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土俵の女人禁制と女性専用車両

李信恵2018.04.06

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京都府舞鶴市で4日、大相撲の春巡業「大相撲舞鶴場所」が開催された。土俵上であいさつをしていた多々見良三市長が倒れ、複数の女性が土俵に上がり救命措置を行っていたところ、「女性の方は土俵から降りてください」との行司からの場内アナウンスが複数回あった。また、市長の搬出後、大量の塩が土俵に撒かれたという。

日本相撲協会の八角理事長は同日夜、「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くおわび申し上げます」とのコメントを発表している。

このニュースを聞いたとき、唖然とした。素早く救命活動を行った数人の女性たちの行動は素晴らしい。なのに、まず場内から女性が土俵上に上がったことについて非難の声が飛び、それに応じるかのように行司のアナウンスがあったそうだ。どうかしてる。

2000年の春場所(大阪)の千秋楽の表彰式では、当時の大阪府知事だった太田房江氏が土俵に上がって府知事賞を手渡したいと表明していたが、協会側は「大相撲は神事に基づき女性は土俵に上げないという伝統がある」と回答した。あれから18年、今回と状況は異なるが、全く変わっていないんだなあと思った。そもそも、この「伝統」と云うものすらあやしい。そもそも、常識とか伝統にとらわれて、一番大切な「命」が見えなくなるのって、すごくヤバくないですか?

女性は土俵から降りなきゃいけないって云われる一方で、女性専用車両にわざわざ乗り込んで嫌がらせする男性もいる。この、女性専用車両についてもちゃんと書かなきゃな、と思っていたところに、今回の件が発生した。(今年の2月16日の朝の通勤ラッシュ時には、東京メトロ千代田線沿線で男性3人が女性専用車両に乗り込みトラブルへと発展。一部の列車が遅延する自体になった事件。)

これら二つの事件は、内容は違うけど根底に流れるものがすごく似ていると思う。女性っていつも権利を奪われている。そもそも女性専用車両は、痴漢被害があるから生まれたもので、女性が安心できるための空間だ。そんな場所にわざわざ乗り込むって、女性が安心、安全に移動する権利の侵害じゃないのかな。そもそも「女性専用車両は男性差別だ」と云う前に、痴漢被害をなくすために何とかすればいいのにと思うけど、女性専用車両に乗り込む男性たちにそんな視点はうかがえない。「在日から奪われた権利を日本人は取り戻そう!」と云う、デマをまき散らしながら活動していた人たちが、社会的弱者の権利向上を目指さないところとも重なってしまう。

ちなみに東京メトロのホームページ内の「よくあるご質問(FAQ)」には、「なぜ女性専用車を導入しているのですか?」という質問がある。その答えは「女性専用車の導入により痴漢をはじめとする迷惑行為の抑止を図り、女性のお客様のほか、小学生以下のお客様、おからだの不自由なお客様とその介護者の方に安心してご利用いただくことを目的にしております。」とある。
https://ssl.tokyometro.jp/support/faq_answer?lang=ja&faqno=OpenFAQ-000380

それから、女性が上がった土俵の上に大量の塩がまかれていたことについても、すごく憤りを覚えた。塩をまくことって、「穢れを祓う」という意味があるんだけど。穢れと差別ってすごく結びつきやすいものだし、「女性って穢れてんのかよ。だいたい、お前らは誰の股から生まれてきたのか」と思う。

「この塩は、土俵上で大きな怪我などが発生したときに、不吉を祓うためにまくものであり慣習だ」「取組前には力士は塩をまく」という人もいるけど、その慣習も時と場合によって違和感を抱く人もいるんだから。救命行為のあとにそんなことしたらあかんのちゃう。「古くからの伝統だ、慣習だ」として、思考停止になってると思うし、そんなのダメ。そういうものを、疑う時期に来てるんじゃないかな。伝統を守りながら、男女平等も実現しなきゃ。

Twitterで友人が「富士山だって高野山だって昔は女人禁制だったけど、変わってきたんやんか、なぁ。」ってつぶやいていた。ほんとにそうだと思う。伝統は、時代によってより良く進化しなければ残っていけない。社会的弱者が、入れない場所をなくすこと。女性がどこでも立ち入ることが出来て、安心して過ごすことも同時にできる社会の方が成熟した社会だと思う。そんな社会であってほしいし、作らなきゃいけないし、変えて行こうと思う。社会的強者である男性、その目線だけで作られた伝統や常識、価値観なんかもういらない。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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