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ラブホテルという、セックスするための箱。

すごい名前だよね。
あ、ラブ繋がりで、
ラブジュースという呼び名もすごいよね。

ラブジュースという単語を、
クラスのエロ男子に教えてもらった頃。
家族でウインブルドンの試合をテレビで見ていた。
「わーっ強いな!ラブジュースだよ!」

わたし元気にハキハキと。
凍りつく両親。
「…何この空気…あれ?ラブゲームって言ったよね?わたし?」
ハッとした瞬間、時すでに遅し。
以来、親がわたしを見る目が変わったように感じている。

さて、ラブホテル。

わたしが子どもの頃、
連れ込み宿はひっそり繁華街の外れに、
いわゆるラブホテルは郊外にあり、
どぎついネオンサインでその不思議な名前が飾られていた。

アテネ
ベルサイユ
オリンピア
ボルボ

なぜかヨーロッパを連想させる名前が多かった。
そしてどこか一文字、ネオン管の球切れしているのも常。

建物は高速道路から見える場所に多く建っているけれど、頑丈に入り口が囲われていて、いったいどうやって入るのだろうか幼心ながら悩んだ記憶もあり。
淫靡だよね。
湿度が高い。

世はバブル。
セックスはシティホテル、しかもラグジュアリーなシティホテルでするもの、が常識だった。

シティホテルと言えば、結婚式に法事、
入学式卒業式、親戚の集まり、誕生会など、
小さな頃から宴会場やレストランを利用して来たが、
まさか大きくなってセックスしに来るとは夢にも思わなんだ。
隣の部屋では商談しているかも知れない。
逆隣のファミリーは平和に過ごし、
上の部屋では麻薬の取引が行われているかも。
そんな中わたしは男とセックス。
ある種の背徳感が気分を高揚させる。
ホテルというカオス、深い。

そんなわけで、隣に若い子を連れて歩くのがステイタスどころか当たり前だった時代、
男の金でシティホテルでセックスをしていたから、
それが同世代と行く時もシティホテル以外の選択肢は無かった。
あのホテルのあの部屋泊まってセックスしたい!とわたしもバイトに精を出したものだ。

ラブホテルという選択肢が無かったのは、そのイメージによる湿度の高さにやや潔癖気味な性格も災いしたのか。

そんなわたしではあるが、
その時付き合っていた男とラブホテルに行こうという話になった。

「最近はラブホテルも進化していて、シティホテルみたいでキレイなところがどんどん出来ているんだってよ」

確かに繁華街も連れ込み宿や昔風ラブホテルがどんどん消え、おしゃれなビルや南仏風、リゾート風なそれが雨後の筍の如く建っていた。

あ、釣った魚に餌をやるのを惜しんで来たわね?とも思ったが、
キレイなところなら百聞は一見にしかず。

決行日にさて行くぞ!と準備を始めた。
わたしはいったい何を着ていけばいいのか?
シティホテルならばいくらセックスするために行くとしても、どこかレストランで食事してからシケ込むから、ちょっとはオシャレをしている。

ラブホテルの流儀って何だ?

セックスだけをするために着て行く服は何だ?
車で行くからドア to ドア。
部屋着でもいいの?
裸にコートでもいいんじゃね?

ああわたし、セックスだけをしに行くんだ。
わざわざ。

シティホテルの時には何も思わなかったのに、
ラブホテルというセックス専用の場所に行くということを意識し始めたから大変。
急にどうしていいか、どういう態度で臨んでいいかわからなくなった。

そもそも空いているの?
予約とか要らないの?
気持ちの前戯である、酒も食事も無い。
セックスの相手が、まさにセックス専用の場所だけを目指して運転している。
車中の会話にエロい駆け引きもクソも無い。
海辺に建つ、シティホテル然とした、
しかしサーチライトで飾られたオシャレラブホテルに近づく。
【空】のライトにひとまず安堵。
人目を避けるように作られた駐車場に車は滑り込む。
やっぱりキレイでもラブホテルなんだな。
目的はセックス。
逃げられない感じ。
え、なんか怖い。
緊張する、、、
こんな気持ちでわたしはセックスを楽しめるのか??

結論、気持ちよくなれなかった。
変にガチガチになったし、
この建物にはセックスしている人しか居ないと思ったらバカみたいと思ったし、
設えは新しくキレイなのに不潔に感じちゃったし、
何よりセックスするためだけの場所ってのが強制的で嫌だった。
それだけが目的なのはつまらない。

ま、それから月日が経つと、
敢えてその強制的な中に身をおいてセックスする刹那感も良いとはなるのだが(笑)

とはいえ、ラブホテル全般あまり好きでは無いのは未だにそう。

バブルも弾け、ラブホテルをファッションホテルやレジャーホテルと言うようになってきた頃、デザイナーズホテルを取材する機会があった。

カッシーナの家具、
シモンズやウォーターベッドを設置、
ジャグジーは部屋の中に…
リッチでオシャレな雰囲気。
入り口も表に面しており、
淫靡さは深く深くしまい込まれている。

シティホテルより安く過ごせる場所。
ラブホテルより明るく楽しめる場所。
それが、レジャーホテルだった。
あっけらかんとした空気に、湿度は無かった。

今ではスマホひとつで空室検索も出来るようになり、ハッピーホテルなるサイトがあるそうな。

『連れ込む』宿が、
様々な『ラブ』を交わし重くじっとり湿度を持っていた場所が、『ファッション』性を高めた『レジャー』で『ハッピー』に。

セックスでハッピーになろうという意識はとってもいいけれど、
軽佻浮薄な時代の象徴なのかなーなんて思いながら、
最新のハッピーな様子を見に行かなきゃ!とソワソワしているわたしなワケで。

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昌浩子

昌浩子(まさ・ひろこ)

バブルのしっぽの時代に青春を謳歌。パーティコンパニオン/家庭教師/スナックのホステスのアルバイトのおかげで財布の中には常に30万円が入っていた学生時代を経て、テレビディレクターとして仕事に人生を捧げたものの、福島原発の事故により人生観がガラリと変わり、エシカルやオーガニックな世界に身をおくべく日々奔走中。東方神起とシャンパンと飛行機をこよなく愛する札幌在住の三碧木星天秤座。

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