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この国で「女として生きる」ことの現実を実感するニュースが多かった2014年。もう、来年からは「いつも笑顔」から降りません?

栗林デバ子2014.12.27

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ある女性ファッション誌を見ていたら、専属モデルの一人が、目標とする女性像を「いつもどんな時も笑顔を絶やさない女性」というようなことを言っていました。
なんだかハッと胸をつかれるような思いがしました。
モデルはデバ子とほぼ同世代。30代半ばとおみうけしました。
20代の時だったら、素朴に「そういう女性ってステキ♪」って思ったかもしれない。実際、身の回りの上司や年上の友人に対しても、しんどい状況でも物腰が柔らかくて笑顔の絶えない女性をいいなーと思っていた気がします。
でも、モデルの笑顔をみながら、「怖い……」と思ってしまった。なんかツラそうだし、呪縛感ハンパないよ、って。
30代半ばといえば、結婚したり、子どもを産んだり、仕事辞めなきゃいけなかったり、結婚しないことをせっつかれたり、出産のリミットをせかされたり、仕事が猛烈忙しかったり、変なポジションに干されたり、状況は違えど、大変なことが多いです。それでも笑っていなきゃならないのか?!
この雑誌を読む同世代は、辛くても、ムカムカしていても、笑顔を絶やさない。本当に、そんな女性像に共感しているんでしょうか。


12月22日、大阪府茨木市のアパートで3歳の岸本紗弥音ちゃんが衰弱死した事件で、大阪地検が殺人容疑で逮捕されていた母親(20)を保護責任者遺棄致死の罪で起訴しました。その少し前、養父(22)も起訴されています。
紗弥音ちゃんは死亡したとき、体重が8㌔しかなかったそうです。胃にはアルミはくやロウ、タマネギの皮などが出てきた。捜査をした大阪府警は胃の内容物は紗弥音ちゃんが空腹のために食べたもので、両親が食事を与えないなど、育児を放棄したために亡くなったという見立てをしています。
一方の両親は、紗弥音ちゃんは先天性ミオパチーという慢性特定疾患を患っていたため、飲食や呼吸が困難でもともと食が細かった。虐待はしていないと否認しています。知的発達も遅れていて、時々食べ物でないものを食べてしまうこともあったと。亡くなる2日前まで、おにぎりなどを食べていて、病院に連れていくほどの状況とは両親は認識していなかったと訴えています。


紗弥音ちゃんはなぜ亡くなったのか。それは裁判を待たなければわかりませんが、この国で親になる、親でいるってすごい大変なことだなぁと改めて思いました。
紗弥音ちゃんを産んだ時、母親は10代(逮捕された父親は養父なので、いつから養育していたかは不明)。健康な子だって大変だろうに、紗弥音ちゃんの患っていた疾患を聞けば、若い両親だけでは育てるのがいかに難しいかは簡単に想像できます。
両親は紗弥音ちゃんを家に閉じ込めていたわけじゃない。亡くなる直前にも両親とラーメン店で食事をする紗弥音ちゃんが目撃されています。なぜ、周囲の人は手をさしのべられなかったのか。
もしかしたら、手をさしのべたけど拒否したのかなとも思います。昨年11月、保健所から電話があったとき、母親は「子どもは元気です」と答えていたそうです。
なんだろう。この圧倒的な孤立感。きっと周囲に助けを求めなかったこと、行政に相談しなかったことも含め、両親の罪になってしまうんでしょう、日本では。


デバ子は子育てをしたことありませんが、テレビや小説にあふれる親子の絆をめぐる心あたたまる物語に苦しくなる時がある。
「さすがお母さんね」
「赤ちゃん、可愛くてしょうがないでしょ」
周囲の人からかけられるというふとした言葉や社会の空気に、どんなにしんどい状況でも「親から降りる」という選択肢を失っちゃうんじゃないか。というか、この国には、親から降りるという選択肢はあるのか?!
ないですよね。


誰にかけられたのか、自分でかけちゃったのか、笑顔に縛られているなーと思う時があります。相手の失礼な発言にイラッとしたり傷ついたりしても、反射的に笑顔をつくる自分がいる。文句を言いたい時も、言葉を選び、口角をあげて、やんわりと「お願い」ベースで要件をいう。「いつも笑顔」から降りる選択肢をもっていないような気がしてしまう。
安倍政権は、子育てに介護に仕事に“輝く”女性を増やしたいと言ってます。周囲からも、雑用をこなし、「上」を目指し、飲み会にもつきあう(すべて笑顔で!)女性が求められていると認識してます。でも、もうムリっ。
とりあえず、いつも笑顔をやめて「これ以上できません」とちゃんと言うことから始めようと思います。


今回で年内は最後の更新になります。
読んで下さった皆さま、本当に本当にありがとうございました。
新しい年は楽しく心穏やかに過ごしたいものですが、そんな予感は一切しない日本ですので、来年も引き続きひっそり怒っていきたいと思っております。

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