け入っていくような、不思議な感じ。天上近くの窓から差し込む午後の陽射しが、湯気の向こうでふんわりきらめいていて、とてもステキ。
 まずは、ざっと掛け湯をして、あったまろうと思った。
 足先で湯船のへりを探り、あちちち、などと呟きながら、とろりとしたお湯に身を沈めていく。

「……ぁあー……っ、サイコー!」
 思わず声が出た、次の瞬間。
「ええっ!?」
 まさかの反論。じゃなくて、他人の声が聞こえた。私の貸し切りじゃなかったの?
 ううん、そんなことより、聞こえた声が問題。太く豊かな響きは、湯気にくぐもっていても間違いようのない、男の人のそれだった。

 自分の肩から下が見えないほど白濁して、やや緑がかったお湯の上に漂う湯気を掻き分ける。目を細めてよく見ると、すぐ前に、大きな岩……じゃなくて、頑丈そうな筋肉に覆われた、岩のように逞しい褐色のボディ。
「え、えええーっ!?」
 今度の声は、私の口から出ていた。

 トレードマークのツンツンヘアが、今は赤ちゃんみたいにくしゃっと潰れている。驚きに目を見開いた表情は、テレビやネットで見るより幼くて、こんなときなのに、私、可愛いと思ってしまう。
「……あ、あの、こっち男湯なんだけど、どういう……」
 四条丸駆クンの、こんな恐る恐るの囁き声、初めて聞いた。と、いうか、
「え、ウソ、私、間違え……?」
 私の声も囁きになる。

 男湯と女湯を間違えるなんて、ヤバすぎない!?
 私はほとんど茫然自失。
 すぐに湯船から飛び出さなかったのは、お湯に沈んだ部分が見えなかったから、だと思う。
 盛り上がった肩から、一旦キュッと締まって再び張り詰める上腕筋と、谷間ができるほど鍛えられた大胸筋がチラリと覗くだけ。呆然としつつも私、意地汚く観察してるの。

 彼、私の視線に気づいたのか、目の下をほんのり赤らめた。
 妄想の中ではちょっぴり強引にリードしてくれる彼、本当はこんなシャイな人だったのかしら。

「……お湯がこんなに濁ってるから、えっと、その、何も着てないって感じがしませんね」
 私、浴室から出ていくどころか、我ながらトロけた声で、そんなふうに話しかけていた。
「……そ、それはそうだけど……でも」
 目を泳がせながらボソボソと答える彼が可愛くて、私、いっそう大胆になってしまう。

 お湯の中で見えない腕を、そっと伸ばす。すぐに、パツパツに張り詰めた滑らかな肌に触れる。
「……!」
 彼、声を出さずに全身をビクリと緊張させた。
「よかった……お湯の中にも、ちゃんといるのね……」
 早くものぼせかけているのか、私はエッチな悪女みたいな言葉と、胸板を撫で回すてのひらで、彼を煽る。

 指先に感じる突起。その周囲を爪先でコリコリすると、キュンと堅くなる感触。
「……ふっ!」
 彼が甘えるような鼻声を出し、もっと愛撫をねだるように胸を反らせた。
「……感じる?」
 コクコクと頷く彼の膝に自分の膝が乗るまで、私は身体を進める。
 さっきから疼いていたバストを、彼の胸に押しつける。乳首で乳首を探して、女の子同士みたいに、
「ッあ、そ、それ……」
 擦り合わせると、彼は驚いたような声をあげ、反射的に私の腕を掴んだ。お湯がバシャンと波立って、一瞬湯気が割れる。
「……イヤ?」
 汗に濡れ、赤く火照った彼の顔を見上げて囁くと、すこし迷ってから首を左右に振った。

 私、彼の肩に両手を乗せ、身体をくねらせて乳首同士のキスを続ける。
 それだけでは足りなくなって、唇も合わせる。
 舌と舌、乳首と乳首が擦れ、絡み合い、頭も身体も蕩けていきそう。
 私、見えないのをいいことに、お湯の中で両脚を大胆に広げて、彼の腿に跨がった。お行儀よく正座しているアスリートの股間で、想像通り、いえ、想像以上にカタく高々とそそり立つモノが、私のアンダーヘアーに触れる。

 うっとりするけど、入れたいなんて思っちゃダメ。
 今だけ、ここは女湯なの。
 女の子同士なんだから、
「……ね、こっちも、こすって。こすり合いっこしましょう」
 唇を重ねたまま、不明瞭な声になったけど、彼には通じたみたい。
 チャプチャプとお湯を揺らして、彼の切っ先が、私の肉芽を探す。さぐり当てて、小突いたと思うと、コリコリと擦られる。
「はぁ、あ、アッ、あぁぁ……」
 少女の頃のたどたどしいオナニーの感覚が甦って、私はやみくもに腰を振った。
 二人の善がり声が重なり、水音が大きくなる。

 もどかしいけど、それがイイの。
 おちんちん、欲しい……と、思いながら、絡み合っているのが、卑猥なの。
「いッ……一緒に、イける? イけそう?」
 キスの余裕がなくなり、私、彼の肩に歯を立てながら、かすれた声を振り絞る。
「んっ、うんっ……がんば、る……!」
 小さい子供みたいに素直な彼の返事に、背中がゾクゾクした。
 身体はもちろん、感覚そのものが絶頂する予感。
 一緒に、彼と一緒に……。

 湯船から出たのかどうかもわからない、強烈な浮遊感。
 その直後、私は床に尻餅をついていた。
 にゃぁあああん!
 抗議するような鳴き声と一緒に、視界の端を茶色の塊がよぎっていった。

「お客さん、でえじょぶか? しての、そっちゃ男湯だで、へえったらいかんわ」
 続いて、背中から方言のきつい声がかかる。
 振り返ると、番台のお婆ちゃんが、手招きするように腕を振り回していた。隣の猫は、いなくなっていた。
 私の目の前には、水色の大波を描いたのれん。よくよく見ると、左下の隅っこに、赤で「男」と書いてある。
 こんなの、間違っても仕方ないじゃない!

 私はふくれっ面で、番台の反対側にかかっている、同じ絵柄ののれんをくぐった。
 今度は彼が間違えて、女湯に入ってくるかもしれない。
 どうしても、そんな期待を捨て切れなかった。

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鍬津ころ

鍬津ころ(くわつ・ころ)

札幌出身、東京在住。山羊座のO型。アダルト系出版社、編集プロダクション勤務後、フリーの編集者&ライター。2011年『イケない女将修行~板前彼氏の指技vs官能小説家の温泉蜜筆』でネット配信小説デビュー。近著『ラブ・ループ』(徳間文庫)。馬、鹿、ジビエ大好き飲んだくれ系アラフォー女子。タバコの値上がりには500円までつきあう覚悟。 

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