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「なんだか騒ぎたい」

中沢あき2015.11.30

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ちょっと前の話になるけれど、夏も終わるとある週末、フリーマーケットに行こうと自転車を走らせていたら、ちょっと目を引く恰好の一行を見かけた。 なにがって、ハイジの着ているような民族衣装で、ん?ケルンでもオクトーバーフェストをやるのか(元はミュンヘンの行事なので)と思いきや、その後ろの男性グループはケルンのサッカーチームのシャツをお揃いで着ていて、あれ?ファンの集いでもあるのか、と思ううちに、今度は動物の着ぐるみを着込んだ人やらが増えてきて、皆近くの公園へとぞろぞろ向かっていく。そういえばそちらの方から何やら音楽も聞こえてくるし、と気になったら見に行かねば!方向転換してその人たちに付いていったら、音楽が鳴り響くその公園のビアガーデンの敷地には、もう明らかな仮装をした人たちがわんさかと居た。いや、仮装というよりコスプレという言い方の方がぴったりかも…。 なんだなんだ、これは。目が合った近くのカップル(この人たちも魔女みたいなとんがり帽を被っている)に、これ、何のお祭りですか?と訊けば、カーニバルですよ、と。え、でもカーニバルって、今は夏ですよ?と驚く私に彼等は嬉しそうに口を揃えた。そう、夏のカーニバルです!
なんのこっちゃの会話と思われるだろうけど、カーニバルはキリスト教の伝統行事でそもそも毎年2月〜3月の間に行われるもの。日本で有名なのはリオのカーニバルやベネチアのカーニバルなどで、煌めく飾りを付けてセクシーに踊るリオの女性や羽飾りの付いたマスクを付けたベネチアの伝統衣装をテレビなどで見たことがある人もいるのでは?ドイツにもカーニバルはあって、特にケルンはドイツ最大のカーニバルの町、その時期には限りなくコスプレに近い仮装(この中途半端なファッションセンスがある意味とてもドイツ的だと思う…)をした人々が町に溢れ、それこそ老いも若きも飲めや歌えの大騒ぎを数日間繰り広げる。 その詳細はまた来年のカーニバルの際にぜひレポートしたいと思っていたのだが、既にレポートのチャンス!それにしてもカーニバルをこよなく愛すケルン市民とはいえ、まさか夏にまでカーニバルをやるとは思わなかった…。なんでも、初めての試みとしてこの第一回を今年開催した、とのこと。といっても今回は宗教的な意味合いは全くなくて、やるのもこの一日だけ。本来のお祭りで出る鼓笛隊や山車の行列などは勿論なく、市内各所の公園や居酒屋などで有志が仮装をして集まって騒ぐだけ、ということらしい。年一回だけじゃ飽き足りないんだなあ、と感心すらしながら、私もしばらくその場を歩き回って写真などを撮ってみる。 私自身はそこまでのカーニバル狂ではないものの、楽しそうな人々を見るとやっぱりこちらの気持ちも浮き立ってきて、うん、楽しい。
しかし皆の嬉しそうなこと…。年齢層もバラバラで互いに知り合いでもない人たちが一緒に楽しんでいる様子はいいもんだ。祭りって、参加者同士の一体感があって、そして踊ったり歌ったりと体の内に溜まったエネルギーを発散することが出来る、それも健全な状況で出来る場だと思う。フラストレーションもいい形でスッキリと出せる、そんなデトックス効果もあるんじゃないかな。
ふと思い出したのが、ネットで読んだ日本のハロウィンについてのニュース。特に渋谷は凄い騒ぎだったそうで賛否両論のようだけど、印象に残ったのがある若者の一言「なんだか騒ぎたいから」。何気ないその言葉が、なかなか真実を突いている気がする。溢れるゴミと身の危険まであるような騒ぎは感心しないけれど、でももしかしたら今の日本って健全に皆で騒げる場があまりなかったりするんだろうか?
9月に一時帰国していた時に、十何年振りに地元の阿波踊りを観に行った。私、阿波踊りが大好きなのです。子供の頃から、あの中に混じって恰好良く踊ってみたい、なんていう憧れがあって、音楽が鳴ればその場で誰でも踊り出す、という阿波踊りの本場徳島の話を聞いて羨ましく思ったものだ。あの高揚感、いいですよねえ。最後には勝手連、という誰でも参加できるグループがあって、子供も大人も皆飛び入りで加わっていく様子に、祭りっていいなあと改めて感じた次第(私は情けなくも参加する勇気がなく…)。
でもそんな阿波踊りも、最近はその本場の徳島の練習所ですら「音が煩い」と苦情が入って、練習場所探しに苦労するのだとか。ましてや、盆踊り大会の音楽が煩いからという苦情への対応策で、なんと踊る参加者一人一人がヘッドホンを付けて静かな中で踊るという町もあるという新聞記事の話は衝撃だった。そのシュールな情景を想像すると薄ら寒くすらなる。たった一日ですら受け入れられない不寛容さって…。
実はケルンのカーニバルも忌み嫌う市民たちはいる。彼等はその期間は市外や国外へ高飛びしたり、家に籠りながら文句は言うものの、彼等に配慮してこの祭りが静かになる、ということはないし、伝統行事なので当たり前だが、嫌いといえども中止しろ、という陳情はさすがに出てこない。まあ彼等も諦めているのだろうが、数日くらいは我慢する、という、そこはこの社会における寛容だろうか。
度を越した祭りの馬鹿騒ぎやサッカーのフーリガンの暴動などは勘弁だけど、他人との一体感を感じ、心身のエネルギーを公に健全に発散できる場って大事じゃないかな。そういう場が少なくなると、その一体感は返って歪んだ形になりかねない。例えば差別主義者のデモにおける参加者の高揚感や連帯感など、ああいうことも全く無関係ではないんじゃないかと思ったりするのだ。というわけで、祭りは賛成!だけど誰とでも一緒に楽しめるものであること、です。ハロウィンを巡ってママ友同士でいざこざ、という話を読んだときには、なんとも今の日本的な話だなあと苦笑してしまった。閉鎖的な集まりとしてのお祭りなんて、ねえ…。
写真の説明 ドイツ人は真面目でお堅い、というイメージがぶっ飛ぶんじゃないでしょうか。この人たちもカーニバルが終われば、どこにでもいる会社員だったり、公務員だったり、学生だったりするのです。
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私のお気に入りはこのパイナップル娘たち。この恰好は夏のカーニバルだからこそ!
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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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