ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

  • TOP
  • 女性の裸には、「忘れられる権利」はないのか?

女性の裸には、「忘れられる権利」はないのか?

2016.09.29

Loading...


 お久しぶりです。玖保樹です。
 志布志市の「少女U」こと「うな子」問題とか、はらわたが煮えくりかえったあげくにおいしい鍋の具にでもなりそうなテーマはいろいろありますが、今回はそれではなくて。学生時代に某スポーツ新聞の編集局でアルバイトをしていた玖保樹らしく、坂口杏里嬢の話題です。
 あの坂口良子の娘ということで、二世タレントとして注目を集めた彼女ですが、もうすぐANRIとしてAVデビューするそうです。しかもタイトルは元交際相手のお笑い芸人のギャグをモチーフにした『What a day!!(なんで日だ!!)』だそうで。……こ、これっぽっちも笑えねえ!
 なんでも元SKE48や元ギリギリガールズ(古い)の人などの作品もある、芸能人専門メーカーからデビューとか。ちなみにAVへの出演強要を告発した、香西咲さんのデビュー作もこのメーカーから出ています。

 杏里嬢にはホストクラブ通いでこさえた借金が2000万ほどあり、その返済のためのAV出演だと言われています。借金のカタに風俗やAVに、という話に対しては「仕方がない」「借金するほうが悪い」「自分のしたことだし、頑張って返済してね」といった声がよく聞かれますね。まーここでも自己責任論炸裂ですねえ。
 しかし今回はそれだけではなく、かつて彼女と仕事をしたり、現場ですれ違っていたであろう芸能人や司会者たちがまあ、ゲスいことこの上ない。「楽しみ!」とはしゃいだり、事務所にまで借金の取り立てが来たことを暴露したり、「ホストクラブに行く前に、お金持ちの人を見つけて払ってもらうシステム作ってから行くようにしないと」としたり顔でアドバイスしたりと、一体どの方向を見て話してるんだよと言いたくなるようなものばかりでした。ホストクラブは一般人には到底理解できない金額での営業がなぜ成り立っているのか、果たしてそれは適切な値付けなのかについて、語ってくれる人がいて欲しかったのですが。だってバーなどで法外な価格を要求をされた男性サラリーマンに対しては社会は動くのに、どうしてホストクラブの借金を抱えた女性は「自業自得の自己責任」で終わりになっちゃうの? と個人的には思うからです。あー、納得いかねえ。

 AV研究家からは「超絶かわいい子が参入しているのが今のAV業界なのだから、話題性でメーカーがお金を出してくれたのはラッキー」という意見まで飛び出しましたが、結局誰1人として彼女の声を聞くことなく、心配すらせずに自分の話をしてるだけじゃないかと。別に私は杏里譲と友人でも知り合いでもないけど、空恐ろしいものを感じてしまいました。だって「借金を作った自己責任女」へのセーフティネットのなさ、手の差し伸べられなさ、ネタとして食い物にされるさまはとても恐ろしいし、他人ごととして終わりには到底できないからです。

 もちろん職業に貴賤はありません。「誇りをもってAVに出ている!」という人もいるでしょうし、「かわいそう」というのもちょっと違う気がします。しかし人前で脱いでしまった画像がひとたびインターネットにあげられたら、コピーされまくってしまいます。だからのちに異議を申し立てても、消すことは容易ではありません。そのことを思うたびに私はいつも、ある1人のAV女優を思い出します。

 かつて彼女は「黒木香」と呼ばれていました。長い黒髪と雄々しい眉、そして菩薩のような微笑をたたえた彼女は、80年代もっとも有名なAV女優でもありました。ふさふさのわき毛を晒し、コトに及んでいる際にホラ貝を吹く異様さで話題になったものの、イタリア美術史を学ぶ現役女子大生で、「留学資金が欲しくて」AVに出演した彼女の個性は際立っていました。あっという間にバラエティ番組に登場するほどの人気者となり、『オールナイトフジ』出演時にはヴァギナという単語を連発し、うら若き玖保樹をドキドキさせたものです。今となっては女性がそれを口にするのは、当然だと考えてますけど!

 「そういえばメディアに登場しなくなったなあ」と思っていた頃、ノンフィクション作家の井田真木子さんによる、黒木香インタビューを目にしました。かつて恋愛関係にあったAV監督との記憶を語る「所帯やつれ」したその姿は、世の中にとっても彼女にとってもの「浮かれた時代の終焉」を嫌というほど感じさせるもので、読んだことを後悔すらしたものです。そして彼女は表舞台から姿を消し、のちにプライバシーを暴きに来た週刊誌を相手取り、裁判を起こして勝訴しています。

 今はどこかで静かに暮らしているのでしょう。しかしその名でweb検索をすると、出演作の映像が今でも容易に見つかります。女性の裸には「忘れられる権利」はないのでしょうか? 映像含め本人の身体は本人のものであるはずなのに、出演時から20年ほど経ち、AVから離れた今も世に出回っているなんて。なぜか私も悔しいし、やるせない思いでいっぱいです。
 もちろん、杏里嬢にどんな未来が待ち構えているかはわかりません。もしかしたら明るいものになるかもしれないし、AV出演を機に新たな道が開けるかもしれません。でもどんな未来になったとしても、「自分の身体を見られる権利」は、杏里嬢自身のものであることを祈ってやみません。そしてそれがすべての女性にもたらされたら、AV強要なんてなくなるんだろうなあ。はーあ(ため息)。

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP